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初心者女子  作者: nim
モデル女子編
53/61

第五十三話  最終日の観覧車

綱島園のペットボトルのお茶を見ながら綱島園がなぜボクに繋がったのか必死に考えるボク


綱島・・綱島・・綱島・・・

なんか・・どっかで聞いたような・・

ファッションブランドメーカーなら覚えたんだが・・

もしや・・・

お茶を作る会社がファッション業界に殴り込みか!?

いや・・

お茶メーカーはあくまでお茶メーカー・・

お茶とファッションとはどうやっても繋がらんな・・

だが!

お茶であろうとファッションであろうと極めるのがこのボクなのだ!

ふははははっ!!!

何でも来るがいい!!お茶のきぐるみでもヤカンのきぐるみでも着こなしてやろうぞ!!


修学旅行最終日、おしゃれな港街にある観覧車から、そびえ立つ巨大なビルとお茶のペットボトルを重ねてニヤッと悩みのほくそ笑みをお披露目してやるボク

そのままお茶をシェイクしてクイッと一気に飲み干してやって言ってやる


「振ると濁りが混ざって美味い!ドンとこい!!綱島園め!!!」


急に大声を出してゴンドラ内に響き渡ったボクの声

ビクッと隣に座るリキと向かいに座る紗良と智秋が身体を震わせた


「急におっきな声出さないでよ!ゴンドラが壊れるでしょ!アホ千秋!」


怯え顔の紗良、フルフルとさり気なく隣の智秋の手を握っているのをボクは確認してやった


ほう?あの紗良に弱点が・・

大声ごときでこのゴンドラが壊れるわけがなかろうに・・

鬼神と言ってもやはり女子よのぅ・・

さり気なく手を握りおって・・

か弱い女子アピールかね?

・・・・・・・

あれっ・・?

かねって誰か言ってたような・・・

・・・・!!!

あ・・あいつだ・・軽自動車に乗ってそそくさと行っちまったやり逃げおやじ・・

確か名前は・・・


その瞬間、脳内でお茶とおやじが繋がって思わず声を荒げて言ってしまうボク


「やり逃げの・・げ・・源八朗(げんぱちろう)!!!!」


目を見開いてワナワナと両手を震わせるボク

またもや大声でビビリ智秋に抱きついている紗良

フルフルと震えながら恐い顔をボクに向けて話しだす


「あんたうるさい!!仕返しのつもり!?許さん!!家帰ったら覚えてろよ!!ただじゃ済まさねぇからな!!」


それを聞いて我に返ったボクはピッと指を紗良に向けて言ってやった


「源八朗だよ!綱島園と源八朗!名前が綱島だった!ボク天才だね!名推理だね!」


そう言って座りながら器用にゴンドラ内で紗良を尻目に勝利のダンスをお披露目してやるボク

グラグラとゴンドラが揺れて慌てふためく紗良と男子二人、暫くすると登頂部付近で観覧車が止まりアナウンスが流れ出す


【強風の為一時的に停止しております、暫くお待ち下さい】


それを聞いてか聞かぬか、バイブレーションの半ギレ紗良がボクに怒り出す


「何してくれてんのよ!!アホ!ドアホ!!止まっちゃったじゃない!!いや〜!!!恐いよ〜!!ひ〜ん・・!!」


キレ顔がみるみる泣き顔になって智秋の肩に顔を埋める紗良、それを見て鬼神とったり!!と思うのと同時に高所恐怖症には辛いなと憐れむボク

仕方がないので風景でも見ようと窓に手を付けたところでボクはあるものに目が止まってしまった


なぜこんなところに蛾(が)が・・

しかもなかなかにデカいではないか・・

ボク達側にとまってやがる・・

ボク・・虫だけは・・駄目なんだよね・・

刺激しないうちに離れよう・・


急激にテンションダウンしたボク、冷汗が頬を伝うが取り繕って何事もなかったかのようにリキの方へと詰めて座り直すボク

それに否が応でも気付いたリキがうつむくボクを覗き込んで聞いてきた


「どうした?さっきまで元気だったのに、腹でも冷えたか?」


覗き込むリキにボクは指を口に当てて静かに言ってやる


「し〜・・!お静かにだよ・・!奴が気付く・・黙って・・!」


そう言って覗き込むリキを制してやったボク

その刹那!

ボクを覗き込むリキとの間に茶色い先程の大きめの蛾がヒラヒラと視界を割って飛んでボクをかすめていった

気が動転して無意識に身体をひねるボク、ガンッとおデコに衝撃が走ったと同時にボクの唇に初めての感覚が伝わった


あれ・・?

めちゃめちゃ目の前にリキの顔が・・

唇が・・生暖かいだ・・と・・?

これ・・は・・

小説に・・あった・・アクシデント・・キッス・・というやつでは・・

んっ・・

ボク・・元男子なのに・・

でも・・恥ずかしくない・・

なんか・・ちょっと気持ちいいかも・・

ファーストキッスなのに・・

甘酸っぱくない・・

これは・・リキがさっき食べてた唐揚げの味・・


ファーストキッスの妄想と現実のギャップに新たな世界を知ったボクはとっさに少し離れてペロッと唐揚げ味の残り味を堪能してやるとニヤッとリキの目の前で妖しくほくそ笑んでやる


それを間近で見た真っ赤な顔のリキが慌てふためきボクに話しだす


「すまん!!俺が近かったせいで!!その・・!あれだ・・!気持ち良かった!」


慌て顔のリキが何故か可愛く見えて、蛾もそっちのけでボクはリキに言ってやった


「唐揚げ味だった・・リキ君は唐揚げ味・・美味しかった・・よ?次は何味かな?」


ベロを小さく出してウインクしてやるボク

ボクの言葉に沸騰するリキ、それを見計らったかのようにさっきの蛾がボクの目の前を横切っていく


「ひゃあぁぁあ!!!!」


大きな悲鳴と共にそのまま椅子から転げ落ち、涙目で紗良の脚に思い切り捕まるボク

それに驚いた紗良がとっさに身体をひねると何かにぶつかってボクのいるゴンドラの床に倒れ込み、ボクに抱きついてフルフルと震えながら悲鳴をあげた


「いたぁ〜い!!!!怖いよぅ!!怖いよぅ!!早く降ろしてよぅ!!」


ギュッとフルパワーでボクを絞め上げる紗良、蛾の攻撃も頭から吹っ飛び智秋に助けを求めようと視線を向けたボクだったが、そこには何故か白目をむいて鼻血を垂らす智秋の姿


紗良の痛恨の頭の一撃を・・食らったのか・・?

これは・・

修羅場ってやつなのでは・・


真っ赤に沸騰したリキに、蛾にガクブルなボク、高所恐怖症の紗良に、仕留められて流血の智秋・・

地獄絵図さながらのこの状態のまま、ボク達は観覧車を降りるまで悲鳴をあげ続けるのであった


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