ずっと待っていた”楽しみ”
「う~ん。」
黄色に光るこの世のものとは思えないような見た目をした雲の上から世界を見つめている『音の神』は悩んでいた。
あいつは無理そうだな。適正率は高いが、力が足りない。
「おっ!あっちはどうだ…」
だめだな。才能も力もとても高いが、器が大きくない
『神』がそう考えていると、一人の少年が目に入る
「!」
桜が咲き始める3月下旬の頃、明日から高校生活が始まる前日の朝、白とオレンジ色のパーカーに白いズボンを着た少しくせっ毛なオレンジ髪の青年がオレンジ色に星のついたヘッドフォンで音楽を聴ききながら考えていた。
「高校生活を楽しむためにはどうするべきだろうか…」
特に変わった悩みじゃない普通の悩みだが、僕にとってはとても大事だった。中学三年間楽しくなかったと言えば嘘になる。しかし、何かが物足りなかった。贅沢といえばそうかもしれないが、人生一度きりなのだから、やはり楽しめるだけ楽しみたい。高校3年間を楽しむため、その物足りないものを見つけようと思っていたのだが、春休み中いくら考えても答えは出なかった。勉強ができないわけではない。音楽や美術だって、苦手ではないし好きだった。運動は苦手だったが、平均的には出来ていた。
いくら考えても仕方がないとその場では諦め、自室を出て行った。
僕は、音楽が大好だったので、その日はカラオケに行き、自室で曲を作り、一日を終えた。
その日の夜、僕はベランダに出て考えていた。「明日から高校生活が始まる。悪く言えば、物足りないものがまだ見つかっていないのに、もう始まってしまう」と。
その日は夜空が綺麗きれいだったので、気休め程度にお願いをした。
「神様…本当にいるのならどうか僕に最高の楽しみか、楽しめるような”力”をお与え下さい…!」
そう言って僕は部屋に戻り、電気を消して寝た。部屋に戻るとき、一瞬ヘッドフォンが光ったきがしたが気のせいだろう。
「………き………ろ………起……きろ………起きろ!」
「ん~?」
誰かに呼ばれて起きると僕は不思議な空間にいた。地面も周りも黄色く光り、所々で星のような点々もある。
起き上がると目の前には、青い低めのシルクハットのつばに小さなトランペットの飾りが乗り、音楽記号がついたような白いシャツに、同じく音楽記号がついたような黒いズボン、そしてシャツの上に青いポンチョマントを着てほかにもいくつかの装飾品を付けた少々派手な見た目の若そうな男が空中に浮き、僕を見ながら笑みを浮かべていた。
「っ!?……いや…?」
さすがに少し驚いたが、冷静に考え僕はすぐに落ち着いた。
「これは夢だな、寝る前に願い事をしたからそれに関する夢を見ているんだろう?」
さぁ、おそらくこれで目の前にいるこいつが返事をして夢が終わるというオチだろう。夢なら自分の思い通りになるはずだと考え返事を待っていた。しかし。
「残念ながら夢じゃぁないんだなこれが。別に信じなくたっていいけどね。」
「初めましてー”紡音 奏”くん。俺は音の神”レオ・リスト・ヴァン・バロック”だ。まぁ気軽に”レオ”とでも呼んでくれ。」
…まぁいいだろう。夢の人物なのだから名前を知っているのは普通だし、こいつ…レオとやらが言うように信じないだけだ。
「それで俺が来た目的だが、」
神は一瞬真剣な顔になり改まってそう言うと
「楽しみが欲しいんだろ?俺ならそれを叶えられる。条件があるけどな」
今度は笑顔になり僕にそう問いかけてきた。僕自身も夢なら夢で楽しもうと振り切って答えた。
「それで?内容は?」
「興味を示してくれてなにより!それじゃぁ説明しよう。」
「まず君ら人間にはスキルと呼ばれる力が眠っている。恐らく一週間経った頃位からどんどん発現していくだろう。しかし!その発現の時期の前に君はスキルを使えるようになる。覚悟があるならだけどな。」
「覚悟?」
「あぁ、君は僕の力、つまり”神の力”を使えるようになる。つまり、それ相応の使命を背負う必要がある。具体的に言うと、俺たち”神”は敵対してるやつらがいてな、それが”魔神”と呼ばれる者たちだ。俺ら神と同等の力を持ちその力を邪なことに使うやつらだ。」
「君が俺の力を手に入れると恐らく魔神たちに狙われる。つまり命を落とすリスクがある。その上でこの力を手にしたいのか、手にする覚悟があるのかを今日は確かめに来たと言うわけだ。」
「さぁ、君はどうする?このまま力を手に入れずいつも通りの日常を暮らすことももちろんできる。」
僕は考えるまでもなく答えは一択しかなかった。
「フッフフ…その話、ずいぶんと面白そうじゃないか!日常になにかが物足りない思っていたんだ!もちろん!その力有難く貰わせてもらおうじゃないか!」
そう言うとレオとやらはより笑顔になり
「よし!いい返事だ!ではこの時をもって『種族:人間』『名前:紡音 奏』に我が『音の神』の力を分け与えよう!神と適応体の完全契約!」
レオがそう言うと目の前が激しい光で包まれ、僕は目を覚ましていた。
「中々悪くない夢だったな…」
すると愛用しているオレンジ色のヘッドフォンが光り。
「よっ!これからよろしくな!呼び方は…”奏”でいいか?」
「うわぁぁぁ!お前は、夢の中に出てきた奴!確か…レオだったか?呼び方なんて何でもいいけど…僕はまだ寝ぼけてるのか?」
「だーかーら。夢じゃないんだって、お前のヘッドフォンを依り代として現界してるんだよ。」
…今、僕の目の前で理解が追い付かかない事象が起きているが、一つだけ分かったことがある…それは、楽しみが確実にできたということだ!




