愛するものと一緒にて他(人)のことを考える(時)1
まさか、胎児で転生するとは・・・。
僕はいま、肉眼で見ることができたのならば驚くべき美貌の金髪美女の腹のなかにいるらしい。
あの形容できない激痛の果てにいたったのが、この幼き人間以前の肉塊に宿ったわけだ。
水の中に浮かびながら、僕は沈思黙考した。
まぁ、しゃべることは物理的にも出来なかったが。
普通ならばこのまま外界に出るのを健康的に待ち、その後の成長を得て行動するのが一般的と思われたが、外界の様相はそうもいきそうになさそうだ。
水と肉と骨を経て伝わってくる情報を整理すると、この女が属する国家は滅亡の直前であり、あと数日でこの場所も陥落し、支配的家族の一員であるこの女性は自害を強制される、らしい。
そうなれば、僕は初めての転生で何をなすこともなく消え去るわけだが、最悪の結果とは言い難いけれども、やはり、さけたい。
それにはもっと情報が必要だった。
幼生体の状態でも思考には、ここまで考えられることを前提にするなら、問題はなさそうだ。なら、もしかしたら、前世のネットワークへと接続が可能かもしれない。なぜそう考えるかといえば、レイの説明を思い出したからだ。
<原始人たちは時間が因果関係を規定していると妄想していたようだけれども、現実は違う。時間もまた、単なる地形に過ぎない。よって、あたしの手にかかれば当然、整地可能なわけだ>
だとすれば、ネットワークへの接続の可能性はあるはずだ。問題があるとすれば、僕の今の肉体が有する霊子量だが?
とにかく時間がない。
僕はこの数千グラムの肉体に命令する。