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12前 情報屋

 レベルが15になった頃、魔石を売りに組合に顔を出すと、雄志を見つけたアンナがやって来た。


 「ユウシさん。こんにちわ」


 「どうも」


 アンナに奥の応接室に案内された。

 飲み物も出て来た。


 (・・・何だろう)


 アンナは雄志の対面に座ると、話を切り出した。


 「魚が獲れなくなっている話はご存知ですよね」


 「はい。初めてここへ来た日に、聞いた記憶があります。その後も宿屋の食堂で話題になっていました」


 「その原因が分かりました。幽霊船が沖に現れているそうです」


 「幽霊船?」


 雄志は驚いて聞き返した。


 「はい。幽霊船は難破した船が海の魔物に乗っ取られて、乗員共々魔物となり海を放浪している船のことです。これが現れると、その海域ではほとんど魚が獲れなくなります」


 「なるほど」


 「何度かそれらしき姿が目撃された噂はありましたが、先日、多くの漁師が目撃したそうで、組合に調査依頼がありました」


 (幽霊船か・・・不気味だなあ。やり込み要素にあったような気がするけれど、確か達成条件が面倒で、僕はパスしていたから全く分からないや)


 「幽霊船調査は危険ですので、フォーダーの組合員の中でもDランクとEランクの精鋭で組まれた一団で調査する予定です。ユウシさんも選抜されましたのでお願いします」


 冒険者組合からの直接の依頼は断れない。

 雄志は頷いた。


 「出発は明後日です。よろしくお願いします」




 話が終わると、雄志は魔石を売って組合を出た。

 当初の予定では道具屋に寄ってから、このところ定宿にしている上級宿《幸運の碇亭》に帰ろうと思っていた。

 上級宿は何と言っても個室に専用の風呂が付いていて、一度泊まったらやめられない。この町にいる間は、お金もあるし贅沢しようと思っていた。


 この町では盗賊団を退治したことで有名人である。歩いていてもあちこちから声を掛けられる。逆に人相の悪い見るからに悪党そうな男は、雄志を見ると小さくなって逃げ出して行った。


 雄志は路地裏に入り裏通りをどんどん進んで行く、道具屋に行く予定を辞めて行く場所を変えたのである。

 人影はほとんど無くて治安の良い場所とは言えないが、冒険者に喧嘩を売って来る馬鹿はまずいないし、相手が雄志なら尚更である。


 路地の奥まった場所にある、薄汚れた建物のドアを叩いた。

 しばらく待つと小窓が開いて、顔を確認するとドアが開いた。中には背の低い老婆が立っていた。襤褸ぼろ切れのような布を羽織っている。


 老婆は無言で奥に向かって歩き始め、雄志も無言で後に付いて行った。

 一番奥の部屋の前で老婆は止まり、ドアを開け、雄志が入るとドアを閉めた。部屋は奥行き三メートル。巾二メートルほどの長細い造りで、壁は土壁で窓は無くて蝋燭ロウソクが一本立っていた。

 正面に机と椅子があり、机の向こうには椅子に座った三十代の痩せた男がこちらを見上げていた。


 男は笑みを浮かべて片手を前に出して椅子を勧めた。


 「いや、このままで良いよ。お宅の事だから耳に入ってると思うんだけれど、明後日、冒険者組合の依頼で幽霊船を調査することになったんだ。幽霊船の情報が欲しい」


 言って机の上に金貨五枚を置いた(高っ)。




 ・・・男はドーソンと言う名の情報屋だった。

 最初はドーソンから接触してきたが、その後は便利なのであれこれ情報を聞きに来ていた。


 情報屋は各地の大きな町には必ずと言って良いくらい店を出している。たいていは路地裏の目立たない場所にあって、雄志と言えども全ての情報屋の店の場所を知っている訳では無い。


 「相変わらず旦那は気前が良いや。俺たちは情報屋の組織に属しているんですがね。客は自分の目で探してくるんでさ・・・変な客を連れて来ると自分で自分の首を絞めることになるんでね」


 十七歳なのに旦那と呼ばれるのもどうかと思うが、雄志は文句を付けなかった。ドーソンは優秀な情報屋で、どこどこの家の猫に子供が何匹生まれたなどの話まで知っている。


 「幽霊船は世界バンガニアに何隻も彷徨さまよっていると言われていましてね。フォーダーの沖に現れた幽霊船は、二十年ほど前に初めて確認された船で、船名はモーマルト。動く骸骨スケルトンタコや貝が変化した魔物が多いらしいです。旦那の雷系の魔法が有効と思いますよ」


 「へえ。僕のことも知ってるんだ」


 「勿論です。旦那のことは情報屋の世界でも有名です。二ヶ月ほど前にファースの町に現れてからは、だいたい分かってるんですが、その前が分からねえ。こんなことは俺がこの稼業に付いてから初めてです」


 「僕のことはもう良いよ。他に幽霊船の情報は無いの」


 「幽霊船は焼き払いでもしない限り撃退するのは不可能ですね。大抵、調査団が乗り込んで、中の魔物を何体か討伐すると、嫌がって居なくなると言うのが撃退するパターンになってます」


 「焼き払えば倒せるの?」


 ドーソンは両手を上げて天を仰いだ。


 「旦那も火魔法を使えるそうですが、幽霊船は船内まで濡れてる船ですぜ。まあ、火炎流五・六発撃てる魔法に特化した冒険者でもいなければ無理ですよ・・・旦那も火炎流を三発使ったって聞いてますが、それじゃあちょっと無理ですね」


 (良く調べてるなあ・・・今の僕なら魔力満タンで八発撃てるけれどね)


「・・・もう一つ、とっておきの情報があります。幽霊船モーマルトの船長室には《魔法の地図》があると言われています。歩いた場所は全て自動で地図に書かれて行くそうで、ダンジョンや塔に入ると地図が切り替わって、その場所の内部の見取り図に変わるそうです」


 (へー。めっちゃ便利だな。出来たらそれが欲しいなあ)


 「分かった。ありがとう」


 雄志は礼を言って部屋を出た。

 出て行く時は案内の老婆はいない。出口のドアは中からのみ開くように出来ている。

 今日の情報は有益だった。知っているのと知らないでは大きな違いがある・・・できるだけ《魔法の地図》を探して見よう。




 《現在の雄志のステータス》

 名前 ユウシ オオヤマ

 レベル15

 年齢 17歳

 HP 82/82

 MP 52/52

 攻撃 75(会心判定有り)

 防御 65

 速さ 48

 魔力 70 (風 火 雷 補助)

 状態 通常

 職業 冒険者 Dランク

 モード E

 あと 1028


 【覚えた魔法】

 風系 カッター MP4

    竜巻   MP8

 火系 火球   MP4

    火炎流  MP6

 雷系 稲妻   MP4

 補助 ライト  MP2

    マーク  MP3

    トーハ  MP5


 *人類滅亡まで、あと1028日

12話は少し長すぎたので、前後として二つの話に変更しました。

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