邪神教と紅ノ影
―――翌朝
「…ふむ、なるほどな。ワールス、シャナリアに4/7は街中を歩いて囮になれと伝えてくれ」
「は~い!」
「これらはプレアデスから届いた報告書だけど…どうやって入ったんだろ…」
「俺が入って良いと許可してるからな、彼奴だけ。…プレアデス」
「此処に」
「ほらね?」
「確かに…」
「4/7は街中に精鋭を配置しろ」
「御意に」
「紅ノ影としての活動だ」
「暗殺でしたか」
「あぁ」
「えっ?邪神教があの有名な紅ノ影?」
「そうだぞ。でなきゃお前に暗殺業をやらせないだろ、多分」
「…そうかも。それで当日は如何するの?」
「騎士団が囮、プレアデス達は伏兵、俺達が増援」
「了解」
「では我々は準備に」
「おう、任せた」
「お任せを」
彼女は姿を消し、俺はまだ名前を付けてない刀を眺めながら座る。エトワールもそれを眺めながら座り、茶を嗜んだ。
「…ヴォイド、騎士団はどう?」
「問題無い。悪魔の兵とは言わんがかなり強くなった」
「そかそか、ありがとね」
「坊ちゃん、そんな事でお礼を言う必要は無いぞ」
「ううん、礼は大事だよ!」
「…そうか、なら…どういたしまして」
ニッコリしながら頷き、俺もお茶を飲む。それから戻って来たワールスを見つめた。
彼女はゆっくりと俺の隣に腰を下ろし、何も言わないまま寄り掛かってくる。
「……どうだったの?」
「問題無し!引き受けてくれたよ!」
「そか、なら安心だな」
「それで名前どうしよっか!」
「分からん…」
「ここは桜で」
「それ結構あり」
「なら覇道云々あるから覇桜で!」
「お、お前…名前つけるセンスがあるな。子供出来たら全部お前に任せるべきかもしれん」
「こ、子供!?そ、そそ、そんな話は二人きりの時にじゃない?!」
「そ、そうだよシード、それに私だって…」
「待て待て待て待て、お前達の思考展開速度には俺が付いて行けない…。別にお前達が生むとかそういう話をしてるわけじゃないぞ…?」
「「えっ」」
「子供が生まれたとき、名前どうするか迷ったら案を出してもらおうと思っただけだ」
「………はぁ…」
「………」
「…えっ、俺が悪いの?」
「坊ちゃんが悪い」
「えぇぇ…?そ、それになんかあんまり子供が居ても困るんだよなぁ。ほら、お前等が産むとしたら、一時的に抜ける事になるだろ?」
「「確かに」」
「だから困る。替えが居れば良いとかそういう話じゃないからな」
「分かってる。シードがそう言うなら私は別に望まない。欲しい訳じゃないから。愛し合えれば満足」
「そうそう!」
「ハハッ、分かってくれて何よりなんだが………愛し合うの?」
「忘れて」
「お、おう」
――――その頃、大聖堂の地下にて
「………プレアデス様、客人が」
「私に?何名」
「二名です」
「…あぁ、彼女達ね。通して」
「承知しました」
少しすると二人組が部屋の中に入って来た。部屋、と言っても拷問部屋になっているけど。
「修道院で待ってもらってても良かったんだけど…お前達ならこっちでも良いでしょ?プレイオネ、アトラス」
「久しぶり、母様」
「私達を呼ぶなんて珍しいね」
「うん、ちょっと仕事があるからね。…二人共元気に過ごせてる?」
「最近は母様が仕事をくれないから暇してるよぉ」
「うんうん。一緒に暇してる」
「そっかそっか、まぁちゃんと過ごせてるなら良かった。二人は孤児院でも私がドン引きする程に暴走してた孤児だったもんね」
「や、辞めてよその話は!」
「そうだよ!」
「フフッ、ゴメンね。…二人を売らず、暗殺者として育てた私は正解だったみたいだね?」
「「うん!」」
「貴女達が卒業する3年前に私が拾った赤ちゃん居たでしょ?」
「居たね~」
「懐かしい。色々と教えた」
「あの子を買ってくれた子が居るの。名前も付けてくれてね、エトワールって。…昼時に魔王城に居ると思うから実力を確かめてきたら?」
「誰?」
「シード様よ」
「うぇ!?シードなの!?懐かしいなぁ、私達に会ったこと覚えてるかなぁ」
「多分?何時あったんだっけ~」
「一回目は殺す為に。二回目はバーで飲んでる時に。三回目は買い物中にどっちが買うかで」
「一回目と三回目喧嘩だよね」
「「うん!」」
「駄目でしょそれ…。ま、まぁ行ってらっしゃい」
「「は~い!」」
「…フフッ、相変わらず二人コンビで動いてるんだね?ってか双子だからそうかな?」
「うん!」
「勿論!」
「やっぱ頼もしいなぁ。流石は紅ノ影の代表暗殺者」
「「でしょ~!」」
―――昼
「…え?そうなの?」
「そうよ。そっちは私の担当外だから如何にかしてね」
「お前…何だかんだ仕事してるんだな」
「貴方が言ったんでしょ?!仕事しろって!!」
「悪い、てっきりサボってるもんだと…」
「血、吸うわよ?」
「美味くないぞ」
「…今度貰うわ。それじゃ、宮廷魔導士共は任せるわよ。言っとくけどトップは普通に強い。別に女癖が悪いとかそう言うのは無いけど、明らかに殺すべきね」
「宮廷魔導士は騎士団に並ぶって思ってて良いよな?」
「勿論。ただ魔術師ではないからね、あくまでも魔法使いよ」
「分かってるさ。魔術師は魔法を極めし存在だからな。…分かった、任せてくれ」
「うん。…そうそう、一つ覚えてて欲しい事がある」
「何?」
「騎士団のメンバーは全員貴方の仲間、貴方の派閥よ。…私もね」
「…ハハッ、覚えておこう」
彼女はクスッと微笑んでから姿を消す。代わりに…短剣が二つ俺の近くの床に刺さった。躱してなければ当たってたな。
「俺は忙しいんだ。誰の手先かは知らねぇけど…失せろ」
姿を見せたのは二人の暗殺者。プレアデスの着てる暗殺装束に似てる気がするのは気のせいだろうか。その装束の上に黒いローブを纏ってるだけ感が凄い。
あの黒い装束結構カッコいいんだよねぇ。プレアデスの場合は俺のあげた専用のロングコートを上に着てるから尚更良い。
「「倒す」」
「…ちっ」
2人は片手に直刀を握って一気に接近し、息ぴったしの連携攻撃を仕掛けてくる。その連携は想像してたよりも遥かに厄介だった。
攻撃を仕掛ける隙が無く、こちらは防戦一方。このままだと恐らく押し切られて殺されかねない。しかも防戦と言っても躱してるだけ。剣を抜けてないからね。
「…いい加減にしろ!」
魔力を全身に流し、両手で二本の刀を掴んでからへし折り、彼女達が後退すると同時に踏み込み、一人の胴を蹴飛ばし、もう一人の方は風魔法で吹っ飛ばした。
「ワオ」
「これは中々…」
「…やっぱその動きはお前等だろ。紅ノ影の顔とも呼ばれる暗殺者、アトラスにプレイオネ。…違うか?あとバーで貸した金をそろそろ返せ」
「「うげっ、どうでも良い事まで覚えてる…」」
「まぁそれは後ででも良い。久しぶりだな、息災か?」
「勿論!」
「あったりまえよ!」
金髪に金の瞳がアトラスで、赤い髪に赤い瞳がプレイオネ。どっちも暗殺面に関しては最高峰と言っても過言では無いだろう。
「そういえば誕生日おめでとぉ」
「おめおめ」
「ありがと~。俺は24になったがお前ら何歳だ?」
「「20!」」
「意外と近いな。…ってか何の用だ?あの時みたいに誰かに暗殺されるように頼まれたのか?」
「エトワールを引き取ったのがシードって聞いたから!」
「驚いたよ!」
「あぁ、そうかお前等も孤児院で生活してるのか。でも彼奴だけ独房だったような…」
「母様は育てるだけ育てたら売るのを主としてるから仕方ない!」
「仕方ない!でもシードなら安心。優しくしてあげて」
「おうよ」
「それで宮廷魔導士って言ってたよね!手伝ってあげる!」
「私も~!」
「そりゃ頼もしいな!」
「……ねぇアトラス、シードの家に住めば退屈じゃなくなるかも」
「確かにそうね。シード、家に住ませて」
「え~?…仕事の出来次第かな~」
「「言ったね!」」




