サーナをどうするか魔法石と話す
「サーナ、その後ろの子供は?」
「ああ。アタシのパーティーメンバーのマモ。子供ではないよ。魔物人なんだ」
「魔物人?」
ヘンゼはフードに隠れた俺の顔を見ようとしてくる。
「ヘンゼ!
マモは……人見知り、そう人見知りだからあまり顔を近付けないであげて。
特にヘンゼは水竜人なんだから魔物人にとって初めて見る姿だと思うよ」
「アッ。ごめん。そうだよね。魔物人にしてみれば竜人族は珍しいね。
マモ、初めまして。水竜人のヘンゼです」
ヘンゼが頭を下げて挨拶して来た。
「マモ……です」
俺も顔をフードで隠しながら人見知りの演技をしつつヘンゼにぺこりと頭を下げる。
「マモ、しばらくの間よろしくね!」
「はい」
元気なヘンゼの言葉に短く返事をする。
「マモ、先に宿の部屋に行ってて良いよ。アタシはヘンゼと話しがあるから」
サーナの表情から『魔物神を知る竜人が来てマモの正体がバレない内に宿の部屋に隠れて』と言われているような気がして、俺は無言で頷くと宿の受付を直ぐに終わらせ部屋へと向かった。
『魔法石、どう思う?』
『何がだ?』
『サーナの事。
サーナをこの島に置いて『あの卵』に向かう?
それともサーナをどこか別の国に送って行ってから『あの卵』に向かう?
それかサーナも『あの卵』の所に連れて行く?』
部屋でベッドに腰掛け一息吐いてから、俺は今後のサーナをどうするか魔法石に聞いてみた。
『まず、サーナを『あの卵』に連れて行く事は出来ない。
サーナに『卵』の事を知られる訳にはいかない。
それと実際問題としてサーナを連れて行くには魔力を使わない船を用意する必要があるが、今の僕達にはそれを用意するのは無理だろう。
船が無ければサーナ自身に泳いで貰わなければならないが、サーナは自分で「泳げない」と言っていた』
『うん。確かにそうだね』
『次にサーナを他の国に連れて行くと言う話しだが、そうなると一度龍神の聖域から北に向かう事になる。
そこにサーナを置いてまた龍神の聖域にもう一度戻るなら竜人達の警戒は今より更に厳しくなっていると予想される。それは避けたい。
今回でも聖域領に入って直ぐ竜人達の船に捕まったのだから、次は逃げられないと思う。
今のままだとフィラナも水龍神の聖域に来ているだろうからね』
『うん。フィラナに俺の存在が知られれば勿論フゥーリにも知られるだろうし、他の俺を捜してる人にも知られるだろうね』
『そう考えると僕達の選択肢は一つしか無いだろ?』
『うん。サーナをこの水龍神の聖域門島に置いていく……』
魔法石に言われるまでも無く、俺は最初からそうなるだろうと予想はしていた。
その上で魔法石に聞いたのは、魔法石なら『他に俺の思い付かない案があるでは無いか』と期待したからだ。
だが、俺の期待した答えは返って来なかった。
「マモ、ただいま。
それじゃそろそろ潜水艦の回収に行く?」
暗くなって宿の部屋に戻ってきたサーナが真っ先に聞いたのは潜水艦の事だった。
「もう少し水竜人達の警戒感が鎮まってからにするよ」
「そうだね。今はまだアタシを送ってきたヘンゼも近くにいるから」
「サーナは今までどこに行ってたの?」
「水龍神の聖域だよ」
「聖域の中に入ったの?」
「うん。それが?」
「いや……竜人以外が聖域の中まで入れるとは思わなかったから」
「ああ、それは多分魔物神のお陰かも」
「俺の?」
「そうだよ。魔物神が突然いなくなって、その捜索の為に最初の拠点になったのがここ水龍神の聖域門島だったらしいんだ。
それでフゥーリやフィラナにも捜索協力の話しが来て、話し合いの場所として水龍神の聖域が解放されたんだって」
「それで今は誰でも聖域の中に入れるようになったって事?」
「誰でもでは無いよ。
フゥーリとフィラナ、それとアタシとアタシの父親のサフィン。それと今は死んでしまったけどアタシの祖父のセードリックだけ」
「何で?
フゥーリが認められたのはなんとなく分かるけど、水竜人達が他の人を聖域に入れるのを認めるとは思えないけどな」
「フィラナは最初に竜人達が冒険者ギルドに魔物神の捜索を依頼した時の冒険者ギルド協会本部の会長だったからで、セードリックとサフィンもその後を継いで冒険者ギルド協会本部の会長になったから。
アタシが入れるのは、フィラナが次の冒険者ギルド協会本部の会長をアタシにしようと画策してるから」
「そうなんだ。なんかフィラナの家族が後を継ぐみたいになってるけど……」
「うん。フィラナは冒険者ギルドのオーガとオークの力を弱めたいと思ってるらしいよ。
今のままだと人口の多い無護人や新しい種族の魔物人が冒険者ギルドに加入し辛くて、冒険者の全体的な数が減っているらしいんだよ。
フィラナはそれをなんとか変えたいんだって」




