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フラウside
ダンジョンからヤルジの宿屋へ戻って翌朝。
ご主人さまはまだ精神的な疲れが取れないからと、ごはんを食べに食堂へ向かった以外はずっとベットの上でごろ寝している。
布団を引っ被っているので出ているのは少し茶色がかった黒髪の先だけ。それが時々もごもごと動く。
(ヒマなのですー)
宿へ帰ったのはすでに明け方近くなってからだけれど、すぐに熟睡したおかげか、朝にはぱっちり目が覚めてしまった。
朝といってももう後一時間もすると昼の時間だけれど。
「ご主人さまー」
「んー?」
「フラウ退屈なのです。散歩に行ってきても良いですか?」
ご主人さまはごろんと転がってフラウの方を向くと、布団から顔を出して一つあくびをした。
「・・・んー、まあ、いいか」
ご主人さまは目をショボショボさせながらそう言うと、手を伸ばして枕の下からお金の入った布袋を引っ張り出した。
昨日まではそれなりに膨らんでいた袋は今はぺったんこ。
紐をほどいて出てきたのは銀貨が数枚とあとは全て銅貨や鉄貨。
フラウが今背に負っている蛇咬剣を購入して金貨は使ってしまったのだ。
お気に入りのその剣はご主人さまがガチャで引いた縄で鞘を縛り付けて背に背負えるようにしてくれた。
「これでお昼は適当な屋台とかで済ませてくれ。迷子になるんじゃないぞ。あと一人で町の外に出るのもダメだからな」
ちゃりと音を立てて銀貨2枚がフラウの手に乗せられる。
「念のためテディも連れていけよ」
言いながらまた布団を被るご主人さまに「はいです」と答えて、
部屋を出た。
宿を出る途中、宿屋の看板娘に行き交い軽く挨拶する。
つい目線はエプロンの下からしっかり主張する二つの膨らみに向く。
おっきな饅頭が片方に二つずつ入りそうな胸。
この看板娘と向き合う時、必ずご主人さまはそこをチラ見する。
自分の胸に手をあてて見ても、ぺったんこでガッカリする。
ご主人さまを喜ばせるには全然足りない。
「どうかした?」
看板娘がそう言って目線を合わせるため膝を折るとその膝の上に二つの巨大饅頭が乗っている。
フラウがどうすればそんなに大きくなるのかと聞くと、娘は顔を赤らめてからこっそり「私の場合は牛乳をたくさん飲んだからかな?」と教えてくれた。
牛乳をたくさん飲む。
牛乳をたくさん飲む。
牛乳をたくさん飲む。
繰り返し頭に刻み込む。
さっそく今日から始めなくてはならない。
まずは牛乳を置いている屋台を探すところからだろうか。
獣舎によってテディを連れ出す。
魔物であるテディは宿の中には入れないので、馬や他の従魔とともに獣舎にいる。
藁がいっぱいでいい匂いがして、フラウもキライじゃない。
けれど宿によっては藁が古くて汚れていてすごく臭いところもある。看板娘は胸だけではなくなかなか頑張っている。
テディと二人町を歩いていると、三人組の大人の人が「お嬢ちゃん飴をあげるからおいで」と言うのでもらうと変な味がしたのでぺっとした。
路地裏に連れ込もうとするので、テディに命じて巨大化させる。
悲鳴を上げて逃げた大人たちの向こうに見知った顔を見つけて、フラウは声を上げた。




