剣神と呼ばれた魔王
「――シードシード!」
「はいはい、どうしたラスト」
温泉から出た俺達は、脱衣所から出て直ぐにあるベンチに座ってのんびりしていた。まぁ…ラストは走りまくってるが。
「私ボロスの所行くね!朝にお菓子作りするって言ってたから!」
「ん、行ってらっしゃい!こけるなよ~」
「は~い!!!」
彼女が物凄い速度で走って消えて行くのを見届けてから立ち上がり、俺も外へと出た。
「ふんふふんふふ~ん♪」
そして鼻歌を歌いながら中庭を歩く。朝日は俺を照らし、心地の良い風は俺の心を落ち着かせてくれた。
だが刹那、前方から木刀が物凄い勢いで飛んでくる!
「うおっ?!」
咄嗟に掴んだ瞬間、奥の方に一瞬だけ影が見えたので素早く刀を振るった。そしてそれは…目の前に移動してきたレイちゃんの木刀とぶつかり合う!
レイちゃんの神歩とかいう音速を越えた踏み込みも、最近漸く感覚で分かるようになってきた。使ってみたいが多分無理。
「し、神歩だね!?」
「正解♪」
「浴衣…えっ、超似合ってる」
「えへへ、そう?シードも最高に似合ってるよ!」
そう言いながら放たれる強烈な斬撃。何とか防ぐも数メートル後退りする羽目になった。
「朝練?」
「そのとーり!これから毎朝参加ね!」
「……おっけ!」
毎朝この姿が見れるならもう参加するしかないでしょ。美人と素振りできるとか最高ですか?良い匂いもするし。
「それじゃ…一緒に素振りしよっか!」
「うん!何回?100かな?」
「そうそう!」
「お~」
珍しく少なめ。訓練の時は1000とかが普通になってるからね、意味不明です。
「それ10セット!」
「………」
1000やないかい。…いや、まぁ剣神と称されたレイちゃんには容易い事だろうけども。
とある御伽噺では、レイちゃんが厄災と言われた巨龍と激戦を繰り広げる話があるんだが、実は嘘。実際は瞬殺だったそうだ。というか記憶を見せて貰ったらそうだった。
剣の腕は恐らくレイちゃんには誰も敵わない。それこそパラサイト君が行けるかどうかだろう。俺?俺は…何時かいけるかも?
いや、無理か?何せレイちゃんは日に日に強くなってるしな。復活時はあれだったが、今じゃ全盛期を遥かに上回る程に強い。
何せアザと戦えるから。どの程度かって?分かりやすく言えば神と同等。アザは邪神のトップだからね。
まぁそれを言ったらデミちゃんもテンペストも何だけどさ。
「この後に温泉行こうね!」
「マジ!?」
「え?い、嫌だった?」
「むしろ一緒に超行きたい!!!」
「…えへへ、それなら良かった!洗いっこしよーね!」
「全身!?」
「背中だけだよぉ。全身は…そうだなぁ、付き合ったらだね!」
「そ、そうだよね!」
「うん!さっ、頑張ろ~」
「お~」
―――朝食
「何か気分良いね?」
「分かる?まぁ何があったかは言わないけど」
「え~?」
「シー君シー君」
「ん?どしたワールス」
「朝練してたけど…凄かったね!」
「そう?まぁ…レイちゃんが凄いだけだよ。俺は言われた通りにやってるだけだし」
「ノンノン!シードは分かって無いなぁ。私の訓練について来れる人、シード以外に今まで居なかったんだよ?あっ、パラサイトとかは別ね」
「?」
「それだけシードが凄いって事!」
「なるほど!」
「あっ、午後はパラサイトも参加するってさ」
「お!宜しく!」
「うん、宜しくね!」
―――昼過ぎ
「戦争がしたい」
「は?シードの前で何を言ってるのさ」
「シードは私の言ってることが分かるはずだよ?生粋の狂人だから」
「うん!分かる!」
「あっ、こっち側なのか。そういえばそうだっ…あっ、ごめん」
パラちゃんの木刀が顎に直撃し、軽く吹っ飛んで地面に倒れた。
「パラちゃん…」
「…その呼び方、普段からしてくれない?」
「え~~」
「レイはレイちゃんなのにどうして私は君なの?!」
「…ごめんねパラサイト、お前にその呼び方されると吐きそうになる」
「失礼な奴ね!?」
「じゃ、じゃあ……俺の本気の一撃を何もせずに受けて無傷だったら良いよ、パラちゃんって呼ぶ!」
「言ったね~!さぁどんとこい!あっ、レイは結界よろ」
「勿論」
「レイちゃんの技を使うからな~!」
「フフッ…」
と言う事で淵渦を発動したのだが…パラサイト君は無傷でブラックホールから出てきてしまった。
「はい!私の事はパラちゃんと呼ぶように!」
「…れ、レイちゃん…俺…」
「あ~よしよし、大丈夫だよ、シードは強いからね。…ちょっと、魔力で全身強化は卑怯でしょ…」
「で、でも流石にあれ素で食らったら掠り傷を…」
「や、やっぱ…そうだよね…そう簡単に……」
「もうパラサイトは黙って!?」
「えぇ!?」
――――夕方
「ふぅ、お疲れ様、シード、パラサイト」
「ん!」
「おつおつ~」
「…よし、シードも自信を取り戻せたみたいだね?」
「まぁ…相手が悪かったからね、うん。龍は倒せてもパラちゃんは無理だわ、普通に考えたら」
「そうそう」
「ご、ごめんねシード」
「別に怒って無いし!」
「え、えぇ…?」
「あっ、そうだ。シード、良いのを見せてあげるね!」
「?」
「黒戒」
レイちゃんがそう言った刹那、遠くの方で掃除してるボロスの箒が黒く染まって崩壊した。
一瞬だけ黒い靄が見えた気がするんだが…よく分からん。
「え?」
「不可視の斬撃を飛ばすの!まぁパラサイトは見えたでしょ?」
「まぁね」
「黒い靄の事?それなら一瞬だけなら見えたけど」
「「!」」
「ただ斬撃の形には見えなかった…」
「それでも凄いよ!黒戒はね、闇の斬撃を飛ばすんだけど、対象物を少しでも切断できればそこから内部に闇が入り込んで魔力回路を破壊するの」
「ま、魔力回路って…血管みたいなもんだよね?魔力を流すのに必要な…」
「そ!だから教えたでしょ?魔力通路を作る方法や、一時的にその通路を遮断する方法を」
「…そういう事なのか。そういう魔法とかがあるんだね」
「うん!…その調子なら明日からは一段階上げても大丈夫そうだね!」
「お、おぉ!」
「おめでとシード!」
「うん!ありがとパラちゃん!それと…レイちゃんもいつもありがと!」




