ケレリスのお喋り
扉をノックして入って来たのはジュンケンだった。
「カノリスがフゥ君を探しているのですが話し合いは済みましたか?」
「どうするフゥ君。
カノリスにはホチネの事を理由にして断る方に持って行くか?」
「一応ホチネにも話しておかないとホチネを連れて行ってもいいとなった時面倒になるからね」
「そうだな。
ジュンケン、ホチネを呼んで来て貰えるか?」
「分かりました」
ジュンケンは部屋を出て行った。
ノックする事無く扉が開かれて、
「何?」
ホチネが顔を見せる。
「……あの…ホチネはもし許可があったらエルフの森に行ってみたい?」
「エルフの森?あたしが?
うーんどうかな?考えた事無いからなぁ」
真剣に考え込むホチネに俺は、
「許可が出たらだからね。
多分無理だと思うけど万が一許可がでたらって事そんなに真剣に考え無いで軽い気持ちで行きたいか?行きたく無いか?」
『真剣に行きたいって言われてダメでしたって事は避けたい』
「それなら行けたら行くわ!」
「ああそう。分かった。」
俺は苦笑いで返事をした。
『それってこの世界でも本当は行かないって事でいいんだよね!』
ホチネの返事を聞いてケレリスに目配せすると、
「それじゃさっきの部屋に戻ろうか」
ケレリスの後をみんなで着いてツラナとゴキムロンが待つ部屋へと戻って来た。
そこにはカノリスの姿もあり何か言いたそうにしている。
「カノリス、長老達の返事はどうだった」
「フゥ君を連れて行く事は認められました。
ただエルフの森に入る前に魔法の試験をしたそうです」
ケレリスが険しい顔になり、
「試験?何を言っている!
フゥ君にはそちらがお願いして来て貰う立場だろ!
こちらから条件を出すのは分かるがそちらに試験などと言う資格は無いぞ!」
「しかしそれが長老達の答えです。
私はそれを伝えるだけなので反論があるのならケレリス様が直接長老達に伝えてください」
「リス妖の長老はまだあのハバアでいいの?」
「コアリス様です」
ケレリスは深く息を吐くと魔法石でメッセージを送った。
直ぐにケレリスの魔法石に念話が入る。
「なんだと?それではフゥ君をエルフの森に連れて行く事は出来ない!
……………………………………
ハァー!そんな条件を言える立場か!
こっちの条件は伝えた。
後はそれをそっちが飲むか飲まないかだ。
……………………………………………………………
それではフゥ君はエルフの森には行かないと言う事でいいな!」
ケレリスはそう吐き捨てるように言うと一方的に念話を切った。
「フゥ君、ホチネ、二人はエルフの森には連れて行けない」
ケレリスは口元に笑みを浮かべて俺とホチネに伝える。
俺は軽く頷き、
ホチネは、
「残念」
全く残念そうには見えない様子で答えた。
「そんな長老様の命令ですよ!
私はフゥ君をエルフの森まで連れて行かなければならないのに!」
カノリスは困ったように叫ぶ。
そんなカノリスの魔法石が光り、
「はい、はい、はい。
ちょっと待ってください」
そう言うと部屋を出て行った。
「長老のババアからだな」
ケレリスは嬉しそうにつぶやいた。
しばらく俺達は部屋でジュンケンの持ってきたお茶を飲んでカノリスを待つ事にした。
「ケレリス、さっきのコアリスってのが長老なの?」
「そうだよ」
「リス妖って言うのは何?」
「ああそれはエルフの生まれた月を表す名前かな。
リスが名前の最後に付くとリス妖、白月生まれを表すの」
「それは他の月生まれにもあるの?」
「あるよ。
青月生まれはハス妖。
赤月生まれはトス妖。
黒月生まれはネス妖。
それぞれ名前の最後にハス、トス、リス、ネスが付く。
それで何月生まれか分かる」
「なんでその名前が付くの?」
「生まれた月の妖精神最様の名前を貰っているんだよ。
青月の妖精神様はハス様。
赤月の妖精神様はトス様。
白月の妖精神様はリス様。
黒月の妖精神様はネス様。
エルフは五ヶ月に一度生まれるのよ。
その生まれた月で所属する妖が決まるの。
そしてその妖の一番高齢な者が長老なのよ」
「その妖って言うのが所属先みたいな感じなの?」
「そうね。家みたいな感じかな。
その妖が生活の場で子育てや教育なども妖毎にされるわ。
だから妖によって教育方針とか思想とか得意魔法とかも少し違うよ」
「へぇー、どんな感じで違うの?」
「例えば私のリス妖は得意魔法が………!
危ないエルフの秘密を話してしまうところだった。
これ以上は秘密だ。
今までの話しでも若干秘密が一部含まれていた。
みんな、今聞いた話しは忘れるように!
いいね。忘れてくれ!」
『大事だったんだね!二回言ったからね!』
俺達は何も言わず頷いた。
カノリスが戻って来たのは二時間以上も経ってからだった。
そして戻って来たカノリスの表情は苦悩を浮かべているように見えた。
「エルフの森からコアリス様が来られます。
皆さんにはそれまでこの町に滞在をお願いします。
滞在費用はエルフの森で用意します」
カノリスはそして頭を下げた。
「分かった」
ケレリスはそう返事をして俺達に笑顔を見せる。
『ケレリスの交渉は思い通りになったんだね。
でも滞在費用をエルフの森で出すってゴキムロンとホチネの食費にいくら掛かるか知らないんだろうな』
俺も悪い笑いが顔に現れていた。




