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現場介入は、だいたい予定どおりにいかない

「いたたた……」


町の北外れの茂みで、えんちゃんは小さくうめいた。

転移直後にぬかるみへ片足を突っ込んだせいで、靴の中がひどいことになっている。


「何で現場ってこうなんだろ……」


会社ではモニター越しだった世界が、今は匂いも風も温度もある。

想像以上に現実だった。


遠くに見えるのは、用水路脇を見回る町の警備。

近くには、先ほどの群れの残滓として残った魔力の筋。


「これだな……」


えんちゃんは荷袋から、緊急弱体化スタンプ――見た目だけなら木製の判子みたいなもの――を取り出した。

異常に濃くなった魔力だまりの地面へ、ぺたりと押す。


ぽん。


拍子抜けするほど軽い音がした。


すると、地面に広がっていた黒っぽい揺らぎが、しゅるしゅると縮んでいく。


「よし、効いた」


その瞬間。


背後の藪ががさっと鳴った。


えんちゃんは凍りついた。

振り返ると、そこには籠を抱えた小さな子どもがいた。町の農家の娘らしい。


「おじさん、何してるの?」


「おじさんじゃないよ!?」


素で返してしまった。まずい。


子どもはきょとんとしている。

えんちゃんは全力で頭を回す。


「え、ええと……地面の、点検?」


「はんこで?」


「そう、最近はこういう……便利な点検器具が……」


「へえー」


信じたのか、信じてないのか微妙な顔だ。

だがその時、別の方向から人の足音が近づいてきた。


やばい。

えんちゃんは反射で、旅商人っぽい笑顔を作った。


現場介入デビュー一日目。

すでにだいぶ危うかった。

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