No. 57 マズイ状況
「••••••よしよし」
部屋の隅で、体育座りをするオレの頭をティアが撫でる。
よくわからないが、撫でる権利とやらを勝ち取るジャンケンで負けた真冬は、横で悔しそうにしている。
「••••••ふふっ」
ティアさん、ちょっと楽しそうですね。
王様も優しげな目で見てますよ。
はぁ、ダンジョン嫌だな••••••。
「秋矢、もう諦めた方がいいぞ。••••••それより、一つ報告したいことがあるのだが」
リオンに視線が集まる。
「ヴノ山脈で、ジークフリートと名乗る自称有名人がいたのだが••••••」
「なんだと!?」
王様が思いっきり反応する。
いや、異世界から来たオレや真冬、ダンジョンに篭っていたアダマス以外は、全員同じような反応をしている。
「誰だ?英雄さん?」
ティアに聞いてみる。
ジークフリートで思い浮かぶのは、英雄なのだが、ティアは首を横に振る。
「••••••逆」
「逆?」
英雄の逆?
「••••••昔は英雄だったけど、今は違う」
「ジークフリートは、テロリストだ」
王様が硬い口調で告げる。
テロリスト!?
名前が英雄なのにテロリスト••••••。
いや、昔は英雄だったんだよな?
「ジークフリートはとある国の王子として生まれ、王と成るべく育てられ、民のためにチカラを尽くす英雄だったのだがな、何故かは知らんが、数年前に自国のとある町の住人を大量虐殺したのだ」
••••••は?
なんだそりゃ?
そいつに何があったんだよ••••••。
「その後ジークフリートは逃亡。幾つもの国を巡っては、町を滅ぼしたり、財宝を強奪したりとやりたい放題でな。今ではありとあらゆる国から指名手配を受けている」
「ちなみに実力はかなり高くて、最強と名高いウェーデルの剣姫が倒すことが出来なかったくらいだからね。最強最悪の犯罪者の一人とも言われているね」
ウェーデルって何処やねん。
剣姫って誰?
いや、まあ、ジークフリートが強いことは分かった。
そんな危ない奴がこの近くに来てたってのか?
「奴は機能継承者でもあった」
「なんですって!?」
アダマスが目を見開く。
「機能は”猛毒の黄金”。本人曰く、ファフナーから奪い取ったものらしい」
「ファフナー••••••黄金竜ね」
嫌そうな顔のアダマス。
「あいつ面倒くさいのよね。手当たり次第に黄金ばら撒いて攻撃して来たりして」
黄金ばら撒き攻撃ね••••••。
オレが召喚術乱発するのと同じようなものか?
「あんたのよりたちが悪いわよ。弾数があんたの比じゃないし、一発一発が毒まみれだしね。掠っただけでアウトよ」
確かにそれはたち悪いな。
「それより問題なのは、奴が機能継承者であることだ」
険しい表情のリオン。
「機能継承者であるということは、資格があるということだ。そして、奴はギシリヤ周辺にいる」
「そうか!ジークフリートはダンジョンに入ることが出来るのか!」
マイクさんが声を上げる。
「マズイわね。ダンジョンには私みたいな神器があるわ。それがテロリストの手に渡ったら」
「大変なことになるな」
重くなる空気。
どうやら、ただのダンジョン攻略には成らなそうだ。
今日はイヴです!




