シードという男
その球は周囲に雷を放ちながら姿を変え始め、やがて50m以上ある巨大な龍の姿になった。何故龍なのか、それを考えたがやはり最強の種だからかな。
「―――――――――!!!!!」
天地を揺るがす絶叫。それは威嚇のつもりなのか、将又欲望が叶わぬと知って放つ悲鳴か。まぁ俺にとっては物凄くどうでも良い。
「もうお前等の出番は終わった。国に戻れ」
それだけ言って地面を蹴り、一気に奴の眼前へと移動。すると奴は前足を上げ、後ろ脚だけで立ってから首を伸ばしてこちらを睨む。そして口元から炎を漏らしつつ大咆哮!
「―――――――――――!!」
「ハハッ…!本当は凄いんだろうが、さっき見た龍の方が怖い!」
口から吐かれる灼熱のブレスを回避するも、奴は首を動かしてこちらに当てようとしてくる。
それが地面に当たれば大地は溶け、それが天に向かえば暗雲は裂けていった。そして数分回避し続けていると、結果として周囲は燃え盛るフィールドに。
逃げ遅れた兵士は当然の如く燃え尽き、幹部級ですら直撃したものは死んでいる。まぁ…どうしようもないな。
「天雷!」
巨大な雷を奴に落とすも、ほぼ無傷。と言うよりは一瞬だけ傷が入ったが瞬間で再生した、と言った方が良いだろう。欲望が尽きない化け物だからこそ、もう色々とヤバいな。
――――その頃
「強いねこの子」
「言ったろ」
「想像以上!」
「―――でしょ!」
「パル!」
「来たのか」
「勿論!二人に面白い話をしようと思って」
「「?」」
「彼さ、多分『終天』テルミナスが前前世なのよ」
「「おぉ…」」
「なんだけど、何が面白いって今のシードは今世と前前世の自分の意識を殺してると思うんだよね」
「…何故そう思う」
「彼、前世の自分は自分じゃ無いって言ってるのよ。んでレイの息子ではないとも言ったから、本当に訣別したんだと思ったわけ」
「ふむ」
「なるほどなるほど」
「…反抗期の時にお前何て親じゃない!とか嫌いだ!って言う奴いるけどさ、大体それって本心じゃないじゃん」
「「うんうん」」
「…彼本心だったんだよね」
「「???」」
「だから最初は彼の魂って前世の彼じゃない?って思ったんだけど、魂に触れてみたら完全に前世のシードで間違いなかった。故に今世のシードは魂事消されてる」
「ではなぜテルミナスが出てきた」
「時折彼女に似てる言動があるから。基本は見栄を張りたいけど、特定の人の前だと弱みを見せるタイプでさ」
「それだけ?ちょっと微妙じゃん…」
「そうなんだけど、何となく似ててさ。でも間違いなく今世のシードの魂は死んでる。一部が吸収されただけでね」
「パルの言いたい事は分かったけど、それが本当か彼に聞いたほうが良いんじゃない?」
「確かに!」
―――その頃、シード
「星漣!」
「――――!?!」
「よし、良い感じ」
「ねぇシード」
「え?何だよパルパータ」
「シードって…その体の元持ち主の魂を消した?」
「!?」
…誰かに言ったっけ。…仲間の皆には夜に一回こっそり話したことがあるけど…他の人に言った記憶無いぞ?
序でにレイちゃんは言った時結構普通だった。と言うか…俺が20の頃に元持ち主の魂を消したのを知ってたらしい。……最初の頃は魂と共存してたけど、何か鬱陶しいから消したんだよね。
「何で消したのさ~」
「俺は俺だ。…レイちゃんの息子でも無ければ、この体の持ち主でもない。シードと言う名の魔王だ!」
過去には囚われない。囚われちゃいけない。…この体は魔王レイの息子じゃないんだ、彼はもう死んだ。レイちゃん自身も自分を親として見るんじゃなくて仲間として見て欲しいと思ってる。
だからこそ、俺は魔王レイの息子と名乗る気は無い。俺はシード、魔王シードなんだから。
「フフッ…君らしい答えだ」
彼女の笑顔を一瞥してから、龍の右手の薙ぎ払い攻撃を力尽くで防ぎ、魔力を一気に全身に循環させてから真上に投げ飛ばした!
「ハァッ!」
全身から魔力を放出し、真上に向かって思いっきり光線を放つ!それは奴の体を一瞬にして飲み込んで行き、奴の咆哮とも言える悲鳴が響き渡った。
「――――――――!!?!!??」
そして巻き起こる大爆発。奴の霧散していく魔力と肉片を、死霊魔法を使って無数のスケルトンに変え、一斉にパルパータに向かわせる。だが彼女は一瞬にして全てを破壊し、消滅させた。
その様子を見つめ、俺はニヤッと笑ってから彼女の方に顔を向け、ニヤッと微笑む彼女と見つめ合う。暫く静寂が続くも、突然彼女が魔力を解放して雨や雷、風をさらに強くさせた!
すると上の方で魔力が発生し、何かと思ってみれば白煙の中からさっきの龍がボロボロになりながらも姿を見せる!どうやら俺の死霊魔法に抵抗した肉片が自我を取り戻して急激に再生を行ったっぽいな。
「生きてたんだ。ってか死霊魔法に抵抗するなんて…」
「びっくりだねぇ」
そう言いながら刀を鞘に納めた瞬間、全身が冷える程の冷気が当たり一帯を襲った。地面は一瞬で凍結し、暴風雨は猛吹雪へ。
そして…さっきの龍は空中で完全に凍結し、凍った状態で重力に倣ってそのまま地面へと向かって行く。
「―――全く、長時間交渉したせいで出遅れる所だった…」
「あれが…」
声がする方向に居るのは黒い龍の様な翼を一対持ち、純白の髪を靡かせながら青い瞳でこちらを見つめるヤバい何か。
フロルも氷属性だが、彼女のは何方かと言えば攻撃と言うより防御に使う事が多い。そりゃ攻撃の時にも使うけど、魔力の込め方的にはより硬くして攻撃に耐えれるようにしてる。
対して此奴の場合、殺傷能力が異常に高い。その上で壊れ辛い様な硬さに調整してある。要するに…めっちゃヤバい。
「ジェネシス!大親友たる私の為に来てくれたんだね!」
「うんうん、君より弱いジェネシスさんが遊びに来てあげたよ」
「うげっ、死界での話聞いてたの?」
「まぁ実際パルには勝てないんだけどねぇ。…んで君がシード?」
「そうだよ」
「ふぅん…死界で見た時は複合魂だったけど、もう純粋だね。完全に整えたんだ」
「流石は元熾天使、そんなのも分かるのか」
「まぁこの程度はちょちょいのちょいさ!…君はシードであってその肉体の所持者でも、魔王の息子でもない。その認識で?」
「あってる」
「なるほどね~!純粋な魂になった事で漸く本来の力を君は発揮できるわけだ。…うん、実に面白い!さっ、邪魔しないから存分に戦って!」
全部お見通しって訳かぁ。恐ろしいな、熾天使って。
「序でに彼女も気付いてる」
「そうなの!?」
「まぁ流石にね!短期間で此処まで強くなれるのはおかしいからさぁ。まっ、これで完全に分かったね。君はもう何も悩む必要も無い。そうだろう?」
「うん!もう何か過去の出来事を悩む必要も無い。ただ今を純粋に生き続ければ良い!」
「よし!じゃあ…始めよう!」




