歓迎されよう
……休みが70年ほど欲しい。
その前にお金だな。よし、宝くじだ! などと意味不明な発言を繰り返し……
「なんやこれは!」
「なんじゃこれは!」
早速絡まれた。
ピックアップトラックのワイルドパンサーを建物の前につけると、待ち構えていた狐獣人のカエデと、狸獣人のグラディンさんがパンサーにとりついて、外装というか装甲をバンバン叩く。
〈痛くはありませんが、程々にしてもらえると助かります。〉
「喋った!」
なんかこー 話が進まないので、ウィンドウの色を透明にして、運転席のドアを開く。
「おわっ! やっぱジェラードはんか! なんか久しぶりやな!」
相変わらずの可愛いと美人のハイブリット狐が、重厚な胸部装甲を振動させている。……外れてしまえ。
「ぬぅ…… 狐娘の暗黒馬車もすごいが、こいつはそれ以上…… いや、そもそもの考え方が違うのか。」
カエデほどではないが、なかなかのナイスバディな狸の獣人のグラディンさん。カエデ曰く、姿を変えることができる能力で老婆から今のピチピチボディになったらしいが、老人口調はすぐには直らないそうだ。で、この建物は「グラディン商会」の本店の離れらしい。名前が同じなので何となくわかると思うが、このグラディンさんが創始者だそうだ。ホントいくつなんだろ?
「なぁ、あんま聞きたかないが、ハンブロンからどれくらいで来たん?」
「朝は『雄牛の角亭』におりましたな。」
カエデが地面に手をついてがっかりなポーズをとるが、あれを正面で見るとなかなかのボリューム感なんだろうな。
「ふむ、搭載量は馬車には劣るが…… いや、速度を犠牲にして、別の荷台を曳けばもっといけるか……」
グラディンさんはブツブツ考え込んでいる。
まぁ、うちにはもっと大量輸送に向いている奴がいるんだが…… 教えない方がいいか。
一応説明しておくと、シルバーグリフォン号の艦載機に大型トレーラーがいるわけよ。コンテナを入れ替えれば戦闘や輸送、他の艦載機の補修基地にも早変わりだ。
本体はともかく、コンテナがデカいから来るのは次の次くらいかなー
「とりあえず、あまり他の人に注目されないような止める場所に案内して欲しいのですが。」
あと、できれば日当たりの避ければなお良いですな、と付け加えておく。
ホント、エネルギー問題は困る。あたし達のテクノロジーは基本的に電気が無きゃ始まらない。太陽電池パネルやペンキで細々発電をしているが、やはり心もとない。シルバーグリフォン号まで戻れば、ほぼ無限にチャージができるわけだが、これが普段使いするには微妙に遠いと言えば遠いわけで。
何か画期的な発電方法を用意しませんとね、というのがジェルの弁だ。
それはともかく。
外で立ち話もなんだし、それこそソフィアのことも二人に紹介しないといけないし、とそれこそもう時間は夕刻だ。そういやぁ、こちらが何度か御馳走したわけだから、今度はこちらが驚かされてもいいよね?
土産話はたくさんありますので、とジェルに言われて、渋々と言った感じでグラディンさんが建物内に案内してくれた。
ちなみにパンサーは馬車の待機所みたいな小屋を指示されて、さっそく搭載されていた箱型汎用作業機械が発電用の太陽電池シートを小屋の上に張って電源の確保をしていた。
「最低でも数日はこっちにおるじゃろ? まぁ色々儲けさせてもらっておるからの。歓待とまではいかんが、歓迎するのでゆっくりしておくれ。」
「本音は?」
「お主らみたいな儲けの種、誰かに渡すわけになかろうて、ってやかましいわい!」
なかなか素敵なノリツッコミのグラディンさんだが、ジェル相手に変な小細工をするよりは冗談交じりでも素直に言った方が益になると理解したのだろう。
微妙にタイミングが合わず、やっとパンサーから降りたソフィアにグラディンさんが目を細める。
「それと…… お主、直接会ったことは無いが、話は聞いたことがある。
……ハンスの坊主は元気しておるのか?」
「! は? 坊主…… ハンス様、のことですよね? 老齢ながらも意気軒昂で若い騎士たちの訓練に励んでおります。」
「……ふぅむ。少し前に療養していた、と聞いたが?」
「ええ、すっかり回復しております。」
「息災ならよい。
さて、さっきも言った通り、大したもてなしはできんが、部屋を用意させよう。何部屋必要じゃ?」
ジェルが一瞬こちらを見て、少し悩むように視線を彷徨わせてからグラディンさんに答える。
「二部屋で。私と女性二人で一部屋ずつでお願いします。」
お。冷静に考えればそうだが、今までのようにあたしとジェルが一部屋というのは外聞が悪そうだ。別に慣れた慣れないの話ではないんだけど、大丈夫かなぁ……
「面白くないのぉ。まぁ、余計なことを口にして、この建物を壊されてもかなわん。」
「何を言いたかったのか、聞いてみたかったですな。試したい道具もあるので。」
フッフッフ、と怖い笑みを浮かべ合う二人に、あたしとカエデでチョップを叩きこんで黙らせる。
その間にも、絵に描いたようなメイドさんがワラワラと近づいてくると、あたし達の荷物を運んでいく。その中の一人のメイドさんがグラディンさんに近づき耳元で何事かを囁くと、グラディンさんの顔が明るくなる、というか、悪いことを思いついたような顔になる。
「これから夕餉の準備を始めるからしばし待たれよ。
今宵は珍しい食材が入ったそうでの。お主らには食事で色々驚かされたからな。王都流の歓迎を楽しみにしてるがよいぞ。」
そして、客間に案内さえたあたし達は、紅茶と茶菓子をいただきながら、大して身のない雑談をして、夕食の時間が訪れるのを待つことになった。
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