眠りから覚める日は何時
――――深夜
「…ねぇシード」
「あ?何だシャナリア」
「貴方も…未練ってあるのね」
「…何言ってんだよ」
「隠さなくてもいいのよ。別に…知ってるから。13のあの日の事件ぐらい」
「………」
「老衰による死と言え、彼女は精神的ダメージを負った。そして…その状態で翌日、豪雨なのに山へ入って土砂崩れに巻き込まれる」
「…言うな」
「だけど魔族の肉体は強靭。それで死ぬ事は無かった。でも精神的に弱っていた彼女は意識を失い、そして―――ッ!?」
「喋るな…。死にたいのか」
首を強く締め、魔力を一気に解放して溜める。しかしそれで皆が起きたのか、隣の大広間からすぐこっちの部屋に入って来た。
そして状況を見ると同時にレイとラストが俺を引き離して抑え、ワールスが彼女を支える。
「ど、どうしたの?!」
「………お前等には関係ない」
拘束は緩かったので適当に解き、シャナリアを睨んでから転移を使って近くの山の山頂へと移動。
――それを見届けた一同は驚きながらもシャナリアを見つめ、そして一度呼吸が整うのを待った。
「…フロルの事を聞いたのよ。気付いてるでしょ、あれが…彼女であって彼女で無い事を」
「「………」」
「えっ、そうなの?」
「今代の魔王フロルの肉体はシードが保管してる。…あの体は魔法で構築された偽。そして彼女の意識は子供の頃、13歳の頃の意識を元に作られただけ。そしてその意識は絶対に成長しない」
「じゃあ…」
「…彼女の肉体が目覚めないのは、意識が戻らないから。彼の事だからあらゆる魔法を試しただろうけど……」
「フロルはね、意識だけじゃなくて全てを閉ざしてるの。あらゆる干渉を受けないように…殻に閉じこもってる」
「テンペスト…」
「私もシードと協力して何度も色々な魔法を試したけどどうにもならなかった。それこそ今じゃ彼女を一度殺し、禁術で蘇らす以外方法が思いつかない」
「じゃあそれを――――いや、彼がそれを許すわけ無いか…」
「うん。…口で提案した事は無いけど、恐らく拒否される。ワールスも分かってて欲しい。シードにとってフロルは…初めての親友で、永遠のライバルなの」
「………覚えておきます」
「序でに初恋はレイらしい。あっ、内緒ね。でも分かる?恋をしてるんじゃない、本当に親友だから大事にしてるの」
「…凄いですね、それって」
「えっ…私が初恋なの?今も私の事を…?」
「多分?知らないよそんなの。でも私譲らないから!」
「いや、此処はもう私から告白を…」
「駄目に決まってるでしょ!…とにかく、もう触れないであげて?大切な親友を失ったら…辛いでしょ?」
「「…分かった」」
「さっ、寝よ!」
「「うん!」」
「所でパラダイス、残念だったね!」
「パラサイトだ。そして黙れ。今のシードは和風が好きらしい。お前の様な騎士は嫌いだろ」
「フッ、負け惜しみか」
「中庭に出ろ、殺してやる」
「望むところよ」
――――山頂
「……お前は…何時意識を戻すんだ?」
隣に寝転がるフロル。しかしその体は動くことなく、虚な瞳で天を仰ぐだけ。
「俺は強くなったんだ。お前と再び戦うために、お前と強さとは何かを語る為に」
溜息をつきながらそう言い、クスッと微笑んでから近くの石を掴んだ。そして思いっきり空に向かって投げ飛ばす。
「…お前は魔王になるからきっと沢山部下を集める。だから俺は精鋭のみを集めてるんだ。…何時か告白しようと思ってる人も居るんだぜ?すっごく美人でさ…」
…フロルと付き合う?それは無い。此奴は永遠に俺のライバル。恋人とかは無いだろ、多分。
「……あの日、俺がもっとしっかり止めておけばよかった。でも…クソッ!」
戻ってくる日はあるのだろうか。…いや、きっとある。だから俺はこうして生き続けてるんだ。
「何時でも待ってるから…早く戻って来いよ、フロル。俺の師匠とかも紹介したいんだ…」
そう言いながら彼女を転移で地下室の特製ベッドに飛ばした。そしてゆっくりと立ち上がり、雲の隙間から覗く月を眺める。
雨上がりだからなのか、ちょっと独特な匂いがするが…うん、これも良い。
明日はシャナリアに謝らないとな…。事情を知ってそうとは言え、完全に知ってるわけじゃないだろうし。
「―――シード!」
「え?…ふ、フロル…どうしたんだ?」
「シードはこう言う所が好きでしょ!」
「まぁな。…どうした、悩みか?」
「ううん!会いに来ただけ!そうだ、久々にやり合う?」
「…そうだな、やろう」
そう言いながら俺は地面で体を伸ばし、彼女は飛び上がって宙で体を伸ばした。
「「……龍の息吹!」」
掌を相手の方に向けて魔力を一気に放つ技。ドラゴンブレスと呼んでも良いだろう、そのまんまだが。
ただの魔力光線と違う所はその光線の威力にある。魔力を放つとは言え、自然に漂う魔力をも使って放つから想像の五倍は強い。
「…悪いな、お前には負けないんだ。……今の…」
「うわぁ、強いな~!…やっぱ流石だね、シード!」
そのまま一気に押し切って魔力で彼女を飲み込む。それから軽く地面を蹴って跳び上がり、落ちてくる彼女をキャッチ。
「わっ、ありがと!」
「ううん、気にしないで!」
「…ね、ねぇ」
「ん?」
「今日は一緒に寝よ?昔ずっとそうだったでしょ!」
「…フッ、そうだね、一緒に寝よっか」
「うん!」
昔から戦った日は誘ってくるんだよなぁ。俺が勝った時はお願いする感じで、俺が負けたときは命令口調で。
あぁ…懐かしい。本当に懐かしい。




