ゴブリンと初めての………
残酷な描写があります、ご注意下さい。
馬車の荷台で寝ていた俺達を昨日の冒険者ドンボノが起こしに来てくれた。
「ツラナとケレリスは寝てていいよ」
起き出そうとしている二人に俺は声をかけてまだ寝ているホチネを揺すって起こす。
「ホチネ!俺とホチネは冒険者として雇われてるの。
早く起きて見張りに行くよ!」
「今、起きるから、先に、行ってて、フゥ、なら、一人でも、大丈夫、すぐに、行く、から」
ホチネは寝ぼけて寝言のようにたどたどしい言葉を口から吐く。
「先に行ってるよ!
すぐに来なかったら朝ご飯抜きにするからね!」
朝ご飯抜きの言葉に少し反応を見せる。
それを確認して俺は馬車の荷台から外に出て周りをよく見渡せる場所にある焚き火のところに行く。
「おはようございます」
「おはよう。一人かい?」
焚き火のところにはドンボノともう一人の冒険者が二人で周りを警戒しつつ火を絶やさないようにたまに薪を足していた。
「すいません。もう一人はすぐに来ます」
「我々は休ませてもらうけど。
もし魔物や盗賊が来たら遠慮なく大声でみんなを起こしてくれていいから。
自分達だけでなんとかなると思って結果的にみんなを巻き込んで損害を大きくしない方がいいからね。
それとこの焚き火は絶やさないようにしてね。
薪はここのを使っていいから」
俺はドンボノに薪の積まれた場所を教えてもらう。
「もう一人来るまで一人だけど大丈夫?」
「大丈夫です。
すぐに来るって言ってましたから。
それに何かあったら大声でみんなを呼びますから。
二人は休んで下さい。
また朝から一日長いですよ!」
俺が笑顔で答えると二人は少し不安そうに自分達の馬車に戻って行く。
しばらく一人で焚き火の番をしながら周りを警戒しているとケレリスが馬車から降りて来た。
「ケレリス?ホチネはどうしたの?」
「眠いからと言うので朝のパンと交換で私が見張りを引き受けた。
私はこう見えても昔は世界各地を研究の為に旅して回っていたのだ。
見張りもよくしていたよ。」
「ごめんね。俺達の仕事なのに、依頼者のケレリスに迷惑かけて」
俺がケレリスに謝る。
「いや、君に依頼者だと思われているとわかっただけでいいよ。
普通の冒険者は依頼者の事を呼び捨てにしたりしないからね」
ケレリスは笑って俺の肩をポンポンと叩いた。
『あぁ、前世でも敬語を使うのがいやでトラブルが多かったなぁ』
夜明け前の空が一番暗くなる頃。
クワガタの魔物が二匹こちらに向かって飛んで来た。
まだ距離は遠くこちらから倒しに行くか?他の冒険者を起こすか?
「私が一人で行って来るよ。
今日の朝ご飯のおかずに丁度いいから今日は君も食べてくれよ」
ケレリスは笑顔で走って魔物に向かって行った。
しかし魔物は不自然にケレリスを誘導するように方向を変えて飛んで行く。
ケレリスが近づくと逃げるように飛び離れると少し待つように止まっている。
ケレリスはだんだん遠くに離れて行きこちらからは見えなくなってしまった。
『ケレリスの応援に行った方がいいかな?
でもここを離れて別の魔物が来たら大変だしな。
ホチネを起こすか』
俺は立ち上がり自分達の馬車に向かおうと視線を向けるとケレリスの向かった反対側から何かが近づいて来ている気がした。
その何かは街道の脇の草原の草に隠れるようにゆっくりとこちらに向かっている。
草の不自然な動きがだんだん近づき俺は魔物か何が隠れていると確信していつでも風の刃を放てるように準備して姿を現すのを待った。
それが草の生え際から馬車を停めている広場に顔を出した時、俺とソイツの目が合う。
『ゴブリン?前世のゲームと違って人っぽい!』
俺は初めて見るゴブリンの姿に驚き一瞬の隙を突かれる。
広場に現れた二人のゴブリンは弓を構えると一人で見張りをしている俺に向かって矢を連続で飛ばして来た。
突然の事に頭を切り替えられずに一本目、二本目、三本目と矢を躱すのが精一杯で四本目と五本目の矢を肩と膝に受けてしまう。
「痛っ!」
この世界に来て初めて敵からの攻撃をまともに受けた。
俺のまだ小さいな体は、チート性能の服によって守られたが、矢の衝撃は服を通して伝わり肩と膝に打撲のような痛みを与えた。
準備していた風魔法も頭が真っ白になって撃つ事も出来なかった。
一人人のゴブリンが武器をナイフのような物に持ち替えて俺に向かって走って来る。
ボーッとスローモーションを見ているような感じの俺の右腕に嵌められた腕輪の魔法石が一瞬光り左腕の腕輪が盾に変わる。
左腕の盾は勝手に大きくなり後ろのゴブリンが続けて放つ矢を防ぎ走って来たゴブリンのナイフを跳ね返す。
勝手に盾が攻撃を防いでくれた事でやっと頭が回りだし慌てて風魔法の刃をゴブリンに向けて放つ。
俺の放った二つの刃はゴブリンの首を一撃でハネ首から血が噴き出す。
近くまで来ていたゴブリンの首から噴き出す血を頭から浴びまた頭が真っ白になる。
俺は膝を着き座り込み頭から血を浴び肩と膝の痛みだけを感じていた。
異変を感じてそれぞれの馬車から冒険者達が外に出て来る。
外の異変に気づき馬車から出て来たホチネとツラナが見たのは二人の首をハネられたゴブリンの死体と血溜まりの中で座り込み綺麗な盾を持った無表情な顔のフゥの姿だった。




