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BATTLE SLUG -最強決戦兵器メモリア  作者: 昼間 ネル
第二章 天獄 編

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第19話 月面狂騒曲:バルジーナ VS メモリア

舞台は金星から月へ。

装甲艦マキシマムが漆黒の宇宙を突き進む中、カイとリングを待ち受けていたのは、かつてない「目に見えない敵」の襲撃だった。

電子の海を支配する天才ハッカー・カルビ。彼の悪趣味な指先一つで、心強い味方であったはずのバルジーナが、冷酷な刺客へと変貌する。

仲間を傷つけたくないリングの悲鳴と、容赦なく襲い掛かる鋼鉄の凶刃。

絶体絶命の危機に陥ったカイが耳にしたのは、機体の鼓動か、あるいは――。

論理ロジック意志パッションに屈する、月面上の狂騒曲が今、幕を開ける。

「う、嘘でしょ!? 火器管制(FCS)まで勝手にロックされた!?」


落下するバルジーナのコクピット内で、リングは悲鳴を上げた。

モニターには『TARGET LOCK』の赤い文字。その照準の先にいるのは、助けに来たはずのカイのメモリアだ。


「リング、危ない! 避けろ!」


カイが叫ぶのと同時、バルジーナの背部スラスターが火を噴き、重力下とは思えない鋭い反転を見せた。右腕に内蔵装備されたビーム・ランチャーが、容赦なく白銀の機体へ向けられる。


――ズ、ドォォォォンッ!!


「うわっ!? 本気かよカルビの野郎!」


メモリアは紙一重で回避したが、月面のクレーターが激しく爆ぜ、土砂が舞い上がる。


「ダメ、カイ君! 私の意思じゃないの! 体が、バルジーナが勝手に……!」


リングは必死に操縦桿を引き戻そうとするが、機体は彼女の筋力を無視し、モーターを唸らせて格闘戦を挑む。


緑の光を撒き散らしながら、バルジーナが月面を滑走し、メモリアの懐へと飛び込んだ。


リング「くっ……機体性能をフルに、奴は、どんだけバルジーナを理解して……。」


メモリアはバルジーナの突きを真っ向から受け止めた。


ギギギギッ! と金属同士が悲鳴を上げる。


「止まれリング! 目を覚ませバルジーナ!」


リング「無理だよ! 外部からの強制パッチが強すぎて、OSが書き換えられてる! まるで機体が『楽しんで』暴れてるみたいで……っ!」


二機の人機ジンキが、静寂の月面で火花を散らす。


それは救出劇というにはあまりに激しく、殺し合いというにはどこか悪趣味な「ダンス」だった。

その時、二機の通信回線に、気の抜けたような若い男の声が割り込んできた。


『あはは! いいねぇ、新型ニューモデルの挙動データ、最高にクールだよ。なに?その白銀の機体……? そっちもハッキングしちゃおうかな?』


「……あんたが『カルビ』か?」


カイが歯を食いしばる。


月面観光都市「ルナ・ニクス」の廃墟のどこかで、ポテトチップスでも齧りながらキーボードを叩いているであろう男に向かって、カイはスロットルを最大まで押し込んだ。


「遊びなら他所でやれ! リングを返せッ!!」


突然、メモリアが止まった。


バルジーナの鉄拳が、メモリアにクリーンヒットし、飛ばされるメモリア。


「ぐぁぁー!!」


ボンボンボン!!地面に打ちつける。


「痛っいい。これくらいじゃ、あっ、やばい!」



バルジーナが斬艦刀を抜き、メモリアに迫ってきた。


リング「停まれれぇぇ!!」


(……カイ…と…私達……を邪魔しないで……!!)


「メモリア……? ユイ……?」


コックピット内のカイの耳に、確かな声が聞こえた。メモリアの鼓動――ライブ・コアの振動動が爆発的に速くなる。


カルビ『何? プログラムの書き換えじゃない……? 精神サイキック干渉!? 潜入出来ない、むしろこっちが……干渉…ノイズ…が逆流してくる、ヤバッ…』


音を立て、巨大コンピューターの基盤が、過負荷で次々とショートしていく。


ボン!ドシューン!!


最後は強烈なアーク放電と共に、カルビのコンソールが物理的に爆発した。


「ぐゎゎ!!」


カルビが吹き飛ばされたその瞬間。


月面では、バルジーナの斬艦刀が、メモリアくの頭上へ向かって振り下ろされる手前で止まっていた。

いや、止められていたのだ。


メモリアは、その白銀の手のひらで、斬艦刀の側面に食い込み、火花を散らしながらその剛腕を真正面から受け止めていた。


完璧な、白刃取り。


システムダウンしたバルジーナと、論理を超えた意志でそれを止めたメモリア。


二機の静止が、月面の静寂をさらに深めていた。


「……へっへっボクの負けだよ。あんな非論理的なプログラム(意志)、面白い!」


これが、天才ハッカー「カルビ」の出会いであった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

今回のエピソードは、本作のメカアクションにおける一つの転換点となりました。

最新鋭のハッキング技術ですら制御できない「ライブ・コア」の神秘。そして、それを「面白い!」と笑い飛ばすカルビという男の異質さ。

単なる敵味方の構図を超えて、機体そのものに魂が宿っているかのような描写に、筆を走らせる私自身も熱くなりました。

特にラストの「白刃取り」のシーン。物理的な力ではなく、ユイの意志がバルジーナを止めたという事実は、今後の物語に大きな影……あるいは光を落とすことになるでしょう。

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