済 第51話 深雪、天国の門を潜る
眩い光に包まれたレオンは、四つの棺と共に千葉県――レオン邸のリビングへ姿を現した。
ドサッ。
ドサドサッ。
四つの棺が、リビングの床へ次々と落ちる。
パンダは驚いて駆け寄った。
「レオン! 血が出てるにゃ!」
レオンは息を切らしながら首を振る。
「深雪の血だ……僕のじゃない。」
「魔力切れだけどな……。」
荒い息を整えながら、音声マイクに向けて話しかける。
「ミカエラ! 聞こえるか!」
「迎えに来れるか?」
すぐにテレビから声が返ってきた。
『ええ、今から行くわ!』
音声だけは繋がっている。
カメラはレオン邸のリビングの一角を映したまま動かない。
『テレビクルーは!?』
ナルがカメラを持ち上げ、レオンへ向けた。
レオンは静かに答えた。
「深雪たち四人は……死んだ。」
その言葉を聞いた瞬間――。
「深雪!」
まきは深雪の棺へ飛びつき、声を上げて泣き崩れた。
「やっと二人目が出来たのに……。」
桜子も父親の棺へ駆け寄る。
「パパぁ……。」
涙が止まらない。
パンダは二人を優しく抱き寄せた。
「まきちゃん。」
「全員、生き返るにゃ。」
まきは涙を拭いながら頷いた。
「うん……。」
「ダンジョンへ潜る前に、死んでも復活できるって説明された。」
「でも……悲しいよ。死んじゃうなんて……。」
棺へ手を添える。
「深雪……昨日ね。」
「妊娠検査薬を使ったの。」
「二人目が……やっと出来たんだよ……。」
静かな部屋に泣き声だけが響く。
しばらくすると。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。
レオンは疲れた声で言う。
「ミカエラが来たみたいだ。」
「僕は動けない。」
「パンダ、玄関を頼む。」
「わかったにゃ。」
パンダは急いで玄関へ向かった。
外からミカエラの声が聞こえる。
「四人は教会へ連れて行くわ。」
「レオンも宿屋で休ませないと。」
「こっちにゃー!」
パンダが案内する。
ナルはその様子をカメラで映し続けていた。
――その頃。
深雪たちは、眩い光に包まれた美しい門の前へ立っていた。
純白の柱。
青空へ続く階段。
黄金に輝く巨大な門。
その前には、一人の天使が立っていた。
深雪は思わず見上げる。
「ここが……天国。」
天使は静かに四人を見渡した。
「ここは、寿命と徳を司る審判の門である。」
最初に深雪へ目を向ける。
「下界へ戻れ。」
「お前には生き返る資格がある。」
深雪は深く頭を下げた。
「ありがとうございます。」
続いて音声スタッフと照明スタッフを見る。
「お前たちも戻れ。」
「生き返る資格がある。」
二人は顔を見合わせて頭を下げた。
「ありがとうございます!」
最後にカメラマンへ視線が向く。
天使の表情が厳しくなる。
「お前は駄目だ。」
「生き返る資格がない。」
カメラマンは青ざめた。
「ど、どうしてですか?」
天使は厳しい声で告げる。
「お前は仲間を見捨て、助かろうと逃げようとした。」
「匿名で人を傷つける言葉を書き続けた。」
「己の利益ばかりを優先し、徳を積んでこなかった。」
「その心は、まだ汚れている。」
カメラマンは膝をついた。
「そんな……。」
その時。
深雪が一歩前へ出た。
「だったら!」
「俺の寿命を分けてください!」
天使が眉を上げる。
「お前の寿命は四分の一減る。」
「それでも良いのか?」
「構いません。」
「コイツを生き返らせてください。」
カメラマンは慌てて首を振った。
「駄目です!」
「三角ディレクター!」
「俺なんか生き返らなくていい!」
「さっきだって……。」
「三角ディレクターが俺を庇わなきゃ、死ぬのは俺達だけだった!」
深雪は笑った。
「そんなの気にするな。」
「お前、俺について何処にでも来てくれるだろ。」
「カメラの腕もいい。」
「死ぬには早すぎる。」
「それに寿命なら、レオンに頼めば伸ばしてもらえる。」
天使は豪快に笑った。
「はっはっはっ!」
「その必要はない。」
「お前の寿命は既に千年まで延びている。」
「レオンの白魔法の力だ。」
深雪は驚く。
「あ……あの時か。」
天使はカメラマンを見る。
「お前の寿命は二百五十年。」
「十分長い。」
カメラマンは涙を流した。
「二百五十年も……。」
「俺、生きられるんですか……。」
「そうだ。」
「だが、徳を積まねば意味はない。」
カメラマンは深雪へ向き直った。
「俺……。」
「いつも三角ディレクターの悪口をXに書いてました。」
「本当にごめんなさい。」
「俺、一生あなたのカメラマンをやります!何処にでもついていきます!」
深雪は苦笑した。
「良いよ、高橋。」
「なんとなく、お前なんじゃないかと思ってた。」
高橋は泣きながら何度も頭を下げた。
天使は静かに言う。
「悔いは改めよ。」
「徳を捨てるな。」
「次に死んだ時、今のままなら復活はない。」
「はい!」
高橋は力強く返事をした。
天使は深雪を見つめ、満足そうに頷く。
「お前。」
「部下を命懸けで助けようとした姿、見事だった。」
指を鳴らす。
パチン。
一つの美しいタンバリンが現れた。
「これを持って行け。」
深雪は受け取る。
「タンバリン?」
「これは神々が戦で用いた聖具。」
「二度打ち鳴らすたび、勇者一行全員の生命力と魔力を飛躍的に高める。」
「決戦でも、その前でも構わん。」
「必要だと思った時に何度でも使え。」
「きっとお前たちの力になる。」
「ありがとうございます!」
その瞬間。
再び指が鳴る。
パチン。
深雪の服が一瞬で変わった。
露出の多い鮮やかなダンサー衣装。
深雪は真っ赤になる。
「えっ!?」
「ちょっと待って!」
「俺、テレビディレクターなんですけど!」
天使は笑う。
「安心しろ。よく似合っている。」
「その衣はドラゴンの毛で織られた神衣。」
「火では燃えず、氷では凍らぬ、刃すら通さぬ。」
「決戦まで大切にしておけ。」
深雪は少し照れながら頭を下げた。
天使は四人へ微笑む。
「さあ。」
「元来た道を帰れ。」
眩い光が四人を包み込む。
気が付くと、そこは法王庁の教会だった。
法王が穏やかに微笑んでいる。
「お帰りなさい。」
「宿でゆっくり休みなさい。レオンも休んでいる。」
「体力も魔力も、すぐに回復する。」
四人は顔を見合わせ、深く頭を下げた。
「ありがとうございます。」
三角ディレクターのこと誤解してました。
踊り子の衣装凄く可愛いです!
高橋です。




