ヤバい奴×3
「―――おい!さっきの何だよ!って…誰かいる!?」
「まぁまぁ、私の隣においで!」
「う、うん」
突然玉座の間の扉が開いたかと思えば、若干キレ気味のシードが登場。しかしオメガを見て困惑し、私の言葉に素直に従って隣へ。
序でにラオはオメガの隣に座っている。めっちゃ緊張してるのか、スプーンが異常な程に震えていた。
「えっと…カレー?」
「そ!彼女が作ったんだよ!」
「ふむ、君がシード君か」
「どうも、シードです」
「私はオメガ、宜しく」
二人は握手を交わし、何事も無いかの様にしながら席に座る。
「彼女は口調が男っぽくなるけど気にしないであげてね。正直口調はどうでも良いらしいけど」
「そうなの?まぁ男っぽくても女っぽくてもどうでも良いよ!」
「それはそう!あっ、一口居る?ってか食べる?」
「あるなら食べようかな~」
「ラオ、よそってあげて!」
「は、はい!」
「?」
「オメガは終焉シリーズの一体でね。知ってる人は知ってる『厄災の化身』だよ」
「あの厄災の化身!?」
「まぁそう呼ばれてた時期もあったけど…今の私に当時の支配欲なんざ無い。大事なのは食事だよ食事」
「当時は何で…?」
「…まだ魔王が生まれる時代の前、それはもう酷く暇な時代でね。面白い事なんて殆ど無かった。だから至る所を破壊して歩きまわってたの」
「怖っ…」
えっ、何この子可愛いんですけど。本当に怖かったのかちょっと私の服引っ張ってるんですけど。は?…可愛い。
「まぁパルパータが召喚されて、結局彼女に説得されて辞めたんだがな」
「その時はまだ意識無かったの?」
「ううん、私は世界が生まれてから101年後、紀元前999899年には意識を持ってるよ。まぁ遅い方だけど。…止めるのも結構骨が折れたんだよねぇ」
「よく召喚者に従ったね…」
「きちんと仕事は熟すよ!まぁ代価として召喚主とそいつが住んでる国が消えたけど」
「う~ん、流石。…どうやって止めたの?」
「普通に彼女が満足するまで戦ってただけ」
「やっぱパルパータって凄いな」
「えへへ、そうでしょそうでしょ!」
するとラオがカレーライスをシードの前に置き、再びオメガの横に座った。
「いただきま~す」
私の服から手を離し、一口それを食べる。すると彼は目を輝かせてオメガの方を見た。
「美味い!」
「そうだろ?今の私はただのしがない道具屋の店主をしながら、美食を求める一般女性さ」
「良いね、生を謳歌してる!」
「フフッ、どうも」
「………」
「…な、何?どうしたの?」
「べっつに~?」
そう言いながら全部食べ切り、もう一度シードの方を見る。彼はこっちをチラチラ見ながらもカレーを食べていた。
「…何だよぉ…」
「可愛い」
「はぁ!?と、突然何を言ってんの?!」
「パルパータが遂に恋愛…?マジか…」
「…だってシード可愛いんだもん。見てごらん?口調は男っぽいけど、この完璧すぎる顔立ち、綺麗な肌や髪」
「まぁ確かに可愛いって言うのは分かるけど、君が恋するなんて明日は今日より多くの隕石でも降るのかい?」
「燃やしたろか」
「メンゴ」
「はぁ…。でも隕石は降るかもね!」
「マジかよ…。ってか今更だけど、平然と敵のトップの前でカレー食べてるの意味が分からないな」
「それは言っちゃダメな奴だよ」
「それもそうか」
「そう言えば君等殺し合いしてるんだっけ?」
「「そうそう」」
「…色んな奴等の殺し合いは見てきたけど、君達のは見てるこちらも楽しめそうだね。…ふむ、シード君」
「ん?」
「君が勝ったら私は君の街に定住するとしよう。利益は君が欲しい分毎月収めよう。絶対に売れるからね」
「そうなの?!」
「勿論。こう見えても私は生産系の魔法が得意でね。修繕や錬金、鍛冶のスキルは恐らく世界一かもしれない」
「戦闘中に服が破れても、此奴が一緒に居ると直してくれるよ。大太刀が刃毀れすれば直してくれる」
「味方なら最高だけど、敵に回したらいっちゃん面倒な奴じゃん…」
「まさにそれさ。勝てる勝てないじゃなくて、面倒過ぎる」
「酷い言い様だね?私に勝ったくせに」
「勝ったの!?」
「確かにオメガは厄介だし、普通に結構強い。でも戦闘をメインにしてきた私とじゃ勝敗は決まってるようなもんさ」
「ほえぇ…」
「…そうだ、私と一戦やってみるかい?」
「良いの!?」
「勿論。審判は宜しくね、パルパータ」
「うげっ、厄介な仕事を押し付けやがって…」
「…………ヤバい人が三人も居るよぉ…」
「「誰がヤバいって?」」
「俺を巻き込まないで!?」
「いや、全員ヤバいよ?!」
「「い、言い切った…」」
――――その後、パルパータとラオが審判で試合をする事に
「よし、やろうか」
「それが装備?」
彼女の装備は何方かと言えば暗殺者に近いだろうな。あの後の会話で、そのロングコートの内ポケットに暗器を多く入れてるって言ってたし。
「その通りだよ。この下は普通に軽装でね。パルパータの一撃なら防げるようにしてる。要するに最強以外の攻撃は通じない」
「なるほどね!…パルパータ、此奴せこい!」
「それな」
「顔を殴る!」
「わぁ、大胆な宣言。さぁ始めよう」
「…はじめ!」
パルパータの合図で素早く前に接近。すると次々と空中に様々な武器が生成され、どんどん飛んで来た。
「俺の知ってる錬金とは違う気がするなぁ!?」
「無属性魔法って言う人も多いかな。後ろを見ればわかるけど、この武器は永続で使えるわけじゃない。役目を果たせばすぐに消えて魔力に戻る」
一瞬だけ後ろを見れば、確かに地面に刺さった奴から消滅している。本来の魔法ならあり得ない。
「原理が理解出来ん。…無限にその攻撃が出来る事になるぞ」
「無限にその攻撃は出来るよ」
「う~ん、もしかしてユニークスキル?」
「うん、還元っていうスキル。形が残ってくれる魔法になら使えるんだよね。火球は爆散するけど、水球なら水として残る。それは魔力に還元可能」
「せこい!」
「フフッ、ごもっとも」
そう言いながら刀にとある魔法を付与して軽く跳び上がる。それから飛んでくる武器を全て切断し、一気に懐まで接近。
「…君は彼女に似てるね。ただ別の動きも混ざってる」
彼女はそう言いながら後ろに後退し、クスッと微笑んだ。
「俺の流派は魔王レイのとパルパータのを混ぜてる。技術と力を兼ね合わせた独自のもんだ」
「なるほど。だけど思考は彼女よりかな?普通なら魔法封じの結界とか他の対策を考えそうだけど、君は正面から私のスキルを否定するために破壊魔法を刀に付与した」
「…その通りだ」
「じゃあ…そろそろ少し真面目にやろうかな」
彼女がそう言った刹那、雰囲気が一変。今までは特に何も思わなかった彼女の魔力が、一気に荒れ狂い始めた。
かと思えば突然それが落ち着き、多くの魔法陣があらゆる場所に生成。
「…フェイク!」
思いっきり正面に移動し、驚く彼女の目の前に移動。そしてそのまま刀を振るった!
「よく分かったね!」
しかし彼女は一切取り乱さず、アイテムボックスから取り出した薙刀を巧みに扱って攻撃してくる。
ヤバいと思って距離を取った瞬間、それが消滅し、赤い球体となって彼女の周囲を浮遊し始めた。
「…そこまで!」
「「!?」」
「あのねぇ、此処一帯を焦土に変える気?」
「ちぇっ…」
「大丈夫?シード」
「う、うん。…ってかオメガって戦うと人格変わる?」
「あれが素よ。普段は商人だから」
「あ~」
「そゆこと。…まっ、私は遠くから君達の事を観察させてもらうよ。そうだ、道具が欲しくなったら私の名前を読んでね」
「おう、了解」
「…明日は私の育てた子と彼の育てた子の対決だけど、それでも見るの?」
「興味深いからね。それじゃさよなら」
彼女はそう言って姿を消し、パルパータは何故か俺の頭を撫でてきた。
「……なぁ」
「何だい?」
「…この肉体の親は居ないし、レイちゃんはもう俺の親じゃない。俺は息子だけど、でも俺はシードであってあの時のシードとは違う」
「まぁそうだね。君の言いたい事は分かる。…前世の自分と今の自分を区別したいんだろう?」
「うん。…もうレイちゃんは親じゃないんだ。ただの仲間、それだけ」
「…へぇ、本心なんだ。ちょっと意外かも。過去の自分は自分じゃない、自分には関係ない、そう捕らえて良いかな?」
「構わない。だって魔王レイの息子であるシードは死んだんだから。……それで…その、なんて言うか…もうちょっとだけ……」
「…フフッ、分かったよ。特別だからね」
そう言いながら軽く抱きしめたり、背中や頭を撫でてくれるパルパータ。
「存外君も…子供っぽい一面があるんだね」




