御馳走をいただこう
(ゲームをする)時間が欲しい…… 我に(ゲームをする)時間を……
「まぁ、大したもてなしではないがな、というのも嘘くさいが、まぁ、儂も驚かされてばかりじゃあ癪での。」
デカい食卓の上には豪勢な料理が並んでいた。あたし達の世界ならともかく、おそらく高価と思われる真っ白な皿に乗っている。
何となく分かる物もあるが、見たことも無い物もあって、リーナちゃんがいたら喜んだろうなぁ。
「狐娘が持ってたレシピは凄かったが、敢えてこの世界の伝統の料理で勝負じゃ。」
へぇ。
そうなると、おそらくは王族とかが食べるような食事なのだろう。ただ、歴史とか振り返ると、あんまり期待できないのよねぇ。そもそも普段の食事がリーナちゃんの、というのがハードルを高めている。
「じゃあ、お言葉に甘えていただきますか。」
「うむ。堪能してくれぃ。」
それではいただきます、と。
「これは……!」
見知らぬ人ばかりで、やや発言が控えめだったソフィアが驚きの声を上げる。
「こんなに香辛料を使うなんて!」
……あ~ 確かにそうだ。
アイラも最初言ってたが、そもそも調味料や香辛料がかなり希少だ。そうなると「豪華な料理」というのは味が濃く香辛料たっぷり、ということになる。
そして衛生観念がまだ未発達で、腐敗とか腐敗のメカニズムもよく分かっていない。となると、味付けを濃くする・香辛料をたくさん使う・火を通す、が経験則的に分かっていることで、生肉・生魚を食べる方法は発達していないようだ。
その結果、火が通りすぎて固くなった肉にゴテゴテに甘辛くなった料理の完成だ。……保存食としては良いのかも知れない。
「ふむ、」
ジェルも同意見のようで、考えるような素振りを見せる。
「どうじゃ、さほど旨くないだろ?」
「……え?」
ソフィアが不思議そうな声を返すが、あたしも同感だ。
「それこそ、王族なんて毒を入れられることを心配して、温かい料理を食べるのもままならぬ。聞いた話じゃが、王家の人間は昔から城下町に抜け出して、買い食いをしまくっているそうじゃな。」
「…………」
ソフィアが気まずそうにそっぽを向く。それこそ第二王女が城を抜け出すとしたら、王女付きのソフィアが付いていくのは目に見えてる。ただ、女性としては背の高い彼女がついていったらバレないだろうか? ……ああ、それも込みで暗黙の了解、って奴かも。知らぬは当人たちのみ、ってことで。
「おそらくお主も、こ奴らの店で食べたろ? あれと比べるとどうじゃ?」
「う~ん、確かにあの店に比べると、ただ味のキツいだけの料理やなぁ。」
「……確かに。」
カエデが言うと、ソフィアもコクコク頷く。
「そない聞いたら、アイラとリーナの料理食いたくなったやんかー」
そういやぁ、かれこれ二週間くらいは食べてないことになるか。おそらくだが、暗黒馬車に積んであった保存食も食べ尽くしたに違いない。
「それで思い出したわぁ。なぁジェラードはん、保存食でええから持っとらん?」
「残念ながら。それほど保存食を必要とする予定でも無かったですし、遠くに来たからには現地の物を食べてみたいものでして。」
「さよか……」
へにゃん、と狐の耳と尻尾をへたり込ませるカエデ。
「しかしまぁ折角だから食べましょう。……少し直せばもう少し食べやすいですかね?」
ポツリとつぶやくと、狐と狸の耳がピクンと動く。
「ジェラードはん…… 料理できるんか?」
「意外と言えば意外だが、確かにできてもさほどおかしくないか。」
「これはこれで美味しいと思いますが……」
三者三様の反応が返ってくる。
「何か妙な期待されておりますな。」
自業自得だろうが。でもまぁ、食べやすくなるならそれに越したことはないか。
「ただ、人様の歓待の中、そういうことをするのはいささか礼を逸しているかと。
それに、もう一つ何かお見せしたいものがあるようですので、まずはそちらに期待しましょう。」
「お、そうであったな。」
ジェルに言われて、グラディンさんが心なしか嬉しそうな声を出す。
「なんか最近市場に出た魔物の肉での。北の方の町で……」
不意にグラディンさんが「あれ?」って顔をする。
「北の方……」
ちょっと虚空の方を見て、あたし達に視線を向ける。微妙に顔が青ざめたように見えた。
「まさかとは思うが、お主ら…… 最近、巨大な魔物を倒してはおらぬだろうな?」
最近…… 一番の最近だと、昨日(あたしじゃない人たちが)翼竜とやらを倒したはずだが、さすがにそれは間に合わないだろう。そうなると…… ああ、ハンブロンの北の鉱山町で巨大ムカデと巨大ミミズを討伐したっけ。
倒した記念にちょっとばかりいただいたわけだが、ちょっと敬遠したくなる見かけの印象と違って、しっとりとした感じの旨みの強い肉だったっけ。
ふとあの味を思い出して、頬が緩む。
「のぉ、ラシェルよ。聞いても良いかの?」
なんでしょうか?
「その…… なんだ、ジャイアントワームは旨かったのかの?」
思わずジェルと顔を見合わせて、視線でたくさん語り合う。ここはどういう態度をとるのが最善か。いや、ここは……
「「美味しかったですよ。」」
次の瞬間、グラディンさんが頭に手をあてて思いっきり仰け反って絶叫した。。
「またお主らかーいっ!!」
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