ホチネの謎行動
その日は魔物が暴れた事により魔法道具で集めた魚は全て逃げてしまったので場所を代える事になった。
夕方頃。次の漁場に着き食事休憩をして夜の漁を始めた。
夜の漁は昼間倒したクオーパを細かく砕いた物を撒き餌にしてそれに集まった魚を獲る漁法だ。
「なんで魔法道具を使わないの?」
「夜は昼より撒き餌で魚が集まり易いのと魔法道具使って魔物が来ると暗くて襲われた時の対処が難しいからだよ。
魔物が一度来ると魚達が遠くに離れてしまうからまた移動しないといけなくなるんだよ。
夜はなるべく移動したくないからね」
「そうか。夜の戦いは魔物より人の方が不利になる事が多いもんな」
俺は船を一通りぶらぶら歩くと夜中の見張りの時間まで部屋でひと眠りする事にした。
コンコン
部屋の扉がノックされて俺は目を覚ました。
隣のベッドで寝ているホチネはグッスリ寝ていて目を覚ます気配が無い。
コンコン
更にノックは続く。
「はい?今開けます」
俺の返事に、
「すいません」
返事が返ってきた。
俺が扉を開けると冒険者の女性一人が立っていた。
「どうかしましたか?」
「あの実はワタシのパーティーのトールが熱を出してしまって昼間に凄い魔法を使っていたので回復魔法も使えないかと思いまして伺ったのですが」
「回復魔法ですか?使えますよ。
どこの部屋ですか?」
俺は冒険者『ミリーユ』の後を着いて二人の部屋に向かう。
部屋で横になっているトールの様子を観る。
特にクオーパの毒とかを受けた訳では無いようだ。
「回復魔法を掛けますね」
俺は水と火の回復魔法を合わせて掛け様子をうかがう。
「熱が引いています!
ありがとうございます」
ミリーユにお礼を言われトールを少し眠らせる事にして二人は部屋を出た。
「本当にありがとうございました。
ワタシの回復魔法は土属性なので病気の治療は出来なかったんです」
「そうですかお役に立ててよかったです。
彼は多分、海で濡れて風邪を引いたのかもしれませんね。
今夜の見張りは他の人に代わってもらって寝かせて置いた方が良いと思います」
「そうします。
ワタシ達の見張りは朝方なのでトールがそれまでに回復していなかったらワタシ一人で見張りは大丈夫ですよ」
「そうですか?
俺の見張りの時間はミリーユさん達の前の時間帯なので彼の調子が悪ければそのまま朝まで見張りを続けてもいいですよ?
それにミリーユさんも少しは寝ておかないと見張りがキツいですよ」
「ハイ、今から休みます。
見張りの事もよろしくお願いします。
本当は海の見張りで一人は心細かったんです!ヘヘ」
最後に安心した笑顔を見せたミリーユは部屋に入り俺は自分の部屋へと帰った。
部屋に帰ってベッドに横になると魔法石のアラーム機能が鳴り見張りの時間を告げる。
「ホチネ起きて。ホチネ!ホチネ!」
「もう少しまだ大丈夫。後五分」
「ダメ!交代の時間に遅れる!」
ホチネは体を起こすとのびをして立ち上がった。
『寝ぼけてる?訳じゃないよね?
アッ!何か食べた』
ホチネは枕元に置いた干し肉一口囓ると水魔法で水を出して飲み、
「行くよ!」
俺に声を掛ける。
「……ウ、ウン」
俺は返事をしてホチネの後に付いて甲板に向かった。
『ホチネのモーニングルーティンていつもこんな事してた?
まだ寝ぼけるのかな?』
甲板で見張りを交代してしばらくするとホチネの様子がおかしい。
「なんであたし槍の代わりに干し肉持ってるのよ!」
ホチネは急いで部屋に槍を取りに行く。
『やっぱり寝ぼけてたんだ!』
俺はホチネの後ろ姿を笑顔で見送った。
ホチネと入れ代わるように漁師が一人甲板に姿を現す。
漁師の見張りも交代の時間のようだ。
現れた漁師は昨日話をしていた漁師だ。
「オウ!今日は少年と一緒の見張りか」
「よろしく」
「オウ!よろしくな!」
挨拶をして隣に座った。
ホチネは直ぐに槍を手に戻って来て、
「なんで槍を忘れてるって教えてくれなかったのよ!」
俺に文句を言って来た。
「いや、気付かなかったと言うか、なんと言うか」
「気付かない訳無いでしょ!
槍と干し肉を間違えて持って来てるのよ!」
「いや、干し肉を食べながら歩いてたからお腹が空いてるだけだと思って」
「エッ!食べながら歩いてたの?」
「そうだよ。水魔法で水も飲んでたし」
「あたし全然記憶無い。
コワ!無意識で魔法使ってたなんて自分が怖いわ!」
「いやいや、あれを無意識でやってたかと思うと見てたこっちの方が怖いよ!」
「止めなさいよ!」
「そんなの無意識でやってるなんて分からないでしょ!
それに無意識でやってたら余計に怖くて止めれ無いでしょ!」
二人の遣り取りを隣で見ていた漁師はお腹を抱えて笑っているのだった。




