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10. 幸せな結婚生活はそう長くは続きません

 オリュンポスの頂から続く天界で女神達と宴を催していると、衝撃的な事実を耳にしました。


「いっ……今、何ておっしゃいましたの……?」


「レトがゼウス様の子を妊娠しているって言ったのよ。ね、レト?」


 ポセイドンの妻で海の女王であるアムピトリテがレトを見ると、ほんのりと頬を染めて微笑み返してきました。


「ええ。ゼウス様の子を身篭ってしまった以上は産まねばなりませんでしょう」


「ゼウス……さまの……子……?」


 わたくしが絶句しているのには構わず、女神達がレトの腹にいる子の話題で盛り上がっております。



「レトのお腹にいるのはきっと双子ね」

「優秀で偉大な神になるに違いないわね!産まれる前から分かるわ」

「ええ、それ程のパワーを感じるもの」

「どんな神が誕生するのか楽しみねぇ」



 確かに、レトの腹からはただ者では無い何かがいるのを感じます。


 わたくしもヘパイストスとアレスを産んだ後、出産の女神・エイレイテュイアと青春の女神・へべの2人の子を設けました。

 でもわたくしの産んだ子はどうもこう……自分で言うのも物凄く悔しくて仕方がありませんが、パッとしません。


 長男は腕前はあれど醜男ですし、次男は美貌はあれど野蛮で粗暴。長女と次女は美しくて物凄く可愛い娘達ですけれど、偉大と言うには程遠く……。



 わたくし、ゼウス様の妻よね?

 妃ですのよ?!



 なのに、なぜ正妻のわたくしからではなく、愛人からそんな偉大な神が2人も産まれてくると言うでしょう?

 立場がありません。


「……なんでですの」


「ヘラ様? どうなさったのですか? 顔色が悪い様ですが」


「なんでわたくしがこんな仕打ちを……!! 」


「へ、ヘラ様??」


 隣りに居たイリスがオロオロしだしたのを見て、他の女神達も何かあったのかと顔色を変えます。


「レト! 貴女、ゼウス様の妻であるわたくしが居るのに、よくもまあその腹を抱えてこの宴の席にやって来たこと! どれだけ面の皮が厚いのでしょう?!」


「そっ、その様に仰られても、ゼウス様に迫られては私にはどうしようもありませんでしたし……」



 わたくしの怒りの形相に、レトがうるうると目を涙で滲ませ始めました。

 何を被害者ぶっているのでしょう?ますます怒りのボルテージが上がっていきます。



「どうしようもなかったですって?! 貴女の妹のアステリアは、ゼウス様を拒んだせいで岩に変えられてしまったのではなかったかしら? そんな妹に比べてお前ときたら、どうしようもなかった? ぬけぬけと!! 今すぐその腹の子を殺して差し上げますわっ!!!」


 この女の妹、アステリアはゼウス様に迫られて、うずらの姿になって逃げたのだそうです。すると気を悪くしたゼウス様に岩に変えられて、彼女は今も海を漂っているのですわ。

 アステリアは本当に不憫でなりませんが、わたくしからしたら「グッジョブ!」と褒めて差し上げたいです。


「ヘラ様、少し落ち着いて下さい。お腹の子は産まれる前とは言え神ですよ。殺せるはずはありません」


「イリスは黙っていなさい! 殺せないならこの女ごと壺の中にでも入れて冥界のハデスにでも送ってやるわ!」



 レトに掴みかかろうとするわたくしを、女神達が抑えます。おまけにレトの周りにも、この女を庇うように女神達が囲みました。


「レト、早くこの場から去りなさい」


「はっ、はい……!」


 レトがデメテルお姉様に言われた通りに、宴の会場から小走りに逃げ出して行きました。


「なんで邪魔をするんですのっ?! あの女の味方をして、まるでわたくしが悪者みたいに!!」


「ヘラが悪者だなんて思ってないわよ。でもレトだって、好きでゼウス様の子を妊娠したわけじゃないんだから」


「デメテルの言う通りよ。ヘラ様が怒るのも分からなくは無いけど、でも、ご存知でしょう? 男たちの身勝手さと言ったら。美人で処女と知るや否や、否応無く迫って来るんだから。特にゼウス様と私の夫のポセイドンは最たる例」


「アムピトリテはポセイドンの浮気を許せるんですの?!」


「許すも何も、あの男と結婚した時点でそんな事は予想の範囲内と言うか、予想通りと言うか……むしろ浮気しない方がおかしいと言うか」


「そうですよ。私の夫のゼピュロスだって割と温厚な性格ですけど、あの様に気に入った女を無理矢理連れ去ってしまったんですから」


「セックスするのが嫌だから、馬や蛇の姿になって逃げたって、追ってきて挿れてくるのよ? 性欲魔神のヤリチン野郎どもは」


 この場にいる女神達全員が、ウンウンと頷きあっております。

 なんですの、これは?


 わたくしがおかしいのでしょうか?


 助けを求めるように、恐る恐るレアお母様の方を見ると、ため息をつきながら首を横に振りました。


「ヘラちゃん、諦めなさい。男とはそう言う生き物ですよ」


「レアお母様までそんなことを……! 妻がいるのに他の女にうつつを抜かす事がおかしいに決まってますわ! んもう! こうなったら、ゼウス様に直接抗議してきますっ!!」


 怒り心頭のわたくしを止める者は誰もいません。宴の会場を後にして、ずんずんとゼウス様が居らっしゃるであろう部屋へと向かいます。

ゼウス様、ついに浮気発覚です( ⌯᷄௰⌯᷅ )

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