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episode27

2015/1/22

本来14時に投稿する予定が違う作品に投稿してしまい、先程メッセージにて指摘して頂き、気付くことが出来ました。

五 流季様、本当にありがとうございました。

 我等拠点の中央にて現在会議が開かれている。

 いや、会議と言うよりかは最早裁判か。尚、裁判官は一人も存在しない。

 そして肝心の被告人は───組長たる私である。

 裁判長は厳かにハンマーを振り下ろし、静粛にと、何処か楽しそうに騒がしくもない周囲に注意をして、周囲は一人を除いてノリノリだった。

 

「それではなんか厄介事持ってきてバカリーダーの処刑方法を考えたいと思います」

「銃殺刑で」「一年間食事無しってのが妥当だろうさ」「ファラリスの雄牛」「あのー、別にこれくらいいいんじゃないっすか」「ならジョーカー変わる?」「あ、俺は何も言ってないです、はい」


 今回の裁判はノリで行われているはずなのだが、なぜだろうか。

 途中で拷問話が出てきたような気がするんだが。しかも聞いた事がない声で、───こんな時ばかり声を出すのはどうなんだレザム。しかも内容がおかしい、それ確か世界で一番残酷な処刑法じゃなかったかッ!?

 いやそれにしてもだ、まさか一匹の眷属とちびっこ一人持って帰っただけで酷い扱いである。

 まあ、眷属にしたアホ娘は人間至上主義王国こと「パライア」のそこそこ上の貴族様だったらしいのだが。

 ジョーカーに経歴を調べてもらったらあくどい行為の多い事多い事。

 無実の罪で奴隷の量産、税率七公三民、一部の商人との癒着、盗賊の支援、スラム街の子供を玩具扱い、大人は奴隷か、これまた玩具。この家はちょっと頭がおかしいとしか思えない。他の貴族もまあ問題だらけだが、一応同族だからか人間扱いはしているんだがなぁ。

 おまけにこの小娘、子供にしか欲情できず、しかも拷問じゃなければイケないとはここのスタッフはどうやら頭がおかしい。確かに倫理コードは購入の際に行う年齢確認やらで制限を解除できるのだが、こればかりはどうなんだと思った。

 一応キャラクターの設定だけなら15歳からならば閲覧可能なのだが、そこに平然と奴隷だの玩具だの、アホかここのスタッフは。思わず熱烈にラブコール(嫌がらせ)を繰り返してやったくらいには気になる。ちなみに担当の男性スタッフが奇声を上げてキレて以来反応がない。途中で慰めるような言葉が聞こえたが、ふむ。別に拷問の種類は何かを道具とその用途、使用された実例を詳細に説明しながら尋ねただけなんだが、何か問題があっただろうか? それとも、ちょっとした演技をセンナと共に入れたのが問題か? ナイス断末魔と、二人して手を叩いていたんだが。


 まあそれはそうとして。

 ちなみに保護した少年なのだが、現在はセンナの膝の上でお菓子食べてる。

 実はというと、センナ、と言うか閃はあれで子供が好きだ。正確に言うと男の子が好きだ。

 別に変な意味じゃない。単にアイツ弟が欲しかったんだよ。まあ、あの猫可愛がりっぷりはちょっと引くが。その反面、優秀な妹─まあ、実際は閃の方が優秀だったんだがな。あの親御は見る目ねえわ──と比べられ続けたせいか女の子に対しては結構厳しいがね。年上好きなのもそれが原因だろうな。

 まあ、ともかく。そんな感じの現状なのだが。

 現在私の裁判理由はこの二人を連れてきた事である。

 これによってイベントが発生、それも私がボスとしてのイベントなので超笑えちまう。


▼ 

【クエスト】吸血事変(強制)

それは災厄、たった一匹のバイオハザード。血を吸う鬼の再来だ。

若い娘は気をつけろ、噛み付かれた同類だ。老いた女は震えてろ、噛まれなくとも食われはするぞ。淫らな女は股でも広け、突き立てられるのは首筋だがな。

男は剣を持て、名を上げる機会だ。聖職者は祈れ、十字架は忘れるな。王は泰然とすればいい、全ては普段の行動次第さ。

ああ、吸血鬼よ夜に嗤え。血を吸い、狂わせる大罪者。全ての舞台は整った、さあ、自分を犠牲に(オール)笑ってみせろ(・イン)?

報酬:眷属制限解除

依頼人:神祖「ガイアス」

指定地:人間至上国家「パライア」王都

 ▲


 これ私以外(ターゲット)じゃね? と気付いたのはその他のメンバーに送られてきた二つのクエストを見たからだ。

 一つは私をぶっ殺す側。もう一つは私とぶっ殺す側。

 どちらかと言えばお前らぶっ殺す側になりたいなと思ったのだが、その考えが顔に浮かんだのか、全員が青い顔して私側になりましたとさ。別にレベルで言えばお前さん等の方が遥かに格上だろうに、まったく意気地のない。

 ちなみに、このクエストは現在全てのプレイヤーに出回っているらしい。街に手配書があるらしく、もう驚いたのなんのって。ちなみに賞金額がギルドホーム三件分以上なのだが、いや、本人としてはそこまで価値がないと思うんですけどね、まあ、吸血鬼の世間一般的な恐怖感が面白おかしく働いてくれたようだ。

 そして、現在情報版でも皆さん面白おかしく言ってくれているらしい。

 見せてもらったが、初期の頃に土鍋やら購入した店主っぽい輩が楽しげに私を語っていた。その暴露っぷりが気にっているから、殺すのは最後にしてやろう。

 そして、非常にどうでもいいことだが。今後の事を色々と話している内に酒が入り、思考が怪しくなっていたセンナとセガール嬢が酒瓶片手に行い始めたのがこの裁判である。

 

「それでは処刑方法はファラリスの雄牛で決定」

「おいおい、私を殺す気かい?」

「大丈夫だよ、ゲームだし」

「……痛覚再現100%なんだが?」

「悲鳴は録音しておこう」


 そうして、本当に用意された拷問処刑道具の中に収納され、


「はい、着火♪」


 物凄く上機嫌な声と共に燃やされましたとさ。

 まあ、もちろんなのだがただ燃やされてやる訳もなく。


<換装>水、ばら撒き<換装>水、ばら撒き<換装>水、ばら撒き<換装>水、ばら撒き

<換装>小石(10)、放置<換装>小石(10)、放置<換装>小石(10)、放置<換装>小石(10)、放置

<換装>爆裂草、放置<換装>爆裂草、放置<換装>爆裂草、放置<換装>爆裂草、放置

<換装>火蜥蜴の革鎧<換装>石榴石の鏡盾<換装>石榴石の耳飾り


 ───作戦名<クレイモア>。

 その後大爆発と共に周囲に小石が散弾銃の如く飛び散り、ただの部屋着同然の服装をしていた皆が教会送りになったので思わずその場でガッツポーズ。8割ほど焼け爛れているが、なにいつもどおりだ。

 ちなみに少年だけはセンナ印の身代わり人形のおかげで平然と生きいたりする。

 そのおかげで、私は焼け残った後、少年から血を提供してもらったのである。……何故か赤くなって首筋を出されたのだが、まあ、気にするような事ではないだろう。



 ◆



 さて、全員正気に戻った事で通常運転を再開するとしよう。

 場所は我等がギルドホーム「逢魔組」。見た目で言うのなら2回建て、赤い屋根が特徴的な、白い壁の家と言う何処に民家だと言いたくなるような代物だ。地下に巨大な訓練施設、生産施設、眷属収納スペースがあるがそれ以外は普通の家としての機能しか存在していない。

 さて、そんな中、私の私室らしい和室の中で会議を始めている。

 私室は私の希望で囲炉裏が設置されており、その為換気扇も装着されている。現在は五徳を使用して、土鍋でじゃがいもを煮ていた。何故かって? 自分の分の魚が無いからじゃがバター食いたいと言い始めた小僧がいたからだ。まあ、食材持ち込みだったので許可したがね。それにしても囲炉裏でじゃがバターとはなんとも。ちなみに灰の中には紙で包んだサツマイモが入っている。これは私の物だ。

 

「はふっ、んっ、あひゅ、っんあ」

「落ち着いて食べなさい、魚は逃げないから」

「お嬢は一度マナーっての身に付けた方がいいとおもうんだがねぇ?」

「そんなもんはな、他人を不快させるとか言い始めた馬鹿が広めた偏見だよ。食いたいように食うのが我が家ってもんだろう」

「他所で食べたらボロが出るって言うだろう?」

「他所では案外まともに食ってるんだよ、このワンコ」

「はヒュ?」


 ちなみに芋待ち中の私とジョーカー以外は全員串焼きのレインボーを食べている。

 私が食べないのは人数分無かった事と、ジョーカー一人芋というのも流石に哀れだったので丸々エウクレイアに譲ったからだ。それは伝えなかったのだが、なんかジョーカーからめっちゃ潤んだ瞳で感謝されたが、───別にお前の為じゃないんだが? ただエウクレイアの昼飯としてはちょうど良かったからと言う理由の方がでかいし。

 まあ、それよりも先ずは芋だ。

 灰の中に手を突っ込み、多少火傷しながらもそのまま紙を剥いて齧り付く。

 芋の甘みと、ちょっとした焦げ臭さというか、焼き芋特有のあの匂いに十分満足だ。

 寒い時はやっぱり芋だわ。煮物に良し、焼き物に良し、スープにも良し、味噌汁でも美味いときた。炊き込みご飯も忘れられん。デザートの材料にも大人気だ。

 

「そろそろご飯の話はやめようよ。せっかく集まった作戦会議なのに一体全体無意味じゃないか───あ、芋一欠片くれない?」

「まあ、そうだな。じゃあそろそろ真面目に話すとしようか───ほらよ」

「でも話すって何を話すんで、……うめぇ、じゃがバターうめぇ。やっぱり芋にはバター醤油だわ」

「何を言ってるんですが、マヨネーズも美味しんですよ!」

「煮物が一番さ、あの崩れた芋の良さと言ったら、もう堪らないねぇ」

「───じゃが芋は、揚げるのが好き」

「どうしてお前は微妙な話の時は声を上げるんだ? ……その場のノリは確かに大事だが、まあ、そうなのか?」

「盛大に脱線してるんだけど、まあ、いいかな」


 そうしてしばらくはまた飯談義、と言うか追加注文があり、厨房でセガール嬢とひたすら鍋を振るっていたのだが、まあ、どこぞの腹ペコの飲み物に、ラムネを砕いて氷に混ぜた物と、コーラをついで一気飲みさせたので会議が再開できた。───女として見せてはいけない光景だが、まあ、個人的にはそんなるーも結構可愛らしい。主に悲鳴がいい、苦痛を素直に見せる顔がいい、そそる。

 ……俺ってやっぱりSなのかねぇと少し自分の性癖が心配になったが、まあそれはどうでもいいのでいい加減話を進めるとしよう。


「先ずはレザム。お前は正面から圧倒的な火力で蹂躙しろ。なに、気負う必要はない。どうせ的だ、薙ぎ払え」


 静かに頷き、すぐさま精霊達と無言の交信を始めたレザムは、準備があるとその場から姿を消した。

 おそらくだが、装備の変更だろう。彼女は圧倒的な軽装による回避能力と、霊剣による圧倒的な火力による回避重視のパワーファイターだ。しかし反面魔法に対してあまり強くはなく、その対策として秘密兵器があるらしい。どんな装備可は知らないが、楽しみだ。

 

「セガール嬢は、まあ、NPCに飯でも分けてやってくれ。せっかくの食料だ、美味い方がいいからな」

「はは、なんともコメントに困る言葉だねぇ。まあ、承った」


 食材を取りに行くと言って姿を消したセガール嬢に無言の感謝を送っておく。

 人間の調理は出来ないだろうが、多少の味直しなら可能だろう。血も肉も食べた物によって変わるからな。少なくとも飯に関して妥協のしないセガール嬢が関わってくれるのなら私としては最高だよ。


「ジョーカーは殺せ、楽しめ、嗤え」

「いつもどおりですね、了解しました組長」


 殺人鬼に支持など必要ない。ただその役割をこなせばいい。

 私が捕食者ならコイツは狩人だ。殺すだけならコイツの方が上等だ。

 その腕を見込んで、殺せと頼み、了承してもらった。これ以上に頼りになる存在はいまい。


「で、そこで寝てる腹ペコは宣伝役な」

「まあ、るーちゃんはそれくらいしか出来ないよね」


 旗を両手に必死に応援してればいい。と言うか、それ以外させん。

 場合によってはファンクラブ連中とやり合う自体になりかねんが、───その時は根絶やしにしよう。

 うちのワンコに手を出したら死を。それを周囲に知らしめねばならない。


「で、私は?」

「少年の面倒を見てやってくれ。あの子は未だに一人だと奴隷だった頃の悪夢をみるらしいからな」

「了解、にしても運営も何考えてこんな重たい設定作ったんだが」

「単に楽しみたかったんだろうさ」


 さて、と腰を上げてフリーパスを使用する。 

 この面白イベントまであと48時間、ただ時間を浪費するなどもったいない。

 この間に、少しでも能力を強化するとしよう。


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