小休止しよう
むぅ、出遅れ。
〈そろそろ一度休憩されてはいかがですか。残り半分くらいですからちょうどよい頃合いかと。〉
「半分……?」
ワイルドパンサーの声にギルさんが眉をひそめる。朝に出て今は昼くらい。となると、ここで一休みしても夕方には着けるか?
「半分て半分か?」
「半分だな。」
王子コンビが漫才じみた掛け合いをする。どうやら微妙に信じられないようだ。
「昼までで王都までの道のりの半分……」
ソフィアはどこか遠い目をしている。
そりゃそうか。
王都からハンブロンの町までくるのに普通通りの手段をとってきたのだろう。そうなると一週間くらいかけてきたんだろうな。あ~ あの第三騎士団がいたんだから、余計時間は長く感じたことだろう。
そういやぁ、狐の獣人のカエデも、ジェルの暗黒馬車での移動の何が一番良かったって、温水シャワーとトイレが使えるってことだとか。
ちなみに今パンサーにも積んでいるが、有機物をナノマシンで分解し臭いも出ず、シャワー機能もあり、しかも女の子にも嬉しい光学迷彩とサウンドキャンセラー付きだ。……あー ちなみにまだ発動したことないから威力は不明だが、自動防衛装置もついているらしい。
そんなわけで特に反対意見も出なかったので、街道から離れたところに平地を見つけて小休止。小一時間は停車する予定なので、荷台に積んでいる箱型汎用作業機械の手(?)を使って太陽電池パネルを開いて充電を開始する。
まぁ、エネルギーに余裕はあるが、充電出来る時にしておかない理由はないわけだ。
「…………」
ギルさんが動いているキューブや開いたパネルをマジマジと観察しながら、小さく何か呟いている。なんかこー 分析じみた魔法があるんだろうか? あ、でも小さく首を振っているので、多分分からなかったのだろう。
パネルを広げ終わったキューブたちが今度は簡易テーブルと椅子を広げる。
「へぇ、ギル見てみろよ。この精密な細工。ここまでは無理だろうけど、近いものは作れないか?」
「ふむ、材質が金属なのは分かるが、これは本当に鉄か?」
王子と二人して簡易テーブルや椅子をつついてみたり、椅子に座ってみたりする。
うちにはデカくて重い奴がいるので、耐荷重は結構大きくしている。というか、ジェルの設計なので、椅子一つでも一トンくらい耐えられるんじゃないか?
テーブルをセッティングしたキューブは今度は水を求めて近くの森に入っていく。
んー、と身体を伸ばしているソフィア。スタイルが良いというかナイスバディだから、実にサマになる。がっでむ。
「実に良いですね。馬車の何倍も乗りやすい。身体も痛くならない。暑くも寒くも無い。」
ジェルは他のみんなが降りている時も、運転席でまたチマチマ調べ物をしている。
水を汲みに行ったキューブたちが戻ってきて、お湯をポットに入れてリーナちゃんのお弁当を並べてくれた。
コンコン。
「ジェル、お昼。」
「お、これはすみません。」
手を止めてパンサーを下りるジェル。何か面白いことでもあったんだろうか。特に何も言わないので「まだ語るべき時ではない」ってとこか?
あたし達もテーブルに着くと、さすがに騎士とか王族は礼儀正しいのか、ちゃんとあたし達を待っていた、と思いかけた。微妙に王子の顔が歪んでいて、ギルさんが怖い顔をしているので、テーブル下で激戦が行われているのかも知れない。
なんか自業自得だが可哀そうな気もするので、率先してリーナちゃんから渡されたバスケットを開く。
中身はそれこそ移動しながらでも食べられるように、とバケットサンドだ。中身は具だくさんでメインの具はロックバッファローのステーキだ。ちょっとタフに思えるが、これが一緒に挟んである野菜のおかげでペロッといけてしまう。……ある意味とても恐ろしい。
ジェルはともかく、他の三人の顔を見れば、好評だったのは言うまでもない。材料が良いのもあるが、やっぱアイラやリーナちゃんの腕が食材の良さを数倍に引き上げているんじゃないだろうか。
ただ、サンドイッチの味の驚かれた後は、セラミック製の皿やカップ、ついでに保温ポットに興味が行ってしまった。ちなみに皿は銃弾も跳ね返すくらいの強度がある。胸ポケットに入れておけば「こいつのおかげで助かった」がリアルにできる。やらないけど。
保温ポットも水筒代わりに使えるし、熱いのも冷たいのも同様に保温できる。ちなみに手榴弾くらいでは傷一つつかない。
……いい加減、日用品に無駄な強度を与えるの、どうにかならんか? 長持ちしていいと言えばいいのだが。
「これは欲しいな。軽いし薄いし丈夫で、水も染み込まないようだ。」
「これは作れるものなのか?」
王子が欲しがるので、一応程度にギルさんが聞いてきた。
「ん~ おそらく無理でしょうね。」
そう答えるしかないわな。
シルバーグリフォン号まで戻れば作れるだろうが、異世界では材料はともかく、作るのは無理か? あ、でも「魔法」って物があるから、高温高圧もある程度作れるのか? とはいえ、そうなるとギルさんみたいな凄い魔法使いならどうにか?
「検証の必要がありますが、出来たとしても手間が割に合わないかと思われます。」
「なるほど、錬金術みたいなものか。」
「そんな感じです。
まぁ、続きがあるなら移動しながらにしましょう。」
そうだな、とギルさんが締めて後片付けを(キューブ)が済ませると、再びワイルドパンサーに乗り込んで出発した。
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