バラバラになった三人
ホチネの突然の「わたしも一緒に行く」発言。
それに触発されて「オレも一緒に行くぞ!」とシイバも言い始める。
「シイバはムリ!弱いから!」
「弱いって何だよ!ホチネ!」
「あんたに冒険者はムリ!
それぐらい自分で解るでしょ!」
「フゥが外に行って冒険者になるとは限らねぇだろ!」
「冒険者になるに決まってるよ!
ラィって言う黒猫がどう考えても冒険の準備してるでしょ!」
「アノ黒猫が冒険の準備してたってフゥ自身が冒険者に成りたいかどうか解らないだろ!」
シイバとホチネの言い争いは続く。
「冒険者になると思う。
たぶん。
その為にここに居るんだ。
俺は……」
『前世の事や転生の事を話していいのか?
話したとして……そんな事信じてもらえるのか?
ラィことを待たなくていいのか?
そもそも前世を忘れてこっちの世界で生きてもいいのか?』
いろいろな事を考え俺の頭は混乱する。
そんな俺達の事を黙って眺めていたラミネが、
「ごめん。
わたしは聖域の外には行けないの。
聖域の掟を守りたいから。
フゥの事はまだまだ子供で凄く心配で……守ってあげたい!
でもわたしは…聖域も大切で…守りたいの!
フゥをこのまま聖域に居させる事は竜人族を不安にさせる。
それは聖域にとって最悪な状態に成りかねない」
「ラミネがあと百年は聖域の外に行けないのはみんな知ってるよ?
だからあたしがフゥと一緒に行くの!」
『百年?
みんな知ってる?
俺は知らないけど!
それより百年て竜人族の寿命は何年なんだよ!
それに竜人族が分裂するって俺どんだけ聖域にとってマズい存在なんだよ!』
俺は一人関係がない方に考えが脱線してしまった。
「水龍神様も長老達や他の竜人達のことを無視してフゥを聖域に置くことは出来ない。
水龍神様は神であって聖域の事は竜人達で決める。
それが聖域の掟」
ラミネは静かにつぶやいた。
「ごめん」
そしてラミネは部屋を出て行ってしまった。
「オレの実力じゃ冒険者は無理だ。
ごめん」
肩を落として悲しい顔でシイバも部屋を出て行く。
「フゥ!あたしは一緒に行くよ!
出発は黒月が終わったら!
そこまでは準備期間を貰えたから。
あたしも忙しくなるわ!」
ホチネは無理して明るく少しワクワクしたように部屋を出て行く。
『俺も準備しないとダメだよね?冒険者になる準備って何すればいいんだ?
それに気になった竜人の寿命や竜人族の掟とか……聞ける雰囲気じゃなかったからな』
それからの俺の生活は様変わりした。
俺は基本的に部屋の外に出ることは出来なくなり魔力の基本的な強化をする以外はする事がなくなった。
一日三回。日によってはそれ以上魔力を空にして休憩を取りまた空にするを繰り返した。
それにより俺の魔力量と強さはとんでもなく上がっていた。
ラミネはあれから俺の部屋に来ることはなくなった。
ホチネは聖域を出る準備でたまに相談に来るがとても忙しそうにしている。
シイバだけは毎日食事を届けに来てくれて少し話しをしていく。
ただあれからずっと元気はない。
そんな日がしばらく続き黒月も半分が過ぎた頃。
ミユネが突然訪ねて来た。
「久しぶりだね。
周りはいろいろ噂してるけど元気だった?」
「まぁ元気だよ。
する事なくて暇だけどね。
部屋から出られないから情報も入って来ないし、噂もどんな噂か知らないから」
「そうか。わたしはフゥの事いろいろ聞かれたよ。
どんなヤツ?とか。
怖くない?とか。
大丈夫だった?とか。
ハハハ」
ミユネは突然笑い出した。
「大丈夫とか怖くないって生まれたのは一年早いけどわたしより背も小さくて子供だし笑っちゃうよね?」
ミユネは俺を元気付けようとしているようだ。
「相談とか大人に言えない事とかあったらわたしが聞くよ?」
俺は少し考えて聞いた。
「竜人族の寿命って何年?」
ミユネは少しポカンとすると大笑いして、
「今それ聞く?フゥって最高に面白いヤツだったんだね」
「そうか?この前からずっと気になってたんだよ!」
「だいたい千五百歳。
冒険者になって死んじゃう人もいるけど。
聖域で生活すれば危険な事もないしだいたいの竜人はそのくらいまで生きるよ。
ただ竜人族は一年に一人しか子供が増えないの。
だからみんな自分達が大事なの」
笑っていたが最後は少し悲しい顔になってしまった。
ミユネの反応に話しを変えようと、
「ラミネは元気にしてる?」と聞いて後悔した。
「最近のラミネは部屋に隠ってて水龍神様の所にたまに行くくらいであまり見掛けないかな?」
更にミユネの顔を暗くしてしまった。
「それじゃホチネの様子は?」
俺は更に話しを変えようと聞く。
「ホチネね…………
彼女、本当は次の青月に四人でパーティーを組んで聖域の外に出掛けるはずだったけど……
パーティーを抜けて一人で冒険者になるらしいよ。
その準備で忙しくしてる」
『あの時の四人はそのパーティーだったのかな?』
「ホチネがパーティーを抜けたのって俺の為?」
「詳しくは解らないけど?それもあったかもしれない。
でもホチネはもともと一人でも冒険者としてやっていける筈だったからね。
槍の使い手としては四人の中で段突で水魔法も一番上手だったから。
元々二人パーティーがあったんだけど、長老達のアドバイスと言うか命令でホチネがそこに入たの。
そしてもう一人はポンコツで能力も無いのに付いて行こうとしているだけのヤツだったからね」
ミユネとしばらくぶりに話しをして部屋の外の事を知ることが出来た。




