弟子
―――数刻前
「…ラオ、行ってきなさい」
「はい」
「負けちゃだめよ」
「勿論!」
私はそう言って玉座の間から出て行き、一階へ移動してから城の扉を思いっきり開けた。それから多くの化け物に追われながらもこちらに歩いてくる二人を見つめる。
「……始めようか」
アイテムボックスから聖騎士時代に使っていたヘルムを取り出し、それを天高くに投げ飛ばした。その刹那、私の剣とワールスの聖剣がぶつかり合う!
そしてエトワールの刀が背後から迫るその瞬間、ヘルムは眩い閃光と共に大爆発を巻き起こし、大地を信じられない程に揺らした!!
「「!?」」
「君達が来たという事は戦争も終盤に入ったという事。…だから私達も力をちょっとは出して兵を強化しないと」
次々と出現する超巨大な化け物。それらはゆっくりと歩くが、一歩踏み込むごとに化け物を生み出し、あっと言う間に超が付くほどの大軍へ。
「さて、唯一の好機を逃したねエトワール」
驚きで私に一撃を与えず、後ろにちょっと下がってしまった彼女へそう言い、ワールスに力で押し勝って吹っ飛ばしてから水の弾丸を数発放ってエトワールを軽く吹っ飛ばす。
それから彼女の背後に回り、思いっきり蹴り飛ばしてから城の扉を閉めた。
「決着を付けようか、二人共」
「…倒す」
「負けない」
「良い表情」
思いっきり踏み込み、二人の前へ移動してから戦闘を開始。
「ホーリーレイ」
「ッ…」
「当たらない」
「君は本当にすばしっこい」
複数の短剣を投げてからエトワールは突っ込んできた。ので短剣は突風を作り出して吹き飛ばし、彼女の刀に剣を思いっきりぶつける!
「貫け…炎槍!!」
「わお、沢山!」
ワールスの放った多くの炎槍を躱しつつ、エトワールと空中で何度もぶつかり合った。するとワールスも混ざり、二対一に。
「天月!」
「っと…」
「黒戒!」
「君等が扱うそれは怖くない。そもそも闇魔法って分かってれば幾らでも対策のしようはある」
ひらりと身を翻して回避し、斬撃を放って彼女達の付近にある地面を破壊。それから竜巻を作り出した。
彼女達は上手くこっちに来れず竜巻に飲まれ、10秒後には地面に片膝御ついていた。しかもボロボロの状態で。
「岩石で身を削られるのはさぞ痛いだろうね」
そう言った刹那、戦場が大きく揺れた。それどころか信じられない程に強烈な威圧が襲い掛かり、私も片膝をつく羽目に。だが二人はもう全身が地面に。
何事かと思って辺りを見渡すと、丁度頭上にある黒雲の渦巻き、その中央から一体の龍が姿を見せた。
それと同時にシードがでっかい化け物を吹き飛ばして姿を見せ、城からはパルパータが姿を見せる。
「こりゃびっくりだぁ。初めて見た」
「何の用?今弟子が戦ってるんだけど」
「…見に来ただけだ」
「毎回言ってるけど…登場が派手過ぎ!!」
「すまん」
「友達?」
「うん。彼女はコラプス」
「邪魔をする気は無い。少し離れた所で見ている」
「そ、そうか」
翼を羽搏かせ、音速を優に超える速度で何処かに飛んでいった。それと同時に威圧が消え、ようやく立ち上がれるように。
「さぁやっちゃえ!」
「うん!」
「ワールス、エトワール。…お前等なら勝てる!」
「「勿論!」」
―――その頃、少し離れた場所にて
「……紅茶はストレートだったな?」
「えぇ」
私の元にやって来た一人の少女。此処は戦場から少しだけ離れた平原であり、彼等の戦いは見えないが兵士の戦いは見える。
まぁ私の持つ魔道具を使えば彼等の戦いも容易く見えるがね。
「ふぅ…」
少し疲れているのか、息を吐きながら私の前に座り、机に置かれた紅茶を一瞥してからこちらを見てきた。
「久方ぶりね、オメガ」
「…あぁそうだな、コラプス」
「こんな面白い事が起こるならもう少し早く教えてくれればいいのに」
「仕方ないだろう?ジェネシスが騒いで中々こっちに来れなかったんだ。二人と話すこともあったしな」
「…そう言えばジェネシスは何をしてるの?」
「タルタロスの館で優雅に生活してるさ。パルパータが今度入るから面倒な事が起こりそうだ」
「あの二人は馬鹿コンビだからね、仕方ない。まぁ今度からは三馬鹿トリオにでもなりそうだけど」
「…フフッ、違いない。彼は自分が魔王レイに似ていると思っているけど、それ以上にパルパータに似ている。…一度手合わせしたが、私があの武器を使っても良いと思う程に似ている」
「それって相当ね!…さっ、一旦見ましょ!」
「そうだな、そうしよう」
―――その頃
「龍爪」
「ッ…」
「天月!!!」
厄介なコンボだな。あれを食らえば俺も流石に負傷するに違いない。龍爪は龍の引っ掻き攻撃みたいな感じで強力な技だ。しかも斬撃が複数飛んでくる。
天月は言わずもがなだね。…一つなら良いんだが、二つが続けてくると躱しにくい。その上あの二人がやるとタイミングが厄介で、どっちかが直撃する可能性がかなり高まる。
「凄い、二人はやっぱ強いね…!」
「ラオも凄い」
「…でも負けない!」
しかし今のを食らっても尚、鎧の肩部分が少々破損して方が露見しただけ。要するにほぼ無傷。対する二人は既に若干負傷してる。
まぁ俺達は鎧ってより装束、強化された服だからな。それを活かせてないんだろう。何せあのロングコート、ちゃんと使えばあの鎧より強固だ。
「…魔力が上手くコントロール出来てないな」
「魔力を自分の身体と思えてないんじゃないかなぁ」
「多分な」
刹那、ラオは無数の斬撃を全方向に放った。勿論こっちにも飛んで来たので、息を吐きながら魔力を全身に流す。パルパータも同じことをし、斬撃は当たった瞬間に消滅。
「彼女達は負傷しちゃったね」
「未熟だからな。…天才でも、努力家でも、ただの訓練じゃ意味がない。百聞は一見にし如かず、その状況を聞き、予想してやっても実際に食らうまで実態は分からない。…一度食らってこそ、彼女達は強くなる」
「…フフッ…違いない」
「「天月!」」
「無天!」
黒い斬撃は二人の放った一発目の斬撃を容易に破壊し、そして本命である二撃目とぶつかり合う!
今までは相打ちだった斬撃、今回はどうなるか、そう思った瞬間…また相打ちになったのでちょっとがっかり。
「「ハァッ…!」」
「攻めか…!」
「決めに行ったね!防げればラオの勝ち、防げなきゃ…ラオの負け!」
爆発の煙から飛び出した二人。ラオはそれに驚きながらもニヤッと笑い、己の持つ剣に黒い魔力を纏わせた。
対する二人も黒い魔力を纏わせ、とある技の構えを取って更に速度を上げる!
「無天!」
「「淵渦!」」
「こりゃ吸引力が凄いね」
「…二つのブラックホールが合体するぞ」
轟音というか、悍ましい音と共にブラックホールは合体。俺達は吸い込まれない様にちょっとだけ後ろに下がり、それをただ眺めた。
序でに放った二人は、ラオの剣がぶつかった瞬間に力負けして後ろに吹っ飛ばされている。だがそれは彼女達の計算通りなのか、二ヤリと笑いながら地面に武器を刺して吸引に耐えていた。
ラオ自身は周囲の地面事吸い込まれ、今は見えない。…だが10秒経過したと同時にブラックホールが消滅し、彼女が再び姿を見せた。
だがその姿はボロボロだが、鎧は完全に砕けてはいない。ボロボロではあるが原型は残っている。ただ…彼女はもう限界だった。
「……こりゃ…参ったね…」
そう言いながら剣を地面に刺し、片膝をつく。すると様々な所から血が流れだし、どんどん血の池が出来ていく。
「か、勝った…」
「勝った!!!」
すると近くまでやって来ていたラスハントが驚いたように剣を何度も地面に突き刺し、そして…その大剣を天高くに掲げた。
「エトワールとワールスが暗黒騎士を倒したぞ!!!!」
「「…ウオォォォォオオオ!!!!」」
すると二人は嬉しそうに抱き合うも、力が抜けたかのようにその場に倒れる。
「…負傷し過ぎちゃったね」
「…うん、血が…」
「フフッ…実に見事!…さてシード、武器の強化は勝負が終わってからにしようかな」
「それでも構わんさ」
「なら良かった。……それじゃ、まずは体でも動かしてくると良いよ!」
突然俺の顔を掴んだかと思えば、要塞の方に向かって思いっきり投げ飛ばしやがった。
何のつもりかと思ってると、まだ生き残ってる数体の超巨大な化け物が全て球となり、それらが合体して一つの球に。かと思えば他の化け物も全て球体に合体して行き、全てが合体した所で赤い雷が逸れに命中!
「君がそれを倒せなかったら私と戦う資格はないよね!」
「ハハッ…舐められたもんだな」




