88話 情報収集
88話 「情報収集」
雨璃は鎌倉夏菜と同じ学校に通わせ、鎌倉夏菜が何をしているのか観察して報告することになっていた。
「ついに嫌われちゃったよ。」
「何してるの!?」
「つきまといすぎちゃったみたいで……ハハハ。」
「はぁ……。もういい。私がいく。」
「それ完全に不審者扱いされてアウトだから。」
それから雨璃が情報をくれることは無くなったのだが、
ある程度のことは分かった。
【鎌倉夏菜】
△△小学校、5年生。
毎日柄が違うワンピースを着て、クラスでは大人しい方。最初は雨璃と話していたがしつこいため徐々に無視するように……。放課後はよく図書室で本を読むという。
特に読むのが『アリスのアリス』
ライトノベルはそれだけで、他には教科書に載っていた本だとか……。
小6では受験に専念したいらしく今まで仲の良かった友達とも離れ、図書室にも行かなくなっている。
「情報提供ありがとう、雨璃。」
「ねぇ。」
「何?」
「誰かいる。あそこに、」
だいぶ片付けたもののまだ散らかっているこの荒れた神社に髪の長いヨレヨレの少女がいた。
「私は用事あるからじゃあね。」
「あっうん。」
雨璃は少女の横をすり抜け出ていった。
少女は荒んだ目でこちらを見ている。
「何をしに来たの?」
私が話しかけた途端、少女は素早く近づいてナイフを向けた。
「ナンノマネカナ?」
汗が止まらない。
人間になれたことは嬉しいが、死ぬのは怖い。
「お前のせいだ。お前のせいで母は行方不明、父は私を見捨てて行方不明。残された家族はこれから一体何をやって行けばいいんだよ!!」
今日は快晴。
光で反射するナイフより
彼女の瞳はギラリとしていた。




