最後の後始末(その6)
9月6日午前3時。
何で目覚めたか分かりませんが、目が覚めると同時に揺れを感じ、一瞬遅れてスマホが緊急地震速報のアラームを鳴らしました。
長く激しい揺れ。寝ている横に本棚があるので、寝ながらw手足で一生懸命本棚の上からデカベースロボとスーパーデカレンジャーロボにデカレンジャーロボ(ダブって持ってます)が落下してきました。頭の上じゃなくて幸いw
とにかく尋常じゃないレベルの地震が起きたことが分かったので、慌てて居間のテレビをつけて、テレビを見ている最中に地震発生から十数分で停電。おそらく長引くと感じて、少しツイッターで情報収集をしてから寝ました。
そして翌朝。停電は復旧せず、ネットの繋がりも悪く、情報もろくに集まらず、ガスと水道が出るのに感謝しながら過ごしていると、さすがにこの日は自宅待機。
とはいえ、停電が復旧しないとスマホのバッテリーもいつかは切れます。モバイルバッテリーも半分くらいしかなく、どこまでもつものか。また夜が来て、蝋燭をつけましたが、結局できることも無くその日は早めに就寝。
翌日は少しずつ電気が復旧しましたが、それでも信号は二割ほどしか点灯していなく、ヒヤヒヤしながら職場へ。職場は電気が回復していたので、しっかり充電w
家に戻ってもまだ停電のままで日が落ちたらできることも無く、ホントに早めに就寝。そして夜の9時ごろに街灯がついたのが見えて、停電が終わったことを知りました。
……いやー そんな中、執筆できんかったわい。わっはっは(ぉぃ)
運よく大事になりませんでしたが、正味42時間の停電は正直辛かったです、はい。
まぁ、もっと大変なところがあるのですから、そんなに喜んでもいられないのですが。
「よぉ、呑んでるか?」
「「「サー、イエッサー!」」」
飲みの場なので、いつもよりも砕けた感じで返すテオ達。その返しに微妙に渋い顔をするカイル。
「なぁ、もう俺はお前たちの教官でも何でもない。それこそ男と男の仲だろ?」
「それはそうなのですが……」
少し口ごもってから、テオがアルコールの勢いもあって意を決して言った。
「我々はカイル教官を戦士として、男として尊敬しています。まだ肩を並べられるほどの自信がありません。」
そう言われて、ふぅん、と困惑とそれにちょっと嬉しさの混じった息を漏らす。
「言いたいことは分かった。
が、俺がまだ教えてなかったことがあったようだ。」
重々しくウンウンと頷くカイルに、テオ達が背筋を伸ばす。
「いいか、よく聞け。
一つ! 酒の前では皆平等だ。王様だろうが平民だろうが関係ねぇ。楽しく酒を呑む奴は皆仲間だ。」
カイルの言葉をお互い顔を見合わせて考えて、理解したらしい。木のカップを手にすると、それを上に掲げた。
「教官殿の言うことは絶対だ!
だから…… カイルのアニキ、俺と乾杯願います。」
「おう、いくらでも受けるぜ。」
俺も俺も、と列をなす若者たちにニヤリと男臭い笑みをうかべた。
「今日の酒は格別だ! 野郎ども! 呑むぞ! 乾杯!」
「「「乾杯!」」」
「おお、ヒューイ。ちょっといいか?」
ハンブロンの町の冒険者ギルドの副マスターのガイザックがヒューイを呼んだ。呼ばれた席にはコンラッド王国の第八騎士団の団長ハンスも同席していた。
「ジェラードが降りてこんからな。たぶんおめぇが二番目ってことだろ?」
「まぁ、そうだな。」
リーナは性格的に、ラシェルは能力的に交渉に向かない。カイルも交渉ができなくはないが、ヒューイの方が向いてるといえば向いてる。ただ状況によってはジェラードよりもカイルの方が良い結果を生むことがあるので、一概には言えないが。
「リーナちゃん、ちょっと。」
「はい。」
交渉事には弱いが、記憶力には優れているリーナが呼ばれてヒューイの隣に座る。
「で、なんだ?」
「なんだ、って程じゃねぇけどな。
あいつら、どこ行ったんだろうな?」
「あいつら?」
「ほら、第三騎士団の奴ら。」
「ああ……」
テオ達騎士団見習いと第三騎士団の模擬戦は、テオ達が助っ人三人娘の活躍もあって優勢な戦いとなった。相手は結構ズルをしてきたが、それにも負けずに結構一方的に叩きのめした感が無きにしもあらずではあったが。
魔獣の来襲で結果がうやむやになっていたが、そういえばいつの間にかにいなくなっていた。
「この時点で誰も姿を見ていない、となるとおそらくは『逃げた』ってとこか。そうなると、王都に戻るしかないわけだ。……意味ねぇなぁ。」
「ん? どういうことだ?」
ヒューイの呟きにガイザックが問いかける。
「ん? おそらくそれとは別件でジェラードが王都行くみたいだしな。
どうせそいつら、王都に真っ先に戻ってないことないこと吹聴するんだろ? ジェラード、というかパンサーの速度に勝てるわけないだろ。」
「なるほどなぁ。」
一般的に王都コンラッドまでは早い馬車で一週間程度。結構な人数がいるだろう第三騎士団なら余分に時間がかかると思われる。
実際に走ってはいないが、おそらくは半日あれば王都まで行けるはずだ。
「にわかに信じられんな……」
横で聞いていたハンスが渋い顔をする。
「こいつらと付き合ってたら、三日で慣れる。でもまぁ、おめぇはあいつらと戻らなきゃならないんだろ? 残念だな。」
「ん? ああ、そうか…… ソフィアに先行してもらうか。」
「俺も乗っていいのかな?」
「……言い飽きたが、軽率だぞ。」
ローブで顔を見せない男が二人同じテーブルに入ってくる。
「だってお前、転移魔法って手間も金もかかるって言ってただろ?」
「……確かに言ったが、そうでも言わないとお前が人をこき使うからな。」
「そっか、やっぱりそうか。そんな気がしたから少しは遠慮したんだぞ。」
おそらく主従と思われる二人の会話に、一応は「正体」を知ってる三人が顔を見合わせる。
「異邦人の俺が言うのもなんだが、この国ってこんなもんか?」
「俺も今まで直接会ったことが無いしな。」
「ぬぅ……」
老騎士ハンスが困ったように唸ってから、諦めたようにカップの中身を飲み干す。
「よぉし、呑め呑め。」
近くを通った汎用箱型作業機械からガイザックがお代わりのカップを貰うと、ハンスの前に置く。
「「かんぱ~い!」」
わざとらしく明るく振舞う二人に、謎ローブの片方がもう片方に聞く。
「あれ? 俺なんか悪く言われてる?」
「なんか、じゃなく言われてるな。」
「まぁいいか。悪意はないしな。」
「……ホントお前は面倒な奴だな。」
やや苦労性の方の謎ローブが諦めたようにため息をついてカップを空けた。
「しかし、これを味わうためだけに来る価値があるというのが、また癪だな。」
やや自嘲気味に笑うと、新しい酒に口をつけた。
コンコン。
「どうぞ。」
「失礼しまーす。」
一階の喧騒がだいぶ収まった夜更け。ラシェルとジェラードの部屋をアイラが訪れた。
キューブ二段重ねの上にお盆を乗せて、室内に入る。
「ちゃんと食べないと身体に悪いですよ、ってお医者さんに言ってもしょうがないですけどね。」
「これはお手厳しい。」
ちゃんと食えよ、と笑顔の圧力にジェラードが苦笑いを浮かべる。
そしてアイラの目がラシェルのベッドに向く。
「まだ眠ってるんですか?」
「ええ、ちょっと不安でしたので、しっかり休ませることにしました。ちなみにアイラは大丈夫ですか? 『魔力』の消耗があったそうですが。」
「ん~ それは何ともないみたい。」
「そうですか、それは何より。」
少し沈黙が降りて、恐る恐るアイラが口を開く。
「えっと、いくつか聞いていいです?」
「答えられることなら。
あ、ちなみに二人とも寝るときは全裸ですよ。」
「ホント?!」
と、首が音を立てるくらいの勢いでラシェルの寝ているベッドの方を見てから、騙されたことに気づいてジト目でジェラードを振り返る。
「……なんか今の嘘で少し分かったような気がしますが、ジェラードさんにとってラシェルってどういう存在なんですか?」
「随分と大胆に来ましたね。」
とはいえ、本人は真面目に聞いているようなので、茶化すわけにもいかずに、ちょっと考える。
「そうですねぇ…… 私が人であり続けるための『錘』というのはどうでしょうか?」
結構軽い口調で言ったジェラードだが、その意味を噛み砕いたアイラが寂しそうな表情を浮かべる。
「ん~ やっぱり手ごわいなぁ。
でも、ジェラードさんのいた世界はともかく、この世界なら一夫多妻も全然オッケーだから、そのことは憶えておいて。」
ウィンクしながら立ち上がると、何事も無かったかのようにキューブを連れて部屋を出ていく。
「今更ながら、女性は怖いものですな。」
ねぇ? と同意を求めるように一瞬寝ているラシェルに目を向けてから、ジェラードは再びバーチャルディスプレイに向き直った。
長い一日がやっと終わる。
そんなわけで、お読みいただきありがとうございます。
やっと次から新しい章となります。




