終わりなき戦い
「フンッ…!」
刀を振るいながら馬を走らせること小一時間。城との距離が大分近くなってきた。…うん、この辺に拠点を作れると楽かもな。
「天月!」
近くまで迫っていた巨大な化け物。その体が切断されたかと思えば一瞬で炎に包まれ、そのまま消滅。どうやら天月を放つ時、獄炎を纏わせていた様だ。
「考えたな」
「でしょでしょ!」
「本当にお前達は良い組み合わせだ」
ドヤ顔してるワールスの後ろで、馬鹿か此奴と言わんばかりの表情を浮かべながら刀で複数の敵を屠るエトワール。
ワールスが主に馬を操り、エトワールは後ろに乗って警戒。いい組み合わせだよな。エトワールはワールスより遥かに動きが早いからこそ、敵兵を倒しながら移動することが出来る。
今だってほら、倒した敵を蹴って移動し、再び馬に跨った。
「ちゃんとして」
「メンゴ!」
「思って無いでしょ…」
「さて、俺と共に来た軍は…ラスハントの所か」
亡者の行進としか言えないアンデッド軍団を率いたラスハントが俺達の後に続いている。その光景は怖いが、でも凄く頼もしい。
「ラスハント、お前の相手が居るぞ」
「うむ!あれは我に任せるが良い!…退却時刻は何時だ?」
「お前が判断すれば良い。不味いと思ったら戻れ。要塞が陥落したら実質的な敗北だしな」
「承知した!」
ラスハントが馬を走らせて向かう方向に居るのは、5mほどあるヤバそうな化け物。将軍格よりも遥かにヤバそうだ。
将軍格は丁度こっちの将軍格と同等の実力だが、あれになると何をしてくるか分からないからどのレベルか判断できない。
とは言え四天王級とは思えん。絶対とは言わないけど城内に数体潜んでると思うんだよな。
まぁあれにラスハントなら負ける事はないだろ、多分。今は近くに居ないけど、プレアデスが戦っても問題無いだろうな。彼女、何気に結構強いし。
「――――シード、君の実力を見せてもらう」
そんな声が聞こえたかと思えば、少し離れた場所にある城から誰かがこっちに跳んで来た。
「…ラオ」
「パルパータ様が戦え無くて寂しいと喧しいので、貴方が敵と本気で戦う事を条件に黙ってもらってる」
「主に散々な言いようだな」
「まぁね!…さっ、君の相手はこれだ」
彼女が指を鳴らした瞬間、彼女の周囲に魔法陣が複数展開され、ラスハントと戦い始めた化け物が十体程出現。
「ワールス君とエトワール君は私がお相手するよ。ただし本気は城の中で。今はあくまでも戯れさ。本命は彼の戦闘シーンだからね」
「「ッ…!」」
「良い。お前達はラオと戦ってろ。……そいつはパルパータの弟子みたいなもんだ。適当にやってくれても下手すりゃ死ぬぞ」
びしょびしょになった髪を後ろに払いながらそう言い、腕を広げてニヤッと笑う。
「失せろ、欲の結晶体」
無数の魔法陣を展開し、様々な種類の魔法を浴びせた。そしてその間に両手に貯めた魔力を使い、正面に光線を思いっきり放つ!
「……再生能力持ちか。まぁ欲望は一時満たされても直ぐに湧くし、それを体現してるというなら流石と言うべきか」
ただ光線を諸に食らった三体は消滅していた。故に耐久面に関してはそこまでと言ったところだろう。ラスハントもすでに終えている。
物足りなかったのか若干魔力が暴れてるしな。この程度は四天王級ですらないのだろう。何をしてくるか分からない程に強そうだが、知性が足りてない。
「余興にもならんぞ」
戦場で倒れる死体を全て地面の中に溶かし、そして俺の影から巨大な手として出現させ、彼等を掴んでから天高くまで伸びて行き、それから思いっきり城の方に投げ飛ばした。
「えっ」
「パルパータ、野球だぞ!!!異世界の文化知ってるお前なら分かるだろ!!!」
声を魔力で拡声させて思いっきり叫ぶ。すると城の一部がぶっ飛んでパルパータが姿を見せ、手に握る金属バットを使って思いっきりその肉塊を打った!
「あっちゃ~!空中分解!」
彼女は若干不服そうな表情を浮かべ、手に作った獄炎で徐々に分解する肉塊を全て消し飛ばす!
そのまま俺の目の前に降り立ち、魔力を一気に解放したかと思えば…突如として巨大な魔法陣が出現し、今まで見てきた化け物よりも屈強且つ装備も整った化け物兵隊が出現。
人型も居れば魔獣に近い奴も居る。異形過ぎて何だか分からないのも。
「進軍開始!!!」
「「―――――――!!!?!!!」」
「じゃあ今までのって…」
「ただの余興だよ!今から動かすのが本隊!」
「ラスハント、戻れ!」
「うむ…!」
「パルパータ、どうする?私追いかけようか?」
「いや、敵陣に突っ込めば死ぬ事になるよ。四天王クラスならラオも勝てるだろうけど、奇怪な魔術師は居るし、そもそもその二人が逃すとは思えない」
「確かに…ね!」
「さぁどうするシード!このままだと蹂躙されちゃうよ!」
「…東西南北全てに用意してたのか」
「イグザクトリー!」
『各方面の指揮官は順次要塞まで後退しろ。…要塞で迎え撃て』
『『了解』』
「お前も攻めて来るのか?」
「私はお城で待機だよん!進軍開始って言いたかっただけだし」
「相変わらず…変だな」
「フフッ、その言葉はそっくりそのまま返すよ」
「酷いなぁ。…で?この雨は何時まで続くの?」
「君が倒れるまで!」
「ふむ、お前が封印されるまでか」
「フフッ…」
「ハハッ…」
互いに跳び上がり、そして少しの間見つめ合う。それから彼女は何も言わず少し微笑んで姿を消した。
「一度下がるぞお前等」
「ん!」
「…了解」
「二人共またね~!次は城で会おう!」
と言う事で二人は馬に乗ってもらい、俺は一足先に城へと戻って城壁の上に。
「シード様!?」
「…此処まで攻撃が届くのか」
近くに居た男は肩から血を流しながらも、バリスタを使ったりして攻撃を行っていた。この付近を指揮してる男は今にも死にそう。
「全員下がれ。命を懸けて戦うのは大事だが、その容態じゃ邪魔になる。指揮も適当とは言えん」
「し、しかし…」
「とっとと治癒士の所に行け」
飛んでくる矢を風を巻き起こして弾き、如何すればいいか迷ってる指揮官を睨んだ。
「…有難う御座います、シード様」
「良い。此処一列全員連れてけ」
「ハッ…!」
一分もしないうちに北側の城壁から人が消えた。他にも何名か指揮官は居たが、全員行ったようだ。残ってるのは…死体のみ。
「居るんなら手伝って欲しいんだがどうかな?ルナテクス」
「僕はただの魔法使い、君の様な才ある者に助けを乞われるなんて面白い事もあるもんだね~」
「ただの天才の間違えだろ」
「おぉそうだった。しかし僕が助けるとなれば一魔法につき白金貨100枚ほど頂こうかなぁ」
「……ならお前の秘密を聞くのは幾らだ?」
「アハハ、何を言ってるのかな?」
「名前同様そう簡単に明かす気は無いんだな」
「そりゃ秘密だからね!乙女は秘密が多いものだよ」
「認めたな」
「………うわっ、此奴…」
刹那、突風が吹き荒れて俺の真横に仮面を被ったルナテクスが姿を見せた。
「…まぁ手伝ってあげるよ」
「そりゃどうも」
「数カ月前に私の胸を見て内心貧乳だなって思った事は忘れないけど」
「バレてた!?」
「認めたな」
「うぐっ…」
「そうだよ私は胸無しだよ!!!」
魔力が一気に荒れたかと思えば、複数の巨大な竜巻があらゆる場所に出現。敵も味方も問わず次々と吸い上げ、大地を抉っていく!
「おまっ…!」
「問題ない」
竜巻に吸い込まれる兵士を見ると、全員に簡単な結界を張っていた。簡単、と言ってもあの竜巻に耐えれる程度のだから結構硬い。
「着地も問題ない。ちょっとした飛行魔法を開発したから。魔力で飛べない人達用の魔法」
「凄いなお前…」
「天才だからね!あっ、伝えといて~」
「……へいへい」
『竜巻に吸われた奴は結界が張ってあるから安心しろ。んで着地だが、飛行魔法の効果で飛べるようになってる筈だ。故にそれを駆使しろ』




