第三十六話 死神と女神
ボクは絶体絶命のピンチに追い込まれているが、何か手立てがないか必死に脳内で秘策を考えた
すると1つの名案がうかんでくる
そう・・男子は屈強だがある一点を叩けばどんな男子も奈落に落ちる・・
ふん・・地獄の苦しみを味あわせてやる!
食らえ!ゴールデンボールクラッシャー!!
脳内で激しく決めセリフを叫んだところでボクはベンチからスッと立ち上がり、挙動不審男のゴールデンボールに向け思いっきりスラッとしたキレイな右脚を振り抜いてやった
仕留めた!!
とボクが思いかけたところで、ボクの右脚が挙動不審男に掴まれて止められてしまった
ならば!とボクはもう一つの技を繰り出してやる
伝家の宝刀・・女子豪速平手切り!!
と腕を振りかぶったところでボクの腕はまた挙動不審男に掴まれて、身体ごと持っていかれてしまった
ボクは焦って視線を挙動不審男に向けると先程とは違うスケベそうな顔をボクに近づけてきた
「威勢がいいねーちゃんだな!そんなに玉が打ちたいなら一試合付き合ってくれるよな?まぁ俺が変わりに朝まで打ちまくってやるけどな?」
その言葉に怖くなってくるボク、自然と身体が震えてきたが我慢して挙動不審男に言い返してやるボク
「汚い手で触らないで!男子のくせに女子イジメて楽しいの?ホント身体ばっかデカくて頭は空っぽで幼稚なんだね!」
ボクの一言に表情が厳つくなる挙動不審男、ボクを見ながら喋りだす
「なんとでも言え、もう離さねぇからな?これからこの汚い手でお前も汚してやるよ?楽しみだろ?」
挙動不審男の言葉に震えが酷くなってくるボク、さっきまで出ていた声も出づらくなってしまった
仲間の男女も挙動不審男に呆れているのか止めようとしているが挙動不審男は興奮して言うことを聞かない
それを見てボクは震えながら落ち込んだ
結局ボクはまだ女子には完全になれてなかったんだ・・
こんな挙動不審男すら追い返せないなんて・・
リキ・・ごめんね・・ボク汚されちゃうかも・・
そう思った瞬間、ボクは無意識に震える声を発してしまう
「だ・・だめ・・いや・・たすけ・・」
その瞬間、挙動不審男の腕にか細い腕が伸びて掴むと突然クルッと挙動不審男が空中に舞い上がり地面に叩きつけられた
そして聞き覚えのある声で話しだす
「おい・・ウチのアネゴに何してくれてんだ?てめぇのタマ潰してやろうか?」
見覚えのある赤みがかったツインテール、今日見たタレ目がちな大きな瞳は怒りで吊り上がり、ニパッとした表情は欠片もない
だがその表情は美しく背丈こそボクより低いがその姿はヒーローそのもので月明かりが彼女を大きく魅せた
その姿を見て今まで何も言わなかった男女の女子が口を開く
「アイツ知ってる・・県内最強のレディース、死神の結月だ・・あの赤い髪は戦いで舞うと血を吸う鎌に見えるとか・・奴を見たものはその色香に惑わされ気付けば魂を抜かれてしまうと・・ニコニコしながら相手を瞬殺する死神・・」
それを聞いた結月はニッと怪しい微笑みを浮かべると男女に近づいて話しだす
「よく知ってるねえ?あんたらもアイツの仲間だよな?どうする?アイツみたいに半殺しにされるかアイツの玉を粉々に粉砕してやるところをみてから半殺しにされるか・・選ばせてやるよ?」
それを聞いて男女もフルフルと震えだしている
呆気に取られてたボクもいつの間にか平常心に戻って結月の放った言葉に危うさを感じてしまう
選ぶって・・どっちとっても地獄じゃん
ボール粉砕はまずいよ・・
完全に犯罪の臭いがする・・
でも公の場で半殺しも犯罪だよ・・
駄目だ・・ボクは結月にそんなことはさせたくない!
自分のやってた事は棚に上げ、そう脳内で考えたボクはとっさに結月に叫ぶ
「ゆず!そんなこと絶対だめだからね!?ゆずがレディースだとしてもボクとゆずは親友でしょ!?ペアリングも一緒につけたじゃない!?いけないことしたらボク泣くからね!?」
それを聞いた結月はボクの方に顔を向けるとボクに聞き返してくる
「アネゴ・・こいつら許すんですか?アネゴのことを酷い事しようとしてた輩ですよ?いくらアネゴが大人っぽいといっても高校生に手を出すよな底辺のゴミですよ?」
その言葉にフルフルとした男女は、えっ?っと言う表情をしている
どうやら成人だと思ってたらしい
ボクはそれをスルーして結月に言った
「許すもなにもまだボク何もされてないし、最初に手を出したのはボクだから!ねっ?だから大丈夫!ゆずは手を出さなくていいから!」
ボクの一言に結月は少し考えていたが、暫くして大きく深呼吸すると表情がいつもの表情に戻っていった
結月はチラッと男女を見ると喋りだす
「良かったですね君たち!女神のちーちゃんが今日の出来事は水に流してくれるって!なんて心が広くて大人なちーちゃん!結月も見習います!」
そう言って結月がボクの隣まで来るとボクの腕にへばりついて男女に向けてまた一言話しだす
「ちーちゃんは凄い方なんですよ?結月よりもずっとずっと凄い人!近い将来絶対世界を掌握する人なんです!わかります?ここでの出来事、君たちは必ず後悔する時が来ますから!ねっ?akiさん?」
ちょっと言い過ぎな結月に苦笑いのボク、少しキャップのツバを上げて結月をジトッと見てやった
そのボクの顔が少し見えたのか男女の女子が反応した
「akiさん・・?えっ?あのakiさんじゃん!?うそっ!?どうしよう!?私ファンなのに・・あの!ごめんなさい!!私達知らなくて!!本当にごめんなさい!!」
突然土下座をして謝りだす片割れ女子、ボクも突然のことで驚いて思わず、はえっ?と変な声が出てしまった
謝る片割れ女子を不思議に思ったのか片割れ男子が状況についていけず話しだす
「えっ?なになに?akiって誰?凄い人?ヤバいの?」
その一言に片割れ女子が起き上がり、鬼の形相で片割れ男子を睨みつけ喰いかかる
「あんたうるさい!この人は私達なんかが気軽に連れ回していい相手じゃないって言ってるの!いいから土下座して!私と一緒に土下座してよ!」
わけも分からず無理やり土下座させられる片割れ男子、片割れ女子も土下座しようとしたところでボクは声をかけることにする
「いいです!そこまでしなくて!キミ達はその男の仲間でもボクを助けようとしてくれたし!ホントに何もされてないから!それとキミはボクの事知っててくれてるんですね?ボクのファンはみんな笑顔が素敵な人達ばかりだってボクは思ってますから!だから謝らないでください!」
少し慌ててしまったがやさしく微笑んでやるボク、それを見た片割れ女子の瞳に涙が浮かんできた
ヤバい・・なんか知らんがボク知らない女子泣かせちまった・・
ボクもそうだが如何せん女子という生き物は涙腺が脆すぎる・・
何かに付けてポロポロと・・
嬉しくてポロポロ、怒ってポロポロ、感動してポロポロ、同調してポロポロ・・
きりがない・・
そんな事を脳内で考えたせいなのか、ボクの瞳もなんだが勝手に潤い始めてポロポロと涙がこぼれてしまった
それを見てた片割れ女子も更にもらい泣きしてボクに話してくる
「akiさん・・優し過ぎです・・私達酷いことしたのに・・本当にすみませんでした・・」
そう言うと片割れ女子は立ち上がり、片割れ男子と落ちている挙動不審男を起こし、ボクに一礼してその場を去っていく
ボクはそれを見て片割れ女子に声をかける
「あの・・ボク怒ってないですから・・また笑顔で応援してくれたら嬉しいです!」
その一言に片割れ女子は驚いた表情をしたがニコッと笑顔に切り替え、また一礼して去って行くのであった




