表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost fragment ーロスト・フラグメントー  作者: Konori
第2章 黒翼島跡地編
59/59

黒翼島跡地(5)

 崩れた灰色の砂山と黒い布の混合物を、四対の目が無言で眺める。



 陰鬱(いんうつ)だ。


 そうとしか表現出来ない重い空気が漂っていた。


 幻将(げんしょう)二人と戦い馴れた傭兵二人が束になっても苦戦する様な、正体不明のゴーレムもどきに出くわし、

 しかもそいつは明らかに手を抜きまくってこちらを嘲笑いながら逃げたのだ。


 黙り込みたくなる気持ちは四人に共通しているが、この空気は嫌だ。

 いつもなら率先して場を切り替える友人が黙っている以上、誰かが動かなければならない。


(あいつに襲われたのも収穫と言えば収穫だし、ともかくこんなトコ、さっさと調べて帰るに限ーー)


 動こうとした宵闇(よいやみ)のその前で、一番気が立っているだろう紺髪(こんかみ)の青年の足が動いた。


(ラグ……)

「…………」

 あえて考えない様にしていた友の中身は、宵闇(よいやみ)の想像以上に煮えているらしかった。


 ザクッ


 無言で近づき、体重をかけて砂山に足を下ろして踏みにじる。革靴の下で眼だったはずの銀の石が光った。


「これ、割れねえなぁ……」


 気だるそうな声が、どんな顔の口から出ているのか見えないが、想像はつく。

 ラグの指は躊躇(ちゅうちょ)なく銀色のそれをつまんで宵闇(よいやみ)に放り投げた。


「うわっと!」

「ちょっとぐらい、調べられるモン残しといた方がいいよな?」


 慌てて受け止める友人に、冷たいものが混じる声音でラグが言う。


「オレが持ってたら壊しちまいそうだから、宵闇(よいやみ)それ持っててくれ」


 宵闇(よいやみ)が答えるより早く、石を放り投げたその手が動く。

 掲げた先に造られた火球が、散らばった砂の上に降り注いだ。


「青毛」


 爆炎が消えると同時に見兼ねたリークが眉間に皺を寄せて声をかける。


「んー?」

「うさ晴らしは済んだか?」

「一応は、な」

「ならその酷い殺気を押さえろ。今ここにお前の敵はいないはずだが?」

「?……ああ、悪ぃ」


 さとされて、ようやく自身の放っていた空気に気が付いたようだ。


 ラグが一先ず落ち着いたのを確認して、リークはフェリオンへと視線を向けた。


「立てるかフェリオン」

「……」

「フェリオン?」

「あ、あぁ。大丈夫だ。

もう少し深かったら危なかったけどね」


 脇腹を深くえぐられた場所はリークの治癒術で塞がっているが、この短時間では完治にはほど遠いのだろう。

 ゆっくり立ち上がりながら苦笑する。


「奴の事は置いておくとしてだ、そろそろ本来の目的に戻った方がいいのではないか?」

「うん、おれもそう思う」


リークの言葉に返事をしつつ、そばに落ちていた自分の武器を拾い上げる。


「あの赤い太刀がそれだった可能性もあるけどね。

まあ、そっちはどうしようもない。

気になる言葉を残してくれたことだし」


 自分を見る深緑の視線に、宵闇(よいやみ)が頷く。


「『月の場所にして門の在りし処』だよな。

『月』ってのは俺の事らしいけど、訳分かんねえ」


けど、と頭の中でつけ加える。


「『門』は・・」


 ―強く願え、そうすれば―

 夢で見た、巨大な白い門。


(あれのことだよな?)


 考えながら目を向けた先、形は大分違うが記憶に残るものと似た模様があった。

 羽のレリーフと玉を散らせた祭壇。あの奇人が現れた時に座っていた場所だ。


「知ってるのかい、宵闇(よいやみ)

「アレがそうなのか?門には見えんが」


 同じ所を見つつ訊ねてくるフェリオンとリークに、宵闇(よいやみ)は「分かんねえ」と答える。


 そのまま近づいて、恐る恐る手を置いてみる。


 何も起こらない。


 思い切って祭壇を内側に入れる様に黒い壁を発生させてみた。


 やはり、何も起こらない。


「何か気になるんだけどなぁ。やっぱこれは違うのか?」

「いっそ壊せば、何か出てくるかもしれんぞ」

「賛成~」


「お前ら、ってか特にリーク。そんなに壊すの好きか?破壊魔って呼ぶぞ」


 呆れ顔で振り向く宵闇(よいやみ)に、白い青年は端正な顔にムッとした表情を浮かべる。


「別に好きな訳ではない。手っ取り早いかと思っただけだ」

「オレも同じく」



 ふざけた調子のラグは、未だ目が笑っていない。


 はぁ……

 自然とため息が出てくる。この場でまだ辛うじて力押し思考があまり無さげな茶髪の青年に視線をやる。


「あんたはどう思う?」

「壊すのも一理有りだけど、その前にもう少し周りも調べてみないか?」


 フェリオンは宵闇(よいやみ)に少し同情する様に見た後、後ろの二人に提案する。


「地図にあったのは、あくまでこの集落あたりってだけだから、他にも何かあるかも知れない」


(こいつが普通でよかった)


 ただでさえ、幻将(げんしょう)は『力の象徴』扱いされるぐらいの連中。


 宵闇(よいやみ)としては手掛かりらしく見えるモノを即破壊するのは反対だったので、彼まで破壊万歳ならどうしようかと思ったが、ありがたいことにそうでは無いようだ。


「わかった。この辺りを一通り見て回ってから考えよう」


 リークも納得し剣を収めたことで、ラグも何も言わなかった。


 誰からともなく祭壇から離れようとした矢先、リークが自分の腰、剣の鞘と反対にある小さなポケットを見る。


「ん?どうしたリーク」

「通信だ」


 リークがポケットの中から光る投影水晶を出す。 

 立てる様に手の平に乗せると、ひとりでに回り出した水晶は上に像を紡いだ。



 出て来たのは、いつもと変わらない表情を浮かべた彼女の兄。


『やぁ、皆そこにいるね?調査の方はどうだい?』

「邪魔が入って今から詳しく調べる所だ。貴様の事だからてっきり盗み見していると思っていたが?」


 相変わらず刺々しい返事に、画面の向こうのアスベルは苦笑する。


『私も別件で忙しくてね。そんなに暇はなかったよ』

「で、何の用だ?わざわざ通信繋げるってことは、そっちで何かあったのか?」


 宵闇(よいやみ)が横から挟んだ問いに、男は頷いた。


『時間がないから単刀直入に言おう。

調査を中断してキャスグローブ……獣人の島に向かって欲しい』


「どういう事だ?こちらは今から調べる所だと今」

『少し前から、かの島が何者かに襲われている。

ディーラは元より、向かわせたセリシアにさえ連絡が取れなくなった。

ここまで言えば、わかるね?』


 怒りを顕わにする妹に返された兄の静かな言葉に、四人全員の顔が強ばる。


『フェリオンに強制する気はない。出来る立場でもないからね。ラグ君も、ラグ君の意志に任せよう。

だが最低でもリークと宵闇君(よいやみくん)には動いてもらいたい。


セリシアの残した通信を聞くに、相手は『空間破砕』を使っているからだ』


「空間破砕だと?」


 拒否する気持ちなど、宵闇(よいやみ)にもリークにもすでに無かった。


「わかった。直ぐに向かう。

私が移動法陣を使うから、お前は其方で出口を作れ」


 翡翠(ひすい)の瞳がフェリオンとラグに向けられる。


「お前たちはどうする?」

「悪いが俺はパスさせてもらう」


 茶髪の青年が首を振った。


「俺としてはウェルズ卿の一件に片を付けたい。

相手が空間破砕なら、足手纏いになりかねないしね」

「オレもパス」

「え?」


 付いて来ると思った紺髪(こんかみ)の青年が出した言葉に、宵闇(よいやみ)が目を見開く。


「手負いのオレが行ってどこまで出来るか微妙だし……」


 ちらっと斜め前を見る。


「オレが残って一緒に調べれば、フェリオンが万一前の件に噛んでたとしても小細工できねーだろ?」

「俺、信用されてないんだね」

「万一さ、万一」


 肩をすくめるフェリオンに投げやりに返して、ラグはリークの方を向く。


「ってコトでオレはここに残る」

「承知した」


 頷いて次の瞬間、白い剣が地面を削る。


「行くぞ、宵闇(よいやみ)

「おう!」


 宵闇(よいやみ)が地表の円に入ると同時に、足元が発光して景色が反転した。


(Story:2 END)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ