水の聖域からの旅立ち
黒月最後の日。
夕方頃。
シイバがいつものように夕食を持って来てくれる。
「夕食だ。
それとこの短槍を持って行ってくれないか?」
「ありがとう。シイバ」
「おぅ!じゃぁな!」
それだけ言うとシイバは部屋を出て行った。
夜になり久しぶりにラミネが部屋を訪ねて来る。
「フゥ…これ……餞別」
ラミネの手には一足の靴があった。
「水龍神様とわたしで作った魔法の靴よ。
履くと足にぴったり合うわ。
歩いても走っても疲れを軽減してくれるの。
そして魔力を込めると浮いて低くだけど飛ぶ事が出来るわ。
わたしは……………」
ラミネは肩を震わせ声を詰まらせ顔を伏せると部屋を出て行った。
俺は一人になった部屋でその靴を抱きしめた。
『ラミネ』
俺の頬には涙が流れていた。
日が変わり朝を迎えホチネが部屋にやって来た。
「準備出来てる?」
いつもの明るいホチネだった。
俺は神の服を装備してシイバのくれた短槍を持ちラミネのくれた魔法の靴を履く。
「いつでも出掛けられるよ!」
そうホチネに答えた。
「最後に水龍神様の所に挨拶に行くよ!」
水龍神の部屋の前にミユネが待っていた。
「フゥこれ……
朝ご飯のお弁当…あとで食べて。
……元気でね!」
「ありがとう。
ミユネも土の聖域に行くんだろ。
そっちこそ元気な!」
ミユネはホチネとも挨拶をすると西区に向かう。
水龍神はいつものように横になって俺達を待っていた。
「すまんなフゥ。
あと何年かラィが来るまでは置いてやりたかったがな。
ラィが来たらシイバからホチネに連絡させる」
「ハイ。今までありがとうございました。
もしラィが来たら連絡よろしくお願いします」
「ホチネも冒険者として成功するようにな。
それとフゥのことも頼んだぞ!」
「ハイ!任せてください!」
俺達二人は誰にも見送られることなく南区にある外界の門で地上に出る。
そこは海に浮かぶ小さな島だった。
その島には一件の宿屋と門を守る水竜人の警備員用の小屋、そして港しかなかった。
「今日は宿屋に泊まるわよ」
ホチネに連れられ宿屋に入る。
「いらっしゃいませ」
人間の女性が話し掛けてきた。
『普通の人間がいる!』
この世界に来て俺は竜人以外の普通の人間を初めて見た。
「予約していたホチネです」
「はい二名様ですね。
お部屋にご案内いたします」
カウンターにいた女性に二階の二人部屋に案内される。
「フゥ。これからの予定を話しておくね。
朝ご飯食べながらにしましょうか」
ホチネは椅子に座るとミユネから貰った朝ご飯をテーブルに広げた。
俺はホチネの向かい側の椅子に座り二人は朝食を食べ始めた。
「フゥ。三日月国に行く船は明日の朝早くに出るわ。
だから今日は早く寝てね。
十日後くらいには三日月国に着いて港のある街の宿屋に三日間泊まるから。
そのあとはラィかシイバからの連絡が来るまでその港町の宿屋で過ごすか家を借りるかして待つ、それかどこか他の町に行く?
それはフゥが決めて!」
「俺が決めていいの?」
「あたしはフゥに付いて行くだけ。
ラィが来るまでの護衛だから。
ここからはフゥが行き先を決めるの。
相談には乗るけどね」
俺は魔法石の地図を表示して三日月国を調べる。
「ここは海に囲まれている小さな島。
三日月国はここから北北西にある三日月形の島国か。
住んでいる種族はオークとノームとホビットに白魔導師、それとそれらの混血。
みんな友好的で町は安全。
国は五つの大きな町を中心に発展している」
「あたし達が向かうのはここ」
ホチネは南東にある町を指差す。
「この町は白魔導師族が多い町で研究所があるのよ」
「研究所?」
「そう研究所。
白魔導師は研究が好きな種族なの。
だから本だっけ?フゥが前に言ってた古い資料がいっぱいある図書館もあるらしいわよ」
「図書館ね。今はいいかな?
何か調べたいことができたら行ってみようかな?
それより町には俺でもお金を稼ぐことができる仕事とかあるかな?」
「仕事?フゥには普通の仕事は無理だよ。
ただし冒険者ギルドに登録さえ出来れば魔法石からでも依頼を受けれるし、報酬もギルドの銀行に振り込まれて支払いも魔法石かギルドカードを使って出来るよ。
ただ登録には試験が有るんだよね。
フゥの魔法の実力なら大丈夫だと思うけど年齢がね。
竜人族だと三歳から大人だから二歳は試験を受けれるかも解らないのよ」
「見た目でダメってこと?」
「見た目は関係ないよ。
ホビットとかゴブリンとか見た目が子供くらいの大きさの人種もいるからね」
「それなら歳を誤魔化せばいいんじゃないの?」
「魔法石を使うと歳はバレるから、それは無理だよ。
ギルドに着いたら二歳で大人の珍しい種族だって言っとこうか。ハハハハハ」
ホチネは笑った。
そのあと宿屋の中にある三日月国の出張所に行き入国手続きをして島を見て歩く。
この島の周りは水龍神の加護により魔物が出ないので最高の漁場だそうだ。
次の日の朝になり俺達二人は三日月国行きの船に乗った。
俺の水の聖域での二年間はこうして突然の終わりを迎えたのだった。
これで、序章を終わります。次からの一章もお楽しみください。
一章からは、魔物や他の人種も出ます。
一日あけて、二日後に更新します。
序章のキャラ紹介をアップする予定だったのですが、作者ポンコツで、別作品扱いになってしまいました。直し方解る方アドバイスください。
続きが気になる。読んでもいいかな?と思った方は、ぜひブックマークお願いします。




