No. 123 薄くないはずだ
「全く失礼にもほどがあるだろ!」
街の外まで引きずられたオレは、夏夢の手をタップして窒息死することをギリギリ回避した。
夏夢はこんな程度じゃ死なないとは言っていたが、死ななきゃいいってもんじゃない。
首を絞められる苦しみは伝わるのだ。
まあ、それはともかく、オレはさっきの失礼な連中にキレていた。
「人が気にしてることを言いやがって!オレは男なんだよ男!服装だって男だろう!何処に間違える要素があるんだよ!」
「落ち着け秋矢」
オレの肩に手を置き、夏夢は落ち着くように言ってくる。
「君が女顔なのは今更だろう?それに、私が隣にいたわけだし、余計に女に見られたのかもしれない。私たちの顔立ちは似ているからな。姉妹だと思われたんだろう」
慰めになってねぇ!
日本で真冬と一緒にいた時にそんな間違いをされたことはあるが、夏夢もか••••••。
そんなに似ているか、オレ達?
いや、まあ確かに血縁者だし、似てるか似てないかだったら間違い無く似ているけど、男と女の違いがわからなくなるほど似ているわけじゃない••••••多分。
「あとは単純に願望じゃないか?」
「願望?」
「アレだ。わかりやすく言えば、ゲームでどう見ても女の子にしか見えないキャラクターが男の格好をしてる時、男装少女だと思うだろう?」
「ああ。で、そういうキャラクターに限って実は男の娘でしたってオチだな」
「うむ、そんな感じだ。まさしく君がな」
うむ、じゃねぇよ。
「それはあくまで二次元の話だろ。現実でそんなことが••••••」
「起こっているから君は嫌がっているのだろう」
夏夢の正論に何も言い返せない。
実際、女と間違えられているからキレてるわけだしな••••••。
やっぱり男らしさが足りないのが原因か?
「髭でも生やそうかな?」
「急にどうした?」
「いや、まずは見た目からかと思って••••••」
「そもそも、私は君に髭が生えてるところなど見たことないぞ。別段剃っているようには見えないし、生えないだろう。••••••男性ホルモンが薄いんじゃないのか?」
「やめろ、気にしてるんだ」
同級生の男子にもそんなことを言われたことがある。
やっぱ薄いか?薄いのか?
「いいじゃないか。一々剃る必要が無いしな。というか、今更だが君の肌、綺麗過ぎないか?」
「そうか?気にしたことは無かったが」
「••••••女性の敵だな。おっと、そんな話をしてる間に私たちの敵が来たようだぞ」
夏夢が右を見てつぶやく。
夏夢が見ている方向からは、数体のゴブリンがこちらに突然して来ていた。
「さあ、トレーニングの時間だ」




