↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画※毎日20時更新。そんなに全削除して欲しいですか?  作者: ヘタレパンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/137

第108話 遅れたハロウィンパーティー 前編



――精神と時の空間。


 夕方。


 訓練を終えた人々が、あちこちで思い思いに休憩していた。


 最初の頃は、同じ国の者同士で固まっていた。


 人間は人間。


 魔族は魔族。


 地球人は地球人。


 そんな感じだったはずなのに――。


 今ではすっかり様子が違う。


 魔法の話をしながら笑っている者。


 覚えたばかりの日本語を教え合っている者。


 飲み物を片手に、身振り手振りで話している者。


 少し離れたところでは、龍族まで混じって何やら盛り上がっていた。


 パンダはその様子をぼんやり眺めていた。


「……仲良くなったねぇ」


 隣にいたレオンが頷く。


「そうだな。最初とは随分違う」


「せっかく皆んな仲良くなったんだしさ」


「ん?」


「ハロウィンパーティー、みんなでやらない?」


 レオンがパンダを見る。


「……もう終わってるぞ」


「知ってるよ」


「十月三十一日だ」


「知ってるって」


「今は十一月だぞ」


「だから何?」


「…………」


 パンダは胸を張った。


「遅れてやればいいじゃん」


「ハロウィンの日付を変えるな」


「別に法律で決まってるわけじゃないにゃ?」


「そういう問題なのか?」


 そこへ深雪がやって来た。


「何の話してんだ?」


「ハロウィン」


「終わったぞ」


「お前もレオンと同じこと言うにゃよ」


「終わったものは終わったんだよ」


「でもさ」


 パンダは周囲を指差した。


「せっかくこんなに仲良くなったんだよ? 一緒に訓練して、ご飯食べて、遊んでさ。だったら一回くらい、みんなで馬鹿みたいに騒いでもいいと思わんかにゃ」


 深雪が周囲を見回す。


「……まあ、それはそうだな」


「だろ?」


「でも衣装は良いとして、飾りはどうするんだ?」


「あ」


 パンダが止まった。


 数秒後。


 にやりと笑う。


「あるじゃん」


「何が?」


「コヌトコ」


     ◇


 ――異世界・コヌトコ。


 数十分後。


 パンダ、レオン、深雪、ポルガン、真央、リリー、ランスロットたちは、巨大な倉庫型店舗へやって来ていた。


「ハロウィンの商品?」


 店員が困ったような顔をする。


「はい。ございますけど……」


「やっぱ残ってる?」


「……かなり」


「そりゃそうだろ」


 パンダは即答した。


 店員が苦笑する。


「ほとんど売れなくて……」


「ハロウィン知らない奴らにハロウィングッズ売って、なんで売れると思ったんだよ」


「それは……」


「誰だよ、仕入れたの」


「地球の商品を参考にしまして……」


「参考にするところ間違ってるにゃ」


 深雪が笑いを堪えている。


「お前が異世界日本化するって言ったんだろ」


「日本化にも順序ってもんがあるにゃあよ!」


 店員に案内され、一行は売り場の奥へ向かった。


 そして――。


「おお……」


 ポルガンが足を止めた。


 巨大なガーゴイルが立っていた。


 二メートルを優に超える巨体。


 大きな翼。


 鋭い角。


 不気味な顔。


 しかも三体。


「……魔物ですか?」


「違うよ。飾り」


「これを飾るのですか?」


「うん」


「なぜ?」


「ハロウィンだから」


「ハロウィンとは……?」


「ほらな」


 パンダが赤ベストを着た店員を見る。


「そりゃ売れないだろ」


 ランスロットがガーゴイルへ近づいた。


「妙に出来がいいな」


「動くらしいよ」


「動く?」


 パンダがスイッチを入れた。


 ガーゴイルの目が光った。


『グオオオオオオオ!!』


「うおっ!?」


 ポルガンが飛び退いた。


 リリーが真央の腕を掴む。


 レオンが眉をひそめた。


 ランスロットだけが平然とガーゴイルを眺めている。


「なるほど」


「何がなるほどにゃ?」


「弱そうだ」


「戦うなよ! 商品だから!」


 パンダは慌ててガーゴイルの前へ立った。


「壊すなよ! 四万円くらいするんだから!」


「ヨンマンエン?」


「地球のお金」


「金貨4枚にゃ」


 ポルガンは改めてガーゴイルを見上げた。


「それなら本物の魔物を捕まえてきた方が……」


「そういう発想だから売れないにゃよ!」


 さらに奥には、骸骨。


 カボチャ。


 蜘蛛の巣。


 墓石。


 お化け。


 大量のお菓子。


 ハロウィン用に仕入れた飾りは、ほとんどそのまま残っていた。

逆に衣装だけは、異世界人にも面白がられ、すでに完売したらしい。


「衣装はどうする?」


「お着替えカメラがあるにゃ」


「なるほど」


「ランスロットも使うかにゃ?」


「ヤグルト2000を飲むのをやめればいい」


「そっち!?」


 パンダが思わず叫んだ。


 現在のランスロットは、ヤグルト2000のおかげですっかり若々しいイケメンの姿を取り戻している。


 だが、飲むのをやめれば――。


 元の恐ろしい怪物のような姿に戻る。


「一日くらい飲まなくても構わないだろう」


「ハロウィンのためにヤグルト2000やめる奴、初めて見たにゃ」


「衣装を用意する必要もない」


「それ仮装じゃなくて元に戻ってるだけだから!」


 深雪が吹き出した。


「最強じゃねえか。着替え時間ゼロだぞ」


「しかも無料にゃ!」


 ランスロットは満足そうに頷いた。


「では決まりだな」


「ミカエラに怒られても知らないにゃよ」


「翌日からまた飲めばいい」


「健康食品の使い方が完全におかしくなってるにゃ……」


 レオンが売り場に残った骸骨の置物を眺める。


「パンダ、僕は何にするんだ?」


「レオンにはもっと格好いいの考えるにゃ」


「僕もやるのか?」


「当たり前にゃ!」


「聞いてないぞ」


「今言った」


「……」


 パンダは次々と商品を見ていく。


 売れ残った大量のハロウィングッズ。


 これだけあれば十分だ。


 いや。


 これだけ人数がいるのだから、足りない分は自分たちで作ればいい。


 衣装なら、お着替えカメラがある。


 魔法使いもいる。


 芸術家もいる。


 料理人もいる。


 裁縫が得意な者だっている。


 そして何より――。


 一緒に何かを作れる仲間が、今はたくさんいる。


「よし!」


 パンダが振り返った。


「これ全部買うにゃ!」


「全部?」


「売れ残って困ってるんでしょ?」


 店員が勢いよく頷く。


「はい!」


「返事早いな!」


「本当に困っております!」


「じゃあ決まり!」


 パンダはガーゴイル三体を指差した。


「こいつらも連れてくにゃ!」


「三体全部か?」


「入口に並べる!」


 深雪が笑った。


「何人か本物の魔物だと思うぞ」


「その時は値札つけるにゃ」


「値札?」


「四万円って書いとけば誰も攻撃しないにゃ」


「異世界人に円の価値わかんねえよ」


「あ、そっか」


     ◇


 その日の夜。


 精神と時の空間に、突然の放送が流れた。


『えー、皆さんにお知らせします』


 パンダの声だった。


『ハロウィンはとっくに終わりましたが――』


 ざわっ。


『せっかく皆んな仲良くなったので、遅れてハロウィンパーティーをやります!』


 各所から歓声が上がる。


『仮装は自由! 参加も自由! お菓子あります! 食べ物あります! 酒もあります!』


「酒!」


 どこかで龍族が叫んだ。


『ただし酔っ払って暴れた奴はレオンに怒られます!』


「なぜ僕なんだ」


 放送設備の横でレオンが呟く。


『それから、衣装や飾りを作りたい人は自由に参加してください。魔法使ってもいいです。ただし人を吹っ飛ばす魔法は禁止です』


「当たり前だ!」


『あと入口にガーゴイルが三匹いますが、敵ではありません』


 精神と時の空間が静まり返った。


『コヌトコで売れ残った商品です。攻撃しないでください』


「そこまで説明する必要あるか?」


 深雪が腹を抱えて笑っている。


 パンダは最後にマイクへ顔を近づけた。


『じゃあみんな、思いっきり遊ぶにゃ!』


 歓声が響いた。


 国も違う。


 種族も違う。


 生まれた世界すら違う。


 少し前まで、名前すら知らなかった者たちだ。


 それでも今は、一緒に笑える。


 だったら祭りの日付が十日や二十日ずれたところで、どうでもいい。


「さて」


 パンダはマイクを置いた。


「パンダ、何の仮装しようかな」


 レオンが答える。


「パンダでいいんじゃないか?」


「普段着じゃねえか」


「ランスロットと同じだな」


「一緒にすんにゃ!」


 少し遅れてやって来たハロウィン。


 異世界史上初の、少しおかしなハロウィンパーティーが始まろうとしていた。




パンダにゃ!

ハロウィンパーティーはいつやっても楽しいにゃ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。