ゴブリン国王の無謀な野望
ケレリスはゴブリン達から聞いた話しと自分が研究して来た事を交えて説明を始めた。
「まずゴブリン達がここ最近になってこの国で増えているのは噂通り舟での密入国だった。
ゴブリンの国で政変があって大統領でありゴブリン族の族長であるゴキムロンが自分の娘のゴキムカーによって暗殺されてそれまでの制度を変えて大統領制度を廃止して自分が国王を名乗り、
『世界中から盗み、騙し、欺してお金や食べ物、美術品に魔法道具、全てを自分に捧げろ!』
そう言い出したそうだ」
「反対する人とかいなかったの?大統領の父親を殺して捕まったりしない?
大統領制を廃止とか選挙みたいなものがあったって事でしょ?」
「もちろん反対した人はいたが前の大統領は盗みや詐欺なんかを法律で禁止にしていたんだ」
「まぁ、普通でしょ?まともな人は盗みや詐欺の禁止に反対なんてしないでしょ?」
「それがそうでもないのがゴブリン族なんだよ。
人を騙したり人から盗むのはゴブリンの世界では当たり前なんだよ。
生まれつきの種族の特長とでも言うのかな加護が盗賊だから」
「加護が盗賊?そんな加護あるの?」
俺は盗賊の加護と言う言葉にびっくりした。
「加護はいろいろあるけどゴブリンの加護は盗賊と旅人だよ。
例えばホビットの加護は商売と旅人だし、ノームは細工と芸術家、ドワーフは鍛冶と芸術家みたいにね」
ケレリスの説明にホチネが続けて、
「あたし達水竜人も水と槍の加護があるし、火竜人は火と弓、土竜人は土と剣の加護があるよ。
ただ人によって加護の強さが違って、魔法の加護が強い人とか武器の加護が強いとかね」
「ホチネはどっちの加護が強いの?」
「あたしは勿論両方共に最高の加護だよ!
選ばれし水竜人。
水竜人のエリート。
未来の英雄。
ラミネの再来と言われていたからね!」
ホチネは自慢げに胸を張った。
『ホチネには自惚れの加護とかもありそう!』
俺はそう思った。
「そうなんだ。凄いね。ラミネは。」と言ってやった。
「そうだよ!ラミネは凄いんだよ!
その再来のあたしもね!」
『ポジティブの加護もありそうだ』
俺達の脱線した会話にケレリスが、
「ラミネってあの英雄ラミネですか?」
ホチネはケレリスの英雄と言う言葉で嬉しそうに、
「そうだよ。その英雄ラミネだよ。
そしてあたしが英雄ラミネの再来だよ!」
更に胸を張る。
「そうですか。ラミネさんはどうしていますか?元気ですか?」
ケレリスのその言葉に俺は最後に見たラミネの顔を思い出して自信なさげに、
「元気と言えば元気かな。俺の世話係もしてもらってたし。
ケレリスはラミネと知り合いなの?」
「知り合い………ですかね。
ラミネさんには申し訳ない事をしたと思っていまして一度お会いしてきちんと謝りたいのです」
「何があったの?それはラミネが冒険者を辞めて聖域に帰って来た事と関係ある?」
「それはエルフ族の秘密と恥と名誉に関わるので話せないのです。
すみません。」
ホチネの問いにケレリスは申し訳ない顔をしたが答えることはなかった。
そんな重い空気にツラナが、
「そろそろゴブリンの話しに戻りませんか。
ゴブリンの事はボクの研究にも参考になるかもしれませんので」
「そうだね。俺もゴブリンの加護の話しで脱線したけど続きが気になる」
俺とツラナの言葉にケレリスは頷き、
「ゴキムカーが国王を名乗って反対がなかったかの話しでしたね。
確かに反対はあったそうです。
ただゴキムカーは族長の家に古くから伝わる蔵から神の手様を見つけてそれを持ち出してしまったのだそうです」
「神の手様?」
「神の手様とは持つ者に途轍もない力を与えると言われているモノです。
一万年以上の昔にエルフと四人の勇者によって魔神を倒した時に与えられた聖遺物と言われています。
四人の勇者の中にゴブリン族の勇者もいたと伝えられているのでその時に与えられたモノの一つなのでしょう。
もう一つの神の手様はオーガの国で代々の国王に伝えられている国王の証なのです。
なのでゴキムカーは神の手様を持つ事で自分も国王を名乗ったのでしょう。
そしてゴキムカーは元々持っていた力と神の手様の力を合わせて反対派を黙らせたり追放したりしたらしいです。
その後ゴブリン達に世界中で盗みや詐欺をしてゴブリンの国に全てを持って来るようにと命令したようです。
最終的にはオーガの国王が持つもう一つの神の手様を手にして世界征服をすると言っているとか。
三日月国にはその為の食糧や魔法道具、オーガの研究資料やオーガと戦う為のオークの奴隷を得るつもりで密入国しているのです。
私の研究でも神の手様を集める事により魔神を復活させられると結論を出すと思います。
その魔神で世界征服をするつもりなのでしょう。
まあそんな事エルフ族が許すはずないですけどね!」
ケレリスの説明を聞いた俺達は夕食を終えて馬車の荷台で寝ようとしてゴブリン達がいるのでスペースが狭くなっている事に気がついた。
「俺が土魔法で荷台の後ろに牽引出来る檻を作ろうか?
その方が荷台も広くなるし夜も安全じゃない?」
「そんな事出来るなら頼むよ」
ケレリスからそう言われて俺は牽引出来る檻を土魔法で作る。
そこにゴブリン達を移してケレリス達が持って来ていた余っているパンを与えて俺達は荷台に戻り寝る事になった。
『神の手様とか世界征服とか都市伝説みたいだね。
俺は関わりたくないね!
ラィのお使いを早く終わらせて巻き込まれない内にこの世界を後にしよう!
その為のにはラィに早く連絡をつけないと!』
『フフフ』
また右腕の魔法石が一瞬光り頭に笑い声だけが響いた。




