海での戦い
十人以上乗る大きな漁船と四隻の少し小さな舟で町の港を出て丸一日漁師達が漁を始める。
『こんなに沖まで来るんだ』
俺とホチネは合図があるまで船の上で待機だ。
俺は短槍を片手に持つと構えて待っていた。
「少年!そんなに構えてなくてもいいよ。
魔物は一日に一回か二回来るくらいだから」
「そうなんですか?」
「そりゃそうさ魔物が大量にいたらこの辺の魚なんて食べられて全滅してしまうだろ?」
「そうですね。それなら研究所の町ではあまり近くで魚を獲って無いんだろう?」
「ああ、研究所の町って三日月国にある町だろ?
あの町は近くに魔物ベルトと呼ばれる魔物の多い所があるからそこから流れて来た魔物が多い海域なんだよ。
海の魔物は狩るのが難しいから高ランクの冒険者が必要なんだけど強さの割に収入が少ないんだ」
「なんで割に合わないの?
護衛も兼ねているから報酬は多くならない?」
「魚や海の魔物は鮮度が落ちると安くしか売れないんだ。
魚は生きたまま船で持って帰れるけど魔物は生きたままだと町に持って入れない。
魔物を町に入れないのは例外を除いてどこでも禁止だからね」
「それならもっと近くで魚を獲ればよくない?」
「ああそれはね。近くで魚を獲っていると魔物に襲われた時に町に被害が出た事があってね。
魔物の被害が多くなって離れた場所でしか漁をしないように決めたんだ」
「なんで魔物の被害が多くなったの?
昔から魚は獲っていたでしょ?」
「それはね魚を集める魔法道具が開発されて漁師達のが使い始めたからなんだ。
この魔法道具は海の魔物も引き寄せるんだよ」
「それじゃその魔法道具を使わないで魚を獲ればよくない?」
「それだと魚が少ししか獲れないんだよ。
この町はエルフ領との中間地点で昔から旅人の休息地としては栄えていたけど数十年前の町長が特産品を作って町を発展させると言い出して海の幸に目を付けたんだ。
それで魔法道具を使って漁を始めたら短期間で沢山の魚が獲れて昔の漁には戻れ無くなったんだ。
人はみんな楽をしたいからね」
『人は楽をしたいか。
確かに俺も出来る事なら楽をしたい。
あれ?俺ってなんだかどんどん忙しい方に向かって進んでないか?
ラィのお使いをして生き返るはずだったのでは。
それがなんで海で漁師の護衛をしてるんだよ!』
「オーイ!護衛達!魔物が来るぞー!」
俺は短槍を持つ手に力を入れて声のした方に向かう。
向かった先で見たのは隣の小さな漁船がタコの魔物の足に襲われている所だった。
「クオーパだ!早く追っ払ってくれ!」
隣の船に乗り込んだ冒険者が剣と魔法でクオーパを引き離そうとしている。
俺は魔法で攻撃しようと魔力を貯める。
「少年!魔法を舟に当てないようにしてくれよ!」
「はい」
俺は風魔法でクオーパの足の一本を攻撃したが船を傷付けないように魔力を押さえたため切断には至らない。
それを見たホチネは海に飛び込み水魔法を上手く使って進み海の中のクオーパの頭を槍で攻撃する。
ホチネの攻撃にクオーパは舟から離れホチネに足を打ちつける。
ホチネはその攻撃を槍と水魔法を使って躱し海面から顔を出すと俺に叫ぶ。
「フゥ!舟から離れた足を魔法で攻撃して!」
俺は風魔法を放ちクオーパの足を数本切っていく。
足の減ったクオーパの本体をホチネが槍で突き刺して水魔法で水中から海面に打ち上げた。
「でか!」
俺は思ったより大きな本体にびっくりして大声を上げてしまった。
他の冒険者も驚くと同時にそれぞれが得意な魔法を放つ。
水魔法の攻撃の効果はあまり無く火魔法も海の水を上手く使うクオーパに阻まれて効き目が少ない。
土魔法を杭のようにして打ちつける攻撃はダメージを与えているようだ。
ホチネは水中でクオーパを逃がさないように泳ぎ回って槍で攻撃をしかけている。
弱ったように見えたクオーパにトドメを刺そうと一人の冒険者が舟から飛び込み剣を突き刺した瞬間、最後の力を振り絞ったクオーパがホチネの攻撃を振り切り冒険者を巻き込みながら水中に潜った。
ホチネは後を追い掛け足を巻き付けられた冒険者を助けようと槍で攻撃するが他の足に邪魔されて上手くいかない。
俺は意を決して海に飛び込み風と水魔法を使って高速で短槍を構えて突っ込んだ。
俺は体ごとクオーパを突き抜け反転して反対側からもう一度同じ攻撃を仕掛ける。
ホチネはその隙に冒険者を助け残った俺は土魔法で大きな杭を作り下から串刺しにしてトドメを刺した。
「こんなに大きなクオーパは久しぶりだな!」
俺が船に引き上げたクオーパに漁師達も驚いている。
「これは食べれてるの?」
「食べられ無くはないけど臭みが強くて美味しく無いよ。
魔石を取って後は魚の餌かな」
漁師達の言葉にガッカリした俺と違いホチネは一口食べてみたいらしい。
俺が火魔法で足を一本焼いて渡すとホチネはそれにかぶりついた。
「………ウェ!臭!マズ!」
ホチネは海にそれを投げ捨てて水魔法で口を濯ぐ。
俺はそれを見て腹を抱えて笑うとホチネに睨まれた。




