狂戦士は止まらない
「――――――!!!!!」
「ブリザード」
取り敢えず足を地面と一緒に凍らせてみるも、一瞬で氷が砕けてこっちに迫ってくる。しかし複数の骸骨将軍が前に出てその巨体から繰り出される攻撃を防いでくれた。
「「お守りします」」
「悪いな」
すると複数の巨大な骨の手が出現し、狂戦士をガシッと掴んでから思いっきり天井に押し付ける!しかし…奴のパワーはそれを容易く破壊して地面に再び降り立った。
それからハルバードを手に取り、荒ぶる魔力を解放し…その波動だけで俺達を数歩後退させる!
「此奴…!」
だがエトワールの投げていた短剣はしっかりと体に刺さっていて、彼奴自身は気にしてないが、奴の血は床を濡らしていた。
それに注目しつつ、いつの間にか天井に突き刺さってるワールスの方に目を向ける。
「何やってんだ~」
「と、飛び過ぎて刺さっちゃった…」
「…何でだよ」
跳び上がってから彼女を引き抜き、軽く体をねじって思いっきり狂戦士の方にぶん投げる!
「うそぉぉぉ!!?!」
「――――!????」
「これ使って」
エトワールが直刀を投げ飛ばし、ワールスは器用にそれをキャッチ。そして…その状態から何と技を!
「て、天月!」
左手に握る直刀でいつも通り斬撃を行い、右手に持つ聖剣で音速突破の斬撃!すると狂戦士の右腕がハルバードと共に見事宙を舞い、その代価としてワールスが床に突き刺さった。
まぁ後で引っこ抜けば良いだろう。大丈夫大丈夫、多分。
「彼奴結構やるようになったな…」
「…驚きです。私も負けてられない」
そう言いながら、彼女は俺が上げた短剣を右手に握った。そして突然気配を完全に消し、姿も消す。
これが彼奴の本気か。暗殺者エトワールとしての実力なのだろう。……凄いな、マジで何処に居るか分からん。
そう思ってると…狂戦士が凄まじい咆哮と共に左腕でハルバードを掴み、こっちに突進し始めた。
「獄炎!」
「ハリケーン!」
「――――――!!」
「おぉっ!?マジか!」
獄炎とハリケーンを合体させた火災旋風が巻き起こるも、奴はそれをハルバードで切り裂いて目の前へ!
骸骨将軍の中でもデカめの連中が迎え撃とうしたその瞬間、狂戦士の首に綺麗な横線が。そして頭部がゴロンと落ちたと同時に…その巨体が倒れる!
おぉ、と感動していると…俺の真横にエトワールが降り立ち、マジマジとこちらを見つめてきた。
「…やるじゃん」
「当たり前」
偉そうにしつつも、ちょっと嬉しそうにしていた。意外と可愛い面もある、そう思ってると…ワールスが頬を膨らませながら歩いてくる。
「私の扱いが酷いんですけどぉ!」
「ゴメンゴメン。でも…あの状況で技を放てるって結構凄かったぞ」
そう言いながら彼女をぎゅっと抱きしめた。それから優しく背中を摩ってあげる。
「…ん、許す!」
「ありがとな」
「………」
「―――ちっ、役立たずが!こうなったら!」
「おぉ、財務卿。今度はどんな芸を見せてくれるんだ?」
しかし奴は俺の方など見ずに魔石を複数個取り出し、それを倒れてる狂戦士の背中に撃ち込んだ。
するとその体が黒色に変色し、変な模様が入ったかと思えば奇妙な程に痙攣を始めた。
「……人体錬成みたいなもんか」
「如何にも。これはまぁ…それの魔物バージョンだ!」
「下らんな。…一つ教えてやる、それをやると…もう知能も全部ぶっ飛ぶぞ。隷属魔法も…無意味だ」
「は?だからなん――――ヌゥ!?な、何をする!!」
腕が追加で二本増え、四本腕のやべぇのに進化。しかもさっきの四倍デカく、凡そ8mあるぞ。
そうそう取れてた頭部は起き上がった時に奴が踏み潰したが、新しく生えている。序でに財務卿は四本の腕の一つががっしりと掴んでて、今にも握り潰されそう。
「く、クソが!おい貴様等!私を助けろ!そうすれば…そうだ、王にもう狙わない様に進言してやる!」
「興味無い」
「なッ!?や、辞めろ!それ以上強く――――ッ!!!」
骨がへし折れる音が聞こえ、財務卿が気絶、というか死んだ。下半身がしっかり潰れたんだろうな。
そして狂戦士はそのままそれを食い、こっちを睨んでくる。
「ふぅむ、これは困ったな。レベル900後半まで進化するとは思わなんだ」
「―――加勢します」
「プレアデス!…やれると思うか?」
「…申し上げにくいですが、恐らく無理かと…」
「だよなぁ。…まぁやるしかないんだがな」
狂戦士戦ではレイちゃんの言ってる事を思い出すしかない。何せレイちゃんは狂戦士だけど…暴走しない狂戦士だから。
狂化状態を自らのモノにした最強なのだ!そしてどうやったら狂戦士相手にうまく立ち回れるかも把握してる、自分が狂戦士だからこそね。
俺も一応狂戦士らしく、狂化は使えるけど禁止されてる。まだ自分じゃ抑えられないからねぇ…。レイちゃんは魔王になる前に克服したとか。
「……黒戒!」
「―――――!!」
安定の雄叫びを上げつつ、いつの間にか掴んでいたハルバードで見える筈のない闇の刃を弾いた!
しかし…ちょっとハルバードが切れたのか、闇が内部に侵入して一瞬で黒く染まり、灰となって消滅。
「…ちっ、反応速度も化け物かよ」
「な、何今の技…」
「今度教えてあげるよ!…あっ、無理だ、俺が完全に習得してるわけでもないし」
「今ので?!」
「うん」
多分不完全。何か違うんだよね、何かが。
「――――――!!!!」
「戦士みたいな役割が出来る奴がこのチーム居ないのか…」
「「確かに」」
俺は何方かと言えば魔剣士みたいなもんだ。エトワールは暗殺者だし、ワールスは俺と同じ感じ。
プレアデスを入れたとしても彼女は暗殺者だ。スケスケなんて魔法使いだし。
「…攻撃を食らえば瀕死になると思え。それじゃ始めるぞ、作戦は…とにかく避けて攻撃しろ、以上!」
「「了解!」」
「……分かった」
「…無茶だと思うだろ?死ぬんじゃないか、そう思ってるだろ?」
「思う。…怖くないの?死が」
「怖いさ。クソ程怖い。死にたくない。これが本音だ」
「えっ、意外~」
「ハハッ…でも俺だって普通の人だからさ。…だから死にたくないなら下がってて良い」
「?!」
「俺の命令を絶対と思うなよ。…ワールス、お前もだ。お前等は俺の直属の兵だが、嫌なら嫌と口に出せ。…さっ、始めるぞ」
「うん!」
「…シード」
「何だ」
「……床を壊して下の階に。下の階なら…多分信徒とかが沢山居る」
「なるほどな!」




