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闇ガチャ、異世界を席巻する  作者: 白井木蓮


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第七十二話 葛藤

「きっと魔族側にもモンスターを供給する仕組みがあると思うんです」

「供給する仕組み?」

「はい。今までは町の外に勝手に湧いてくるものだと思ってましたが」

「違うんですか?」

「あまりにも不自然すぎます。その強化版のモンスターだってここに来ているボスたちだけが配下にしてますし」


 ミスったな。

 ガチャ以外にも流通させるべきだったか。


 それにしてもボスたちのことをよく見てるんだな。

 最後方で檻の中にいるからモニターにたまに小さく映るくらいなのに。

 指示する声で見極めていたりするのか?

 ある程度のランクはわかるだろうからそこから絞っていってるだけか?


 でもさっきの言い方だとかなり多くのボスを調べてたりするんだろうな。

 とても王女一人で調べたとは思えない。

 どうやらガナッシュ王国の力を見くびってたようだ。


「おそらくこの格闘場でモンスター側が勝ったときの報酬としてモンスターが手に入るんだと考えています」


 俺の前でただ飲み食いしてるだけじゃなかったんだな。

 それに昼間もちゃんと仕事をしてたんだな。

 トルテばあさんもああ見えてなにか探っていたのか?


「そしてやはりオーナーさんは魔族との繋がりがあると見ています」


 王女の俺を見つめる視線が鋭くなる。


「いえ、オーナーさんと言うよりここの従業員の方全員ですね」


 犯人は従業員全員というのか。

 繋がりがあるのは事実だからその通りだな。

 さて、どうやって切り抜けようか。

 ……開き直るしかないよな。


「全て推測ですよね? 証拠はあるんですか?」

「みなさんがここに住んでいるということはわかってます」

「みなさんって地下一階の従業員ですか?」

「はい! ジャスミンさんもドーラさんもミアさんもクレアおばあさまも仲間モンスターたちもです!」


 まぁジャスミンやドーラはともかく、ミアたちのことも丘の上のモンスター牧場に行けばわかることだからな。


「でもそれは地下一階の人たちの話で俺と関係ないですよね?」

「いえ、関係あります!」


 やけに自信たっぷりに言い放ったな。


「この家、地下と繋がってますよね?」


 ……なぜわかった?

 まさか毎日ランチ営業後からずっと見張っていたのか?

 そして夜営業が終わってからもか?

 俺とアイリは外を移動しないとおかしいもんな。


 レファの力がここでも使えるんなら転移魔法陣でも用意しといたんだが。


「中、見せてもらえませんか?」


 断ったら怪しいよな。

 神様に急ぎの案件ということで階段をなくしてもらうか?

 でもそれでは結局俺たちの移動手段の話になる。


 …………詰んだか。


「わかりました。中はご自由に見てもらっても構いません」

「え……本当にいいんですか? てっきり断られるものかと……」

「ただし、もう二度と太陽を拝めなくなるかもしれませんよ?」

「……脅しですか? 完全に認めてますよね?」

「俺がオーナーだとしたらどちらにしてもあなたは助からないと思いますが?」

「……それは覚悟してます。じゃなければ一人で来たりしません」


 なんの覚悟だ?

 死ぬかもしれないと思ってるってことか?

 それなら大勢で来ればいいのに。


 ……そもそもなにしに来たんだっけ?

 まだその理由を聞いてなかったな。


「……そういや虹箱の中身についてはどう推測されてるんです?」

「武器だと思ってます。それも魔王を倒せるほどの力を持った」

「じゃあいいことじゃないですか。勇者が魔王を倒してくれるんでしょ?」

「そうですが……」

「プリン王女に手柄を取られるのが嫌なんですか?」

「そんなことはどうでもいいんです! ただ……」

「ただ?」


 なんだ?

 国の権力争いじゃなかったらなんだって言うんだ?

 魔族やモンスターがいなくなるのはみんな望んでることなんだろ?

 ならなぜ勇者を応援しない?


「……均衡が崩れるような気がして」

「均衡が崩れる?」

「はい。私は今のバランスがちょうどいいと思ってます」

「おかしなことを言いますね。モンスターにいなくなってほしいんですよね?」

「最初はそう思ってました。でもあの日、大将に言われてからはそれが本当に正しいことなのかがわからなくなりました」


 あの日って市場近くで話したときのことか?

 俺なんか言ったっけ?

 でもその日から王女が寿司酒場に来なかったことは一度もないな。


「少なくともここの格闘場では冒険者もモンスターも憎しみといった感情で戦ってるわけではありません」

「ほう」

「お互い報酬のために戦ってるんです。みんなルールを守っています」

「ふむ」

「それにどちらかというと報酬に拘ってるのは冒険者側のように思えます」

「というと?」

「モンスター側は観客がいるせいかみんなを楽しませようともしています」

「モンスターがそこまで考えますかねぇ~」


 やっぱりよく見てるな。

 あいつらは野次に答えようと必死だからな。

 ただ勝つのではなく戦術の見せ方も大事だそうだ。


「外ではモンスターが急増してますが冒険者を殺すことはなくなりましたし」

「へぇ~」

「冒険者もガチャのおかげでいい装備が安く手に入ってます」

「神ガチャですね」

「だからこそモンスターがいなくなると全てが成り立たなくなるに違いないんです」

「倒す敵がいなくなりますからね」

「そうなんです! 平和にはなりますが冒険者たちはどうなるんでしょう!?」

「廃業かもしれませんね」

「はい……お金も入手できなくなるでしょうし」


 よくそこまで導き出せたな。

 おそらく冒険者たちは廃業になるだろう。

 そうなるともちろんウチも倒産だ。


 だがそれよりも重要なことは王女が最後に言ったお金の話だ。

 モンスターがいなくなることの本当の意味を理解しているのか?

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