やり方は分からないが頑張ってみよう
猛暑が抜けて、普通の夏らしくなったのか、もう秋が近づいてるのか、これから盛り返しがあるのかさっぱり分かりません。
お盆時期はちょっとは休めるかなー
えっと、バカ王子……じゃなくて、ゴルディウス王子、だったっけ。この国の一応第一王子だったはずだが。いつの間に来てたんだか。まぁ、一緒にいるギルさんが凄い魔法使いで瞬間移動とかできるらしいのでひょっこり来たんだろう。
……じゃなくて。
ゴルディ王子は何て言ったっけ? 紐がついている……?
そういやぁ、ジェルが最初から裏があるとか、人為的な、とか言ってたよね。あと、なんだっけ。生息域が違う? ということは「自然」ではないってことか?
いや、元々魔獣が自然な物かどうか、ってこの世界じゃあ一応「自然」か。だとしてもこの数はきっと異常だ。ということは何処からか連れてきたのではなく「召喚」されたんじゃないだろうか?
(!)
ルビィ、あんまり言いたくないかも知れないけど、召喚魔法のことを教えて。具体的には召喚魔法の止め方とか、魔法使いの探し方とか。
(う、うん。えっとぉ……)
……お、よく分からないのか?
(えっと、ルビィはこんな風に召喚したことが無いから……)
ざっとルビィの話を流し聞きをして思考をフル稼働させる。ジェルに相談したいが、それどころじゃないし、ここはあたしだけで、いや、あたしたちだけでなんとかしなくちゃ!
ルビィの召喚魔法は自分の「存在」を代償とするもので、召喚魔法の中でも特に特殊だとか。一般的には魔力を使用して動物や魔獣を呼び出すそうだ。なので魔力が続く限り呼び出し続けられるわけだが、そうなると細かい指示ができなくなる。まぁあっち行って全てを壊してこい、くらいなら大丈夫らしい。
それでも少なくとも召喚術士が魔法を使えない状況にできれば、召喚したものとの「繋がり」を断つことができ、そうなれば少なくとも統率が取れない状況にはなるそうだ。
この「繋がり」というのが魔法的な同調率といえばよいのだろうか。五感を共有して、監視とか難しいことをするなら同調率が高く必要とし、どこそこ言って暴れてこい、と投げっぱなしな指示をした場合は低くなるそうだ。同時に呼び出せる数にも影響し、ゲーム的なキャパシティと考えれば分かりやすいだろうか。
で、ルビィ曰く、視えるかもしれない、ということだ。ただ実際に見えるかどうかは試したこともないし、薄く見えないかも知れないし、見えたとしても跡を追えるかどうかも不明で、全くないない尽くしだ。
でもやろう。大丈夫、どうしてもダメならジェルが何とかしてくれる!
(ラシェルは頼りすぎなの。)
ルビィのツッコミは無視して、右目で「視」てみる。皆が激しく動き回っているし、気温も高いし、直射日光の下でモヤモヤが見えるのか? って気がしてきた。
いや、やってみないと分からない。
右目に力を込める。
あ、なんか見えてきたような気がする。暑さによる陽炎かと思ったが、微妙に色が違う、ような気がする。
やってみよう。
目だけじゃなく、全身から力を振り絞るようにして右目……だけじゃなくて両目に「何か」が集まるようにしてみる。
あ、モヤモヤが見えてきた。魔獣が激しく動き回っているから分かりづらいが、それでもさっきよりずっと見えてきた。
……こうなったら後先考えない。倒れたとしても構わない。ルビィ、あなたも力を貸して!
(うん…… 分かったなの!)
どこか寂しげな雰囲気を漂わせていたのが気になったが…… 今は後回しだ。というか、あたしの予想通りなら、後でその分は挽回するとしよう。
一度目を閉じて、身体にある「力」を探す。この世界に来て日数が経ったので、おそらく魔素とやらが全身に巡っていることだろう。それならば、あたしにだって魔力が生み出せるはずだ。それこそ不思議な方法であたしの心か頭の中にルビィが存在できるのも魔素や魔力があるからだ。
だから身体の中の魔力を高める。
まぁ、こういうのって大体やり方は同じだ。できるかどうかは別として、一通り習っている、というか習わされている。
気功法とか超能力とかの集中法をね。
……まぁ、何一つモノにならなかったけどね。
そんなものがこんなところで役立つとは思わなかった。なんか全身が熱を持ってるような気がする。風があたしを中心に巻き始めた。スカートが浮き上がっているような気がするが、心配している余裕はない。周りが紳士的であることを祈ろう。
風はどんどん強くなる。
あ、たぶん今リボンほどけた。普段ポニーテールにまとめている金髪がバサバサ広がる。
あ、ヤバ。多分これ、長くもたない。
時間をかけてられないので、一気に目を開く。右目から鱗、じゃなくて、コンタクトが落ちたような気がする。
というか、視界が真っ赤に染まる。いや、落ち着け。
光量調整を間違えたような風景を、無理やりに元に戻す。あちこちにいる魔獣とかから何か細い線が煙のようにたなびいているのが見える、ような気がする。
それがどこかに集まってるか、向かっているはずだ。
どこだ?
血の気が失せる。
どこだ。
足が震えてまともに立ってられない。
どこだっ。
視界が霞んできた。
もう体力か何かの消耗が限界に近い。
「ラシェル!」
もうはたから見ても具合が悪いのが分かるのだろう。ジェルの叫ぶような声が聞こえてくるが、もうその声も遠く聞こえる。
「もう止めろ!」
ジェルの手があたしを支えてくれるのが分かったが、その感触も何故か遠い。
……あれ? ちょっと待って。ジェルが触っているところから何か染み込んでくるような? 何か知らないけど、使わない手は無い!
「ジェル!」
思った以上に掠れた声しか出ないが、あたしを掴む手に自分の手を重ねる。
手を重ねたところから何かが流れ込んできて、もう倒れそうな身体にもう数秒の余裕が与えられた。
どこだ、どこだ……
……! 見つけた! 右斜め前の方にモヤモヤが異様に固まっているところがある。
ギリッと歯を噛みしめて、萎える腕の力を振り絞って、その方向を指さす。これだけあれば後はジェルが……
「……!」
口の中がカサカサして声も出ない。自分でも何が言えたか分からない。
「……! ……!」
たぶんジェルがあたしの名前を呼んでいるんだと思うが、もう何も聞こえない。何も見えない。無理が過ぎたのか全身がスーッと冷たくなるような感じがして、あたしの意識はゆっくりと闇に落ちていった。
(……バイバイ、ラシェル。)
その声だけはやけにハッキリ聞こえた。
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