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勇者vs王国残党兵

「―――あっ、戻って来た~」


「ワールス?お前珍しく早起きだな。まだ深夜だが」


「他の人よりもちょっとだけ魔力の変化に気付きやすいのだ!」


「そうなの?」


「うん!」


中庭に立って待ってたらしいワールス。取り敢えずロングコートを脱いで彼女に羽織らせた。


このロングコート、戦闘用だけど出掛ける時は毎回着てる気がする。多分気のせいじゃないよね。


「い、良いの?」


「まだ寝るつもりじゃないんだろ?…髪が濡れてるから、もう顔洗ったんじゃないか?」


「わ、私の事を結構見てるね!?」


「まぁな。だがどうして顔まで洗ったんだ?」


「だって結構多く敵が来てるでしょ?それを偵察してたんじゃないの?それともでっかい魔力の方?」


「…でっかい魔力しか分からないんだが」


「シー君ってばまだまだだね!ほら掴まって!案内する!」


「お、おう」


ワールスを疑うつもりはないが、正直本当に何を言ってるか理解できない。でっかい方は多分サタンの事だと思うが、多くの敵ってなんだ…?


とか思いながら彼女の手を握ると、転移が発動して魔族領と王国領の境目付近に移動した。


「ほら!」


「…マジか」


そこに居たのは、決して少ないとは言えない程の王国兵。旗を掲げ、馬にまたがって行軍している。ただ村人も連れているようで、武具も充実してない感じだ。


暗闇のお陰でこっちには気付いてない模様。まぁ転移時に俺が隠密を自分とワールスにかけたから探知魔法に反応してないんだろうよ。


「お前凄いな…」


「フッフッフ…そうでしょ~」


「しかしどうしたもんかな」


「僕に任せて!」


「おっ、なら任せてみよう」


「うん!」


彼女はそう言って剣を引き抜き、ニッコリ微笑んでから地面を蹴って一気に側面から接近し、松明持ちだけを的確に斬り始めた。


「な、なんだ?!」


「敵襲だ!」


「何処に居るんだよ!」


「探知魔法に映らないんです!!」


多少マシになったとはいえ、まだ動きが荒いな。無駄な動きがちょっと多いせいで敵の体に偶に彼女の体が当たってる。


「少しだけ手助けしてやるか…」


指先に魔力を溜め、ビームを放って完全武装兵だけを的確に処理。数人しか居ないので直ぐに終わり、再び観戦に戻った。


それから数分後、彼女は見事に無傷で王国残党兵を倒しきり、明らかに兵士じゃない奴だけを縄で拘束。


「適当に?」


「一応鑑定で村人だけ此処に縛ってみた!と言うか他は全員死んでる!」


「うん、まぁ確かにそいつらは全員村人だな。して如何するんだ?」


「はい注目!シー君…シード様に忠誠を誓う人!」


「助けて頂いたのです。勿論忠誠を誓わせていただきます」


「そうか。だが俺は魔族だ」


「シード様が人間を軽蔑する、嫌悪する御方でなければ、是非とも忠誠を誓いたい所存で御座います」


「俺が人を嫌うか否かを判断するのは忠誠を誓うお前だ。しかし…うん、お前は誓わなくて良い、死ね」


「!?」


「ど、どうして?あの人何も悪いことしてないよ…?」


「元勇者だから何もしてない、悪くない人を殺すのが嫌か?」


「そう言うわけじゃないよ、僕自身人体実験に賛成してる側だし、今はもう勇者じゃなくてシー君の仲間だもん。…ただどうしてそう思ったのかを知りたいの。シー君の思考を理解したい」


「そう言う事なら教えてやる。此奴の発言は、俺が人間を嫌悪したりするなら忠誠を誓わないと言っている。違うにしても、俺にはそう聞こえた」


「…あっ、そういう事か!人間を嫌ってても、自分が嫌われると分かってても忠誠を誓える人材が欲しいんだね!」


「そゆこと。さっ、殺せ」


「うん!」


一瞬で彼の首を刎ね、彼女は笑顔でこっちを見た。なので小さく頷くと、彼の発言にちょっとでも頷いていた輩を一瞬で殺害。


…勇者時代の彼女はこんなことを出来なかっただろうな。でも仲間になったあの日から、彼女は一瞬で変わった。元々狂人だったのかもしれん。


「残ったのはお前等か。……お前、魔族だな?」


そう言いながら近づき、深く被っていたフードを脱がせた。するとエルフの特徴ともいえる長い耳がすぐ目に入る。だがそのすぐ後に目に入ったのは腕や顔の火傷。ってか…ダークエルフ珍しいな。


「へ、兵士が連れてきたんです…。純血エルフは強いから使えると。…ただ醜いから触りたくないとも言ってました…」


「そうなのか?」


「……はい」


「ふぅん。…もう奴隷じゃ無いし動けるだろ?あぁ、奴隷印が残ってるのか。消してやるよ」


「…私は…もう故郷がありません。それにこの傷では…」


「ハイヒール」


聖なる力を込めて使うそれは、彼女に付与された呪いをも浄化し、そしてその醜いと呼ばれる所以である火傷を全て直した。


「えっ」


「お前の生死に興味はない。後は好きにしろ」


「な、何で…」


「さぁな、興が乗ったからか、お前が美しかったからか、俺自身にもわからん。…家族を失って辛いだろうが頑張って生きろ。それと兵士に穢されなくて良かったな」


「火傷は自分で己を燃やして付けたものです。…そうすれば醜いと呼ばれ、手を出してこないと思ったので」


「エルフはやっぱ聡明だな。…短剣と弓、どっちが好きだ?」


「エルフは弓や魔法が有名ですが、我々ダークエルフは近接戦と魔法を使う前衛です。故に短剣では無く剣を頂けると幸いです」


そう言いながら縄を抜け、俺の前に跪いた。


「ふむ、ではこれを使うと良い」


アイテムボックスから魔剣を取り出して彼女に渡す。実はこの魔剣、扱い主を狙う傾向があり、呪いの魔剣でもある。力試しも兼ねて渡したという事だ。


「おぉ、扱いやすいです!有難う御座います!」


「……こりゃびっくりだ」


「い、一瞬で手懐けちゃってるよぉ…」


「この命、必ず貴方様の為に使うことを約束します。…ですが今は…」


「どう生きるかはお前の自由だ。俺の元に来るのも、復讐を優先するのも、全て自分で考えて行動しろ。ただ…名前を俺に教えろ」


「アルスです」


「ん、覚えておこう。ではな」


「はい、失礼します」


彼女は一瞬で姿を消し、その直後にワールスがの残り全員を処刑。


「あの子、服装が布の奴隷服だったけど如何するんだろうね」


「問題無いと思うぞ。あの服は防御こそゴミだが、動きやすさに関しては凄いからな」


奴隷は働け!きびきびと!って意思を物凄く感じる服。ただ火傷跡を見たくないからか、彼女のはちょっと特別製で、肌がほとんど見えないようになってた。


俺が火傷してるかどうかを見えたのはボロボロ過ぎて腕部分が破れていたからである。


「さて、帰るか」


「は~い!…眠い?」


「いや。…まず温泉入るか。後は適当にゴロゴロ過ごそうぜ」


「おっけ~!」

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