89話「東雲(空流)家の事情」
89話 「東雲(空流)家の事情」
ナイフをジリジリ近づけると共に首を手で締め付けてくる。
変な汗が出ながらも私は必死で頭の中のデータから彼女を調べる……。
「あなたは空流京子……!」
さらに首を絞められ声も出せないほどだった。
やめっ……て……。
しばらくするとナイフをしまい手を離した。
私は凄い勢いで尻餅をつく。
「私の名前を知っているのは当然よね。だってあなたはデータなんだもの。」
「なんで、知ってるの?まさかこの神社に来たことがあるとか?でもそんなデータは存在しない……。一体あなたは何者?」
少女の長い黒髪が風で揺れる。
その髪の間から彼女の不気味な笑顔が覗いた。
「何も知らないのあなた?じゃあ教えてあげる。あなた、栗山桃を作ったのは……。」
「私の母、東雲 真理亜」
「は?」
驚きよりも先に誰だそれという言葉が心の中にあった。
そういえば私って神社にいる前の記憶が無いんだよな……。分かるはずない。
「私は母からお前のことはすべて聞いていたから知っていたが、まさか本人が無知だったとは。」
「無知?何も知らされていなかったのよこっちは!」
「単に神社側が余分な 記憶を消しただけでちゃんと全部知っていたのさ。」
「神社の人め……。」
「まぁ知っていたらお前が人間になる事も無かった。」
「?」
「『栗山桃が人間になると時間軸が歪み、時間軸管理人ができ、たくさんの能力者が誕生する。』だそうだ。ちなみに時間軸管理人になった母はいつの間にかいなくなってしまい、娘4人の中で私を選んだ父は後に私を見捨てて行方不明になったと。父の苗字が空流だから私は空流京子なんだが、妹達は東雲なんだ。この地域では結構有名で親族も多くて、妹達はなんとか暮らしていけてるんだけど私は行く宛がなくて……。だから死ぬ前にお前を殺しに来たんだ。」
「そんなこと言われても……。」
私のせいじゃないとは言い難い。でも結局は私のやったことで……。
「何か考えてるなら無駄だよ。もう取り返しがつかないから。」
「ならそれでも構わない。」
「え?」
「空乃家って所に行きな。そこならあんたと同じ年の子もいるし、居候くらい大丈夫だから。」
「はぁ!?」
私のデータでは空乃舞夜、その子の家に行けば助かるとなっているから……地図だって渡せば……。
「ちょっと、何それ。前回と反応が違う。これって……。」
何を動揺しているんだ?
前回?
前回と反応が違うって何?
雨璃のやり直すのと関係があるのかな?
「と、とりあえず地図あげるから行きな。」
「ありがとう……」
少女は走って帰っていった。
私はまだ散らかっている廃棄物の上に寝そべる。
「そこで見てるんなら出てきなよ、鎌倉夏菜。」
これから私と夏菜の戦いが始まる。




