街道の魔物はどこに?
夕方前に今日の宿泊広場に到着した俺達は早速狩りの準備を始める。
「このくらいの時間帯からラトビが多くなってくる筈だよ」
ケレリスからのアドバイスを聞きながら広場から北の方に向かう。
「この辺りにラトビの巣がありそうだけど。
あった!この巣穴にラトビが……いない?」
俺達はいくつかの巣穴を見つけたが兎の魔物のラトビは見つから無かった。
「これだけ探してもいないなんてやっぱりおかしいな?」
ケレリスは巣穴を調べて何か考えている。
ツラナがそろそろ諦めて広場に帰ろうと提案したがホチネは肉を諦めきれないのか更に北の方に歩いて行く。
俺とツラナは今日の肉を諦めて、
「ツラナと俺は先に戻って食事の準備をしておくから。
二人ははぐれないように気を付けて!」
ホチネは頷くとケレリスの姿を確認しつつ更に周りを捜索している。
俺とツラナが広場に戻って来る頃にはすっかり夜も更けてだいぶ暗くなっている。
ツラナがスープを作る為に持って来ていた材料で何か作る事にして火を起こそうとする。
「ツラナ、火魔法を使えば?」
「ボクは回復魔法と防御魔法しか使え無いんです。
火起こしは教授の担当でまだ戻られ無いんで」
「そうなんだ。
俺が火を点けるよ?」
俺はツラナの用意した木片に火を点け何ができるのか鍋をのぞき込んで楽しみにする。
ツラナが野菜炒めを作り二人が帰るのをしばらく待ったが全然帰ってこない。
「魔法石で呼びましょう」
ツラナはペンダントになっている魔法石に魔力を込めてケレリスに連絡をする。
少ししてツラナの魔法石に返事が返ってきてた。
「今からこっちに戻るそうです。
あの後ラトビは出なかったみたいですが昨日の出た魔物を倒したみたいです」
『あぁ、あの魔物か』
いやな予感がしたが周りの他の馬車の商人は寝る準備を始め冒険者達は今夜の見張りの順番を相談していた。
冒険者達はこちらをチラチラ見て相談していたがそのうちの一人がこっちに近づいて来る。
「冒険者のドンボノだ。
一応今回の護衛隊のリーダーをしている。よろしく。
それで君達二人かい?
後の二人はどこに?」
「俺はフゥ、駆け出しの冒険者です。
こっちはツラナ。
あの二人は肉が食べたいって魔物を狩りに行きました。
もう、帰って来ますよ」
「もう帰って来るならいいのだが今日の夜の見張りを相談したくてな。
君達は見張りはどうする予定かな?
もしよかったら我々と協力しないかと思ってな」
ツラナと相談して俺達は一番最後、朝方の日の出前辺りの時間帯を担当することにした。
さっき来た冒険者ドンボノに交代の時間が来たら起こしてくれる事を頼み俺達二人はホチネとケレリスを待つ。
ツラナの作った野菜炒めは冷めかけていた。
どのくらい経ったか俺はうつらうつら眠りそうになっていた時二人は走って帰って来た。
「やっと着いた」
ホチネは軽く息を整え焚き火の前に座った。
ケレリスは肩で息をしていてツラナの隣に座ると、
「ちょっと、遠くに、行き過ぎた。
でも、ほら、これ、肉は、取れ、たから」
息を切らして話すとケレリスは自分の持っている袋からクワガタの魔物を出した。
「本当に食べるつもりだったんだ」
ホチネはその魔物を見ながらつぶやいた。
『俺もあれを食べるのは無理かな?』
俺はホチネと目で合図すると、
「俺とホチネはパンとスープにツラナが作ってくれた野菜炒めを食べるよ」
「そうだね。
ツラナの野菜炒めおいしそうだなぁ」
ホチネも俺に合わせる。
「そうかい?エルフの森にいた頃はよく食べていたものだがこの国に来てからは食られなくて久しぶりに故郷の味を堪能できる」
ケレリスはクワガタの魔物を自分で解体し始めて焚き火で焼き出した。
ケレリスは焼き上がったクワガタの肉を一つをツラナに渡す。
ツラナは恐る恐る受け取ると小さな口で食べる。
「おいしいです!見た目はアレですが味はとてもおいしいです!」
ホチネはその言葉を聞き、
「あたしも貰おうかな?」
ホチネはケレリスから肉を受け取りかじりつく。
「おいしい!本当にすごくおいしい!聖域で食べてる海老に似た味かな」
ケレリスは俺の方を見てくる。
「俺はいいや。もうお腹いっぱいだから」
俺は虫を断った。
『虫系は無理だ。
狼も犬みたいな見た目で食べるのに抵抗を感じる。
やっぱり俺、この世界の文化や価値観の違いに慣れるにはもう少し時間がかかりそうだな。
魔物を殺すにしても魔法でならなんとか倒せるけど直接武器ではトドメを刺すのには抵抗がまだあるからな。
ゴブリンか。
まだ直接会ってないから分からないけど見た目は人みたいな感じなのかな?
できれば人殺しは避けたいな。
でもホチネやみんなの命が俺の迷いのせいで失われるのはもっといやだ。
ゴブリンと出会う前に気持ちの整理と覚悟を決めないと』
虫を食べるか食べないかから俺は自分の心の中の優先順位を真剣に考えていた。
「ケレリスさん、さっき魔物を倒す時遠くの方にゴブリンの姿を見掛けませんでした?
暗かったから見間違えだったかもしれないですけど」
「私も遠かったので確信はないですがいたような気がしていました。
ゴブリンの偵察か斥候かもしれません。
襲う商人や冒険者の人数や装備、強さを調べに来ていたのかもしれないですね」
ホチネとケレリスの会話からゴブリンとの戦闘も近いことに改めて心を引き締める。
『迷ったらダメだ!後悔する方が絶対いやだ!』




