第二十四話 バランスが大事
「いくら数が多いとはいえ、雑魚スライムやゴブリンだろ?」
「あぁ、だが初級者には厳しいだろうってことだ」
「まぁしゃあねぇか。死ななかっただけマシだな」
緊急依頼を受けた中級冒険者パーティの四人はモンスターの生息地へ向かっていた。
「そろそろじゃねぇか?」
「……お出ましのようだな」
「先制攻撃といこうぜ」
「では魔法をぶっ放します」
「それで全部終わらしてくれてもいいぜ」
魔道士は中級レベルの名に恥じない炎魔法をモンスターの群れに向けて放った。
魔法は大群のど真ん中に命中し、多くのモンスターが消滅したようだ。
「……これだけか?」
「変ですね、聞いてたより数が少ないです」
「周辺を調べるぞ。一体も逃がすな」
冒険者たちは分散して周辺の探索にあたる。
そして三十分後……
「本当にあれだけだったのか?」
「これだけ探して見つからないんだからそうとしか思えないだろ」
「う~ん、初級者の言うことですしね」
「帰ろう。寒い」
冒険者たちは依頼完了とみなし、町の方向へ戻っていった。
◇◇◇
「本当に中級者レベルが来たのか!?」
「はい。お二人のおかげで被害が最小限ですみました」
夕方、寿司屋の開店前にマドラーナから報告を受けた。
……俺とジャスミンのおかげでモンスターの被害が少なくすんだか。
俺たちはただ国がどう動くかを推測で話してただけなのにな。
というか中級者レベルの冒険者が派遣されるかもしれないと言ったのはジャスミンだ。
そもそも人間とエルフと魔族とモンスターがテーブルを囲むってどんな状況だよ。
しかも魔族二人とモンスターは最上位レベルだからな。
でも今回はおあいこだよな?
普段モンスターには冒険者を殺さないように言ってあるんだから。
それに王様たちが来なかったらこんな話にはなってなかったんだし。
つまり偶然だよな。
モンスター側からしたらさらに強いモンスターを配置させることもできたわけだからな。
それをしたら次はさらに強い冒険者が来るだけだって言ったのは俺だ。
そしてあえて少数のモンスターを犠牲にしたほうがいいって言ったのもな。
そうすることで全て撃退したと思ってくれて、次からはまた初級冒険者が来るはずだ。
俺は公平な判断をしたよな?
……いや、俺はどちらかというと魔族やモンスターに肩入れしてるのかもしれない。
ガチャ屋の商品として循環を求めてる部分もある。
そのためにはモンスターにもある程度勝ってもらわなければならない。
だがそれよりもレファやマドラーナ、リリアンヌと知り合っていることが大きい。
一つ屋根の下に住んでるわけだしな。
もし俺がエルフだったらダークエルフとやらになってしまっているんだろうか。
でもジャスミンはなんともなさそうだ。
ということは多少魔族寄りになったくらいでは大丈夫らしいな。
「ヤマト、大丈夫」
「え? なにがだ?」
俺が考えこんでるのを見てか、レファが声をかけてきた。
「悪いことはしてない。ジャスミンも。むしろこれが普通」
なにに対して普通と言ってるんだろうか。
人間と魔族が戦うことについてか?
「戦いはずっと続くよ。だから私もモンスターをいっぱい作るの」
そりゃモンスターがいなくなったら戦いは終わるもんな。
いや、レファが言いたいことは少し違うな。
戦いを終わらせるわけにはいかないのか。
魔族側の勝利で終わらせるのは簡単なはずだ。
レファが強いモンスターをたくさん生成すればいいだけだからな。
それに対して人間側は強くなるのには時間がかかる。
魔族が本気で攻め込めば瞬殺だろうな。
でも町の中にいれば襲われないのか。
てことは攻め込まれる心配はないな。
しかも人間側は魔族やモンスターの生息地に自由に攻め入ることができる。
どう考えても人間側が有利じゃないか。
魔族の利点としては自由にモンスターを生成できる点だろう。
レファがいる限りモンスターがいなくなることはない。
つまり戦いが終わることはない。
レファは全てわかった上でモンスターを生成してるのか?
これも上手くバランスが保たれるように神様が設定してるんだろうな。
それならば俺はバランスブレイカーになってるんじゃないのだろうか。
「俺が道を踏み外しそうなときはとめてくれ」
「うん。でもそのときは私もいっしょかも」
それは例え俺が人間側についてもなのか?
モンスターが生成されなくなったら魔族側はどうするんだ?
マドラーナはこのやり取りをどういった感情で聞いてるんだろう。
「わざと弱いモンスターを冒険者に倒させるようにしたほうがいいのかもな」
「どういうことでしょうか?」
「エサって感じかな。小銭を稼がせてお金を貯めさせるんだ」
「確かに今の状態では冒険者のお金が尽きるのも時間の問題ですね」
「あぁ。そうなるとウチには冒険者もモンスターも来なくなる」
「でもモンスター側からすると失った分をガチャで補充してるだけでは?」
「そこは近隣のボスモンスターとの兼ね合いじゃないか?」
「……つまり一部のボスだけが配下を増やすかもしれないということですね?」
「競い合ってるんだろ? そこはボス同士で競争してもらわないと」
「さすがです。早速今日来るボスモンスターたちに指導しますね」
「頼むよ」
ボスモンスターも理解さえしてくれれば納得してくれるはず。
仮に配下が少なくなっても支給されるって言ってたしな。
逆に配下が増え続けるボスも出てくるわけか。
さすがにそれは人間側に阻止してもらわないとな。




