No. 89 スピカのお姉さん
「お久しぶりです。一部の人達は初めまして、ですけどね」
しばらくして、大きな屋敷、というかラウトのフォルティシモ家に着いたのだが、中から出迎えて来た女性、スピカのお姉さんに押され気味になった。
「初めましての方々。私は、ルセフォネ・デルタ・フォルティシモです。フォルティシモ家の長女、つまりはスピカの姉という立場になりますね」
「えっと、オレはーー」
「呼ぶ時はお好きなように呼んでくださいね」
「••••••オレはーー」
「貴方がシュウヤさんですね。それと、リオンさんに、アインスさんに、マフユさん、ツバキさん。全員、スピカちゃんの手紙に書いてありましたよ」
「••••••」
口を挟むことが出来ない。
おっとりとして、大人しそうだと思ったのだが••••••。
全然そんなことはなかった。
いや、確かにおっとりとはしているが、ゆったりとした口調で、妙な威圧感を出しているので、口を挟めない。
怖くはない。
怖くはないのだが、ちょっと苦手なタイプかもしれない。
「あー、シュウヤ君達。すまないね。ルセフォネは、あまり人の話を聞かないんだ」
マイクさんが申し訳なさそうな顔をしている。
「あ、いえ、別に気にしてませんから」
「それでも、こういう時は、謝るものさ」
どうやらそういうものらしい。
「ルセフォネちゃん。人の話は聞きなさいといつも言っているでしょう?そもそも、相手の言葉に被せて話すのはマナーがなってませんよ?」
「申し訳ありませんでした、お母様、みなさん」
アストレアさんに言われ、ルセフォネさんは普通に謝った。
人の話は聞かないようだが、しっかりとはしている、というのがオレの見立てである。
「うーん、お姉ちゃんは相変わらずだね」
「••••••全く変わらない」
「そういうスピカちゃんとティアちゃんも変わらないですね」
そこでルセフォネさんは、あっ、と声を出したかと思うと、楽しそうに笑ってこう言った。
「いえ、ティアちゃんは変わったのでしたね。あのティアちゃんに婚約者が出来るなんで、予想外にもほどがありましたよ」
「いや、婚約者ではありませんから」
オレの方を見てくるルセフォネさんにキッパリと否定する。
何で毎回毎回、婚約してないのに婚約者扱いされるのだろうか。
あれか?
これが外堀からって奴か?
いざという時、オレが拒否出来ないところに追い詰めているのか?
••••••ありそうだな、うん。
「そうなんですか?まあ、私としてはどちらでもいいです。ティアちゃんに好きな人が出来た、というだけで楽しい••••••いえ、喜ばしいことですから」
今、楽しいって言ったよね、この人。
絶対面白がってるよね?
「••••••ルセフォネは、昔からこんな性格だから。あまり気にしない方がいい。反応すると弄られる」
「そ、そうか••••••」
耳元で囁かれた声に、そうとしか言えなかった。




