第四十五話 俺は寿司職人
地下二階リビングにウチに住む全員が集合した。
顔合わせは早いほうがいいからな。
ジャスミンとサーラがみんなのドリンクを用意してくれる。
こういうメイド的な存在はありがたいな、うん。
「……というわけで大改装に伴い二人が新たにウチの住人となったから」
「そういえば何歳?」
「むっ? ワシか?」
「違う。ミア」
「……二十歳です」
「う~ん、二十歳か。アイリ、どうする?」
「えっ!? ……地下一階に住むんだし、いいんじゃない?」
「でも人間だよ? 魔物使いといえど人間は危険」
「それはそうね……でもとりあえずは様子見でどう?」
「仕方ない。で、そっちの子は何歳?」
「えっ!? 私ですか!? 一歳です!」
「若い。どうするアイリ?」
「さすがにドラゴンは大丈夫じゃないかな……それに一歳って……」
「そう? ならいい」
……毎度のことだがそんな会話はやめてくれよ。
クレアばあさんなんか年齢すら聞かれなくて落ち込んでるぞ。
それにベビーに聞くのはいくらなんでもおかしいだろ。
…………ベビーだと?
「ベビー、なんでここにいるんだ?」
「ヤマトさんの後をつけてるだけです!」
「ほら、やっぱり危険」
「ストーカー気質があるみたいね」
いや、そうじゃなくてみんなも疑問に感じろよ?
この顔合わせ会に仲間モンスターは必要ないだろ?
なんでベビーだけがいるんだ?
「ちょっと! そこのばあさんとミア! 私にもスライムの下僕を用意しなさい!」
「え……下僕…………もしかして友達になりたいってことですか?」
「そ、そうよ! あとで賢くて可愛いの二~三匹連れて来なさい!」
「……わかりました」
ミアはリリアンヌの性格を理解したようだな。
さすが魔物使いだ。
クレアばあさんもリリアンヌに恐怖することなく微笑んでくれてる。
魔王候補なんか関係なくミアと同じく孫のように思ってるのかも。
というか仲間モンスターとリリアンヌを近づけて大丈夫なのか?
今は敵のはずだろ?
それも賢いから大丈夫なのか?
「マドラーナはこっちの仲間モンスターのことをどう思ってるんだ?」
「私は敵意のない相手を敵と見なすことはありません」
「ベルネッタは?」
「少なくともこの家の中ではみなさん仲間だと思ってますが」
この二人が特別なんだよな。
普通は裏切り者だと思ってもおかしくない。
……いや、ドーラのサーラに対する気持ちと同じか。
争う理由がなければ敵と思う必要もないもんな。
「じゃあ挨拶はこのくらいにして、今後のことを話し合おうか」
決めなきゃいけないことはたくさんある。
格闘場や飲食店の仕様、新たに雇う人材。
とてもすぐに決まるようなことじゃない。
これからじっくり時間をかけて考えるしかないな。
「まず飲食店よ! 従業員は食べ放題にしなさい!」
「それ賛成だぜ! 料理は旦那の手作りでいいんじゃねぇか!?」
「当たり前でしょ! ヤマトが全部作りなさい!」
……無理に決まってるだろ。
俺には寿司屋があるんだぞ?
「うん、ヤマトの作る料理はなんでも美味しいからね」
レファまで言うか。
そりゃ寿司以外の料理にも自信はあるけどさ、寿司屋はどうするんだよ?
「ヤマト、私もそれがいいと思うよ」
アイリまでどうした?
俺は寿司職人なんだぞ?
それとも寿司屋で注文を受けて作ってそれを運ぶというのか?
さすがに効率が悪いだろ。
「地下一階で寿司屋をやればいいのではないでしょうか?」
あの飲食店を寿司屋にするっていうのか?
寿司をメインにツマミも作り、酒も提供する。
それじゃまるで寿司居酒屋じゃないか。
…………悪くないな。
寿司居酒屋、いいじゃないか。
この世界らしく寿司酒場とでも呼ぼうか。
「でも一階の寿司屋はどうするんだよ? 場所がもったいないだろ」
それにせっかく常連になってくれた客に申し訳ないじゃないか。
「そっちも続けようよ!」
「でも地下一階最奥と一階では無理があるだろ」
「うん、だから夜はやらない!」
「……どういうことだ?」
「一階はランチ営業をするの!」
「ランチ営業……」
単純に労働時間は二倍だぞ?
それに朝早く起きなきゃいけないようになる。
となると夜にやってたガチャ屋関連の仕事は昼間にしかできなくなる。
今でも大変だったのにもっと大変になるんだぞ?
「みんなの分の朝食兼昼食も作ってね!」
さらに朝から飯までも作れと?
仮に営業が十一時半~十三時半としたら九時には起きなくてはならない。
九時半から買い出しに行き帰ってくるのは十時。
そこから仕込みをしつつ飯を作って朝食兼昼食は十時半。
ランチ終了後は片付けをして十四時。
そこから休憩をしつつガチャ屋関連の仕事を二~三時間。
といっても俺の仕事は頭を使うだけだが。
夜営業は一時間遅い十八時からだから夕食は十七時くらいか?
そして営業後の二十一時過ぎにはみんな疲れてお腹減ってるだろうからまず食事。
食事の後は掃除だけして仕事は終わり。
なんやかんや寝るのは一時ってところか?
……あれ?
なんだか理想的な生活スタイルかもしれない。
それに人が増えたんだし、みんなの生活に合わせるほうが色々と楽だな。
今までは俺とアイリとレファだけがおかしかったんだし。
もしかしてアイリはこのためにランチ営業を始めるなんて言い出したのか?
クレアばあさんの体調も気遣わないといけないしな。
これならリリアンヌたちとも朝食をいっしょに食べられるし。
……やってみるか。
仕入れもだいぶ増やさないといけないな。
地下二階に来るモンスターたちも同じ料理でいいのか?
さすがに体に気を遣ってはなさそうだな。
酒はドーラに任せようか。
「わかった。ランチ営業は近日中に始めよう」
「うん! なら明後日からね!」
もしかして神様はこうなることがわかってて寿司以外の技術も覚えさせたのか?
なんだか全てが仕組まれてるようだ。
「じゃあ次は各自の役割について考えよう」
今は目の前のことだけでいっぱいいっぱいだ。




