第12話
森の中は静かだった。
風の音も、鳥の声もない。
「やっぱり……この森だ」
ラビィは小さく呟いた。
レガリア時代、幾度も訪れた場所。
そして見えてきた。
ぽっかりと口を開けた、ほら穴。
「あった……」
隣の天照は落ち着かなそうに辺りを見ている。
二人は洞窟の中へ入った。
天照の身体から淡い光が溢れている。
そのおかげで、洞窟内は昼間のように明るい。
(この神様……初めて役に立ったな……)
ラビィはちらっと天照を見た。
天照は首を傾げている。
「何か言ったかの?」
「いえ、何も!」
ごまかしつつ奥へ進む。
やがて、洞窟の奥に湧水の泉が現れた。
水面は鏡のように静かだ。
ラビィはナイフを構えた。
「来ますよ!」
次の瞬間。
水面が盛り上がり、巨大な蛇が泉から這い出てきた。
ぬらりと光る鱗。太い胴体。
「で、出たぁぁぁ!」
天照は即座に逃走開始。
「天照さん戦って!?」
「無理じゃー!!」
蛇が牙を剥く。
ラビィは軽やかに身を翻し、攻撃を避ける。
「よっと、ほいっと」
反撃を入れながら、余裕の動き。
だが——
「あっ」
足元の岩に躓いた。
態勢が崩れる。
その一瞬。
蛇の視線が、逃げ回る天照へ向いた。
「え」
ガブッ。
「ギャーーー!!」
「天照さんっ!!」
ラビィが叫ぶ。
しかし、遅かった。
天照の身体は光に包まれ——
粒子となって、消失した。
洞窟に、静寂が落ちる。
次の瞬間、ラビィの身体も光に包まれた。
強制転送⸻
目を開くと、そこはギルド内だった。
《クエストフェイルド》
無機質な表示が浮かんでいる。
ラビィはその場に立ち尽くした。
「……ごめん、天照さん」
ぎゅっと拳を握る。
「私が調子に乗ったばっかりに……」
しばらく俯いたまま動けなかった。
ふと、顔を上げる。
「あれ……?」
思考が切り替わる。
「さっき、ここで野花を消失させた時は転送されなかったよね……」
端末を開く。
「編成メンバーがゼロになるまで転送はされない……って事かな」
メモを取る。
震える指で、それでもしっかりと。
その時、端末が鳴った。
《テスト時間終了》
「あっ……終わっちゃった……」
小さく息を吐く。
「ログアウト」
視界が暗転した。
⸻
ベッドの上で目を開ける。
現実の天井。
ラビィはゆっくり起き上がり、端末を手に取った。
「おかえり、ラビィちゃん」
ナナミが優しく端末を受け取る。
「初テストどうだった?」
「バグなかった?」
「操作性どう?」
チームメンバーが一斉に話しかけてくる。
「はいはい、一斉に聞かないの」
フィニスがたしなめる。
「ラ、ラビィさん。頼んであった任務のデータを下さい」
努が少し緊張気味に言う。
「あっ、はい!頼まれていた任務と、ついでにチュートリアルクエストも少しプレイしておきました!」
ちょっと得意げに、保存端末を渡すラビィ。
努がデータを確認する。
「……あれ?」
「ラ、ラビィさん?」
「えっ、何ですか?」
「その……三つの時代に行ってとお願いしていたはずですが……神話時代の一つだけしかありませんが……」
一瞬の静寂。
「…………あーーっ!!」
ラビィの叫びが響いた。
後ろから気配。
「ラビィさん?」
フィニスが、腰に手を当てて立っていた。
ラビィ、ビクッと震える。
「す……すいません……忘れてました……」
ここまでお読み下さり本当にありがとうございました。
《ブックマーク》や《評価》を頂けると大変励みになります!
更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。
平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




