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76、運営は何をやってるのかしら?


早いもので、すぐに聖女誕生祭の日となってしまった。一週間前から花嫁か!と言うほどの女磨きを侍女達にされて、今日は実家であるメイリーン家であの真紅のドレスを身にまとっている。

慌ただしく侍女が動くなかで、着飾られる私は少し意識を飛ばした。

あの聖女事変についてだ。


アイナ嬢は私を助けたかったと話した。しかし、私の知る限りゲームのイベントは起こっている感じはしないし、レオン様ルートなのにレオン様からの好感度は地の果てまで落ちている。

何より、ゲームでは1年生の学年末パーティーで断罪イベントが起きるはずなのだ。数字だけ見れば、1年間だけって早くない?と思うだろうが、そんなことも感じさせない程に濃いイベント内容と酷いエリザベスのイジメだったためそれほど気にならない。しかし今は2年生の春も終わる頃。どういうこっちゃ運営よ。


「お嬢様、コルセットを締めますので気合い入れてください」

「おぉ……頑張ります」


今朝の美味しい朝食を吐き出しかけたところで、また思案する。そうでもしないと苦しみに耐えられない。


彼女は『私とレオン様がこのままくっつく』ことが私の死と直結していると言っていた。しかし、どちらかというと『ヒロインである彼女とレオン様がくっつく』ことが私の死と直結しているはずなのだ。もし彼女が私と同じ転生者だったりしたら、そんな勘違いは起きないはずだろう。

……いや、もしかしたら私の為という大義名分を振りかざして堂々と盗ろうという魂胆からの演技かもしれない。

私が転生者だからこの世界には転生者は私だけだと思っていたのだが、そんなことはないのかもしれないな。もしその人がこのゲームのハードプレイヤーだったとして、ヒロインガチ勢だったとして、ヒロインに転生していたとしたら……


「ウグッ」

「お疲れ様でしたお嬢様、ドレスを着せて行きますね」


それに、そろそろ聖乙女教についても動かなければいけない。最近は、見目だけはいい攻略キャラを侍らせているとして、影で『カルラ伯の母猫』と言われる始末だ。


ちなみに、カルラ伯は『猫伯爵』として有名な方だ。領地経営に力を入れていて財産も多く、奥様が猫好きだということで、元は番の猫だけだったものの、今では屋敷には100を超えるくらいの猫を放し飼いにしているという。これも『猫脱走防止の結界魔道具』と『有り余る財産』がなせる技である。

今はそうならないようにカルラ邸では、仔猫を増やしすぎないように雌猫を極端に少なくしている。そんなわけで数多の発情期の雄猫達を産んだ母猫ということは『誰彼構わずに色香を振りまくビッチ』という意味の隠語である。それを知った皆はすっごい怖い顔をしていたから……私は全てに無関係というスタンスでいようと心に誓った。


「お嬢様、お化粧しますのでその百面相お止め下さい」

「……サラって私に辛辣過ぎない?」

「ですがこの晴れ舞台で間抜けな顔を晒したくはないですよね?」

「……」

「ね?」

「…………はい」


サラに勝てそうな気がしない。







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