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陰謀

「うーん……単に娘の話を聞いてまとめてるだけじゃなくて?」


 考えすぎではないか、という私の姿勢に対し、ピグトニャはかぶりを振る。


「だといいんだが……ちがう。根拠がある。天啓ってもらっただろ?」

「もらった」

「……具体的には俺からも言えないが……姉さんの天啓を使ったと思わしき観察記録がある。それも、二人とも寝てるはずの時間に試してる」

「え?」


 ピグトニャは自身のタブレットをスクロールしながら話を続ける。中身は見せてくれないのかと思ったが、どうやら部外秘らしい。


「天啓は……本人の許可なく第三者に話すわけにはいかない。信心深い人なら尚更……ショックを受けるからな。だから見せられない」

「そっか」

「でも俺と父さんは知ってる。姉さんの天啓を……そして、それがもたらす利潤を。目的はわからないが、父さんは明らかに、姉さんを使って何かをしている。姉さんが自主的にやるとは思えない」

「……チェレーゼの意思じゃないという根拠はあるの?」

「いや……はっきり言えば、ない。でも、姉さんみたいな信心深い人が……指示なしにこんなことはしない。父さんはよくて姉さんに指示をして何かを企み、悪ければ……姉さんの体そのものを操っている。俺は後者だと睨んでいる」


 緊張感で喉がカラカラに乾いて、体の粘膜という粘膜がくっつきそうなほどだった。誤魔化すために、目の前のポットからお茶を入れて飲もうとする。ピグトニャが「あ」と呟いたが時すでに遅し、私は想定外の味の濁流に盛大にむせた。ポットの中にはあのあり得ない味のお茶が入っていたんだった。忘れていた。哀れんだピグトニャがミネラルウォーターのボトルを差し出してくれたので、それを飲んだ。


「死ぬかと思った……そんで、それやめさせられないのかな」

「すぐには難しい。とりあえず、命や尊厳に関わる内容ではないし、今すぐに危険が及ぶことはないだろうと推定できる」

「そう……」


 ひとまず安心するが、中身がわからない以上、なんだか不気味なのには変わりない。


「ただ、俺は二つの理由で警戒してる。ひとつは、姉さんさえ気づかずに身体操作されている可能性が高いこと……眠っているとはいえ、生きている人間の体の操縦権を奪うのは、世界有数の人形遣い(パペッティア)が相当数関わってても難しい。誰かの天啓か……父さんが人知れず新たな技術を開発したのかはわからない」

「ふむ」

「もうひとつ……父さんも、自主的にこういうことをする人間ではないってこと。人の監視もそうだが、姉さんのことは溺愛しているし……愛する人を、こんな……物のように使う人じゃない。何か大義がないと。つまり……」


 姉さんのこと()溺愛している。その意味深な言い方が引っかかる。これが、大会後から抱き続けている、彼らの親子関係への違和感の正体なのだろうか。けれど、今大事なのは、そこではない。私は黙って、次の言葉を待った。


「この国で、何か巨大な陰謀が渦巻いてる。姉さんの体を使った」

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