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第12話 トーキョーの天使

月。

永遠のトーキョーシティ。

ある日、学生は、コンビニでトリを買った。

トリは、可愛い女の娘だった。

エメラルド色の長い髪、エメラルド色の瞳。

名前は、トトリ。

トトリは、学生の住むアパートの押し入れの中で、寝泊まりしている。

トトリは、家事をしてくれる。

「学生さん。このシャツ、お洗濯して良いですか?」

学生、森田すばるは、首を横に振る。

「オレの服の洗濯は、自分でやるよ」

男の衣服を洗うのは、ちょっと、女の娘に向いてないだろう。

今度は、トトリが、首を横に振る。

「私が、洗います。このトランクスとかで、遠慮しているんですか?」

「あ、ああ!さわらないでくれ!汚いんだから」

「大丈夫です」

すばるの分の衣服を、トトリは、全て素手で洗濯機に入れた。

洗濯機のスタートボタンを押すと、すぐに洗濯がはじまる。

その後、洗面台に行き、両手を洗う。


ジッ


トトリは、真剣な表情で、すばるを見つめる。

「洗濯は、私が、全部やります」

「あ、ああ」

「でも、変な気を起こして、襲わないでくださいね」

「…え?」

さらに、真剣な眼差しで、トトリは言った。

「私、天使じゃありませんから」


第12話 トーキョーの天使


すばるは、悩んでいた。

「えーと…」

テーブルに置かれたスマホ。

電源は、ついたまま。

この前、アパートの通路で、トトリを被写体に撮った、渾身の一枚。

学生写真コンテストに、投稿するものだ。

すばるは、写真を撮るのが好きだ。

永遠の夢だ。

自分に、才能は、無い。

でも、頑張り続けたい。

時の流れが止まったトーキョーでは、学生は、アルバイト以外できない。

だから、学生のまま、夢を見る。

自分の中では、いい出来の写真。

すばるは、その写真に。


『トーキョーの天使』


と、タイトルをつけた。

永遠に、側にいてくれる。

不思議な存在。

ある日、突然、自分の前に現れた女の娘。

不死鳥の女の娘。

トトリとは、これからも一緒に暮らしていく。

そう、思っている。


「すばるーん」

「すばる〜ん。見て見て〜ん。うちのトリタロウちゃんの写真、上手く撮れたわ〜ん」

玄関のチャイムも鳴らさず、城田兄妹がやって来た。

トリタロウとは、城田兄が、テレビの通販番組で買ったオスドリである。

トリタロウは、背が低く、小学生のようなトリだ。

城田妹が、スマホ画面を、すばるとトトリに見せつける。

スマホ画面には、トリタロウが、掃除機で部屋を掃除している写真がうつっていた。

「…掃除中か?」

「掃除中よ〜ん」

「日常の一幕って感じか。でも、これは、写真コンテストには向かないだろう」

「アタシたち兄妹は、トリタロウちゃんの日常を写真にしたいのよ〜ん」

「よーん」

城田兄妹は、この写真を投稿するようだ。

どんな写真でも、自分が気に入れば、それで良い。

夢を楽しみたい。

城田兄妹らしい選択だ。


テレビで、ニュース番組がやっている。

トーキョーで、

“国民全員のトリを買うことの義務化”

について、正式に都議会で決定したらしい。

「国民全員は、一家庭に一羽、半年以内にトリを買ってください」

ニュースキャスターが、はっきりとした口調で原稿を読み上げる。

「買うトリは、オスドリでも、メスドリでも構いません。メスドリの回収案は、否決されたとのことです」


これから、トーキョーの国民は、トリと、共に暮らしはじめる。

トリは、一家庭に一羽。

かけがえのない、家族となることだろう。


「トトリは、天使という言葉が、嫌いなのか?」

素朴な疑問を、すばるはぶつけた。

「…何で、そんなこと聞くんですか?」

トトリは、少し不機嫌になった。

「だって、『永遠の天使』っていう、才能のある他の男の方が描いた絵のせいで、サッカさんと姉のヒトリがケンカ別れしていたんです。嫌いです」

何で、そんなことを聞くんですか?

と、反対にトトリが疑問をぶつけてくる。

「…オレは、トトリは、天使だと思う」

「え?」

「トトリは、トーキョーの天使だ」

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