(あたしじゃないけど)料理をしよう
ん~ もう少し早く書けるようになりたい。
「なんか面倒なことになりましたねぇ。」
自業自得だろ。
大商人のグラディンさんが王都に来たあたし達を歓待してくれて、宮廷仕立ての料理を出してくれた。ただ問題は宮廷料理というのがあたし達の感覚で「美味しい」かどうかはまた別だったりする。
そこは想定内だったのだが、ドヤ顔でグラディンさんが出そうとした貴重な魔物肉――ジャイアントワームを見せびらかそうとしたのだが……
大変説明しづらいことに、そのジャイアントワームってチームグリフォンが倒したのよね。あたしは囮だったけど。
そんなわけで、そのことを知ったグラディンさんが悶絶して「なんか旨いもん食わしとくれ!」と順か逆かは知らないがキレたので、仕方なくジェルが一肌脱ぐことになった。
まぁ、実際脱いだのはいつもの白衣で、厨房でエプロンを借りて装着するという珍しい姿が見られた。
見学者はあたしを筆頭にカエデにグラディンさんにソフィア。そしてこの建物のコックだ。若者と中年くらいの年の人だが、こうやって他人が厨房に入るのはどうかと思ったが、良くあることらしいので気にしなくても大丈夫です、とのことだ。
この人のちゃんとした料理を今度は食べさせて欲しいものだ。
「さて、味付けの強い肉はもったいないので野菜と一緒に煮込んでシチューっぽくしましょう。後は日持ちしそうなものは…… パンサー、ちょっと。」
外に通信することしばし。
汎用箱型作業機械がやってきたので、いくつかの料理を手早くまとめて皿の上に乗せると、そのまま外へ持っていく。
「なんや、アレも食事するんやったか! 悪いことしたなぁ。」
……するのか。あたしも知らなかったよ。
「いえ、そうじゃなくて、いくつかは明日の朝食用に保存しておくだけです。」
「ほぉ?」
グラディンさんがどこか嬉しそうな声を出す。
「ということは、朝食も期待してもよいのじゃな?」
はた、と手を止めてジェルが遠くに目を向ける。
「我々はどこで道を誤ったのか。」
たぶんカエデに連絡を取ったところだと思うが、でもそうなるとこの王都で路頭に迷う未来しか見えてこない。
そんなことをボヤキながらもジェルの手は止まらない。肉の味の濃い表面部分をこそぎ落としては鍋に入れて野菜と一緒に煮込む。残った肉は薄切りにして、さっと茹でた野菜と一緒にする。と次々と料理をリメイクしていく。
「やるのぉ。」
「なんかジェラードはん、思った以上でビックリやわ。」
「男性なのにそこまで料理ができるとは。」
なんかまた誰かさんの好感度が上がったような気がする。……あたしは上がってないな。うん。なんでか、までは考えない。
「さて、最後はこいつですが……」
眼鏡のフレームを軽くトントン叩いて、真っ赤な肉の塊を見る。
「ふむ、色々問題はなし。脂肪もほとんどないが肉質は柔らかそうですね。やはり魔素とやらの影響ですか。」
魔素はこの世界に広がる不思議な物質?らしい。それがありとあらゆる物(生物・非生物問わず)に含まれているらしい。その辺はジェルが調査中らしく何とも言えない。で、とりあえず魔獣魔物の肉は死んだ後も魔素が含まれているため、美味になったり長持ちしたりするそうだ。
まぁ、残念ながらジェルとあたしはタイミングを逸したので、このジャイアントワームの肉は翌日の朝にちょこっと食べたくらいだ。それでも大変美味しゅうございました。
「脂も少ない赤身肉っぽいですし、ここはシンプルな焼き方をしますか。おそらくアイラやリーナも同じようにしたでしょうし。」
手早くフライパンを温めると、牛脂っぽいものを見つけたので、それを溶かしてガーリック(ぽいもの)を薄切りにしたものを入れて、色が変わって香りが上がるくらいまで温める。
そこに胡椒だけ振って適当にカットしたジャイアントワームの肉を入れて、片面を数分焼くと、ひっくり返して数分。熱源が薪で調整ができないので、フライパンを火から降ろし、濡れた布巾の上に置いて、適当な物で蓋をして休ませる。
「……こんなもんですかね?」
フライパンから出した肉を、一口大にカットして、皿に並べてパラリと塩を振る。
表面はいい焼き色で、断面はうっすら火が通ってピンク色になっている。……ヤバい、ジェルが作ったくせに美味しそうだ。
厨房の中のおそらく賄い用と思われる食事スペースに皿を置いていくと、皆が席について今か今かと待っている。
「さぁ、どうぞ。」
ジェルがそう促すと、次々にジャイアントワームステーキにフォークが伸びる。
おっと、出遅れたか。でもジェルが今度は鍋の中身を深皿に注いでいるので、なし崩し的に給仕を手伝うことに。
別にいいんですよ、と目で言ってくるが、単なる気まぐれなので気にしないで欲しい。いや、勝手に貸しにしておくか。
テーブルの四人は妙に静かだが、お口に合わなかったのだろうか、と思ったが、普通に逆で、ひたすら黙々と肉を咀嚼していた。
ありゃ、あたし達の分が無くなりそう。
「……まだ肉はありますから、もう少し焼きますか。」
ラシェルも食べたいでしょうし、とジェルが人を勝手に腹ペコキャラに認定しながら、またフライパンを温め始めた。
お読みいただきありがとうございました




