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異世界行ってもチーム・グリフォン!  作者: 財油 雷矢
MISSION:町を脅威から救おう

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行動を開始しよう

MISSION:模擬戦を勝利しよう

CHANGE MISSION TO 町を脅威から救おう

「五点打……魔獣の襲来。で、次が…… って、どれだけ鳴らしてるのよ!」


 アイラが鐘の音を数えて、いきなりツッコミを入れる…… じゃないか。そんなに何度も聞いたわけじゃないが、普段とは鳴り方が違うような気がする。


「何事だ?」


 どこで何をやってたか分からんが、ヒューイがひょっこり帰ってきた。となると……


「ジェル、何がどうしたの?」


 おそらくいるだろう背後に向けて声をかける。小さく、ちぇー、とがっかりした声が聞こえたが、気にしない。


「どれ…… おっと。」


 ヤバい。ジェルの声が急に真剣身を帯びた。


「理由は分かりませんが、南の方から大量の動物らしき姿が町に向けて接近してきています。……正直、状況は厳しいですな。」

「なんだと?!」


 ガイザックさんが目を見開く。


「おい、ジェラード。距離か時間は分かるか?」

「しばしお待ちを……

 移動速度に差がありますが、最短で三十分くらいでしょうか。」

「……早いな。」

「さすがに小細工する余裕もないですな。人々を町の中に避難させて、迎撃態勢をとるので精一杯かと。」


 ポンと空中にバーチャルディスプレイを表示させると、周辺の概略図が表示される。

 ハンブロンの町へ向かって、遠くから赤い光点が群れをなして接近してくるのが分かる。あたし達のいる模擬戦会場はそのルート上に無いので、赤い光点が心変わりしなければ、ある意味ここにいるのは安全である。

 ……ただ、帰る町が無くなるだけだ。


「んが~っ!!」


 頭をガシガシ掻いて苦悩するガイザックさん。


『ガイザック! ジェラード君! 何が起きた!』


 いきなり領主のジェニーさんの声が聞こえてきた。

 近くに汎用箱型作業機械キューブがいて、その上面にジェニーさんの顔が映ってるバーチャルディスプレイが出力されている。


「動物…… いや、おそらく魔獣の襲来です。たぶん裏があるかと。」

『そうか…… 現時点で動かせる戦力は?』

「ギルドの連中には緊急依頼をかけます。それでも今でせいぜい十人くらいか。」

『町の守備を出してもせいぜい倍、か。正直厳しいな。北の鉱山町からの応援を待って籠城ろうじょうするか……』


 このハンブロンは地理的に北の鉱山町でどん詰まりなのと、今までは町の価値が高くなかったので、あんまり兵力と言うか防衛力にリソースを割いていない。

 単独で現れた魔獣に対応するのが関の山で、それも町の周囲を囲む壁任せのところがある。あたし達がこの世界に来たときは、たまたま壁の薄いところにロックバッファローって魔獣が突っ込んできて大パニックになったっけ。

 あ、うん。そん時はカイルがコキッと片付けたんだけどね。


「いや、まだツキが残ってるぜ。なぁ?」

「「「サー、イエッサー!」」」


 カイルの後ろにテオ達がズラリと並んでいる。


「お前たちの得意なことは!」

「「「生き残り、守ること!」」」

「立ちはだかる敵は!」

「「「拳の熱さを叩き込む!」」」

「お前たちの前には厳しい戦いが待ち構えている。勝てば全てを得られ、負ければ全てを失う。どうだ、嬉しいか!」

「「「サー、イエッサー!」」」

「……そんなわけだ。

 町を守る騎士ナイトが四十人追加だぜ。」


 カイルがニヤリと笑みを浮かべたところに声が飛んできた。


「ちょっと待ったぁっ!」


 更に向こうから重武装の二人が駆けてくるのが見えた。


「コンラッド第八騎士団団長、ハンス・ウォーレン、推参だ!」


 年季の入った全身鎧を身に着けた老騎士と、


「同じく、第八騎士団副団長、ソフィア。」


 戦乙女を思わせる女騎士が現れる。


「魔獣相手の集団戦は慣れてないだろ。歳食ってるのは伊達じゃないことを見せてやるさ。」

「最近、あまり訓練をしてなかったからな。……腕が鳴る。」


 更に頼もしい助っ人の登場だ。


「いいのか……? ギルドも町も大して金を出せんぞ。」

「相手が魔獣だとしたら、その素材はそれなりの価値があるのでは?」

「……まぁな。」


 ジェルが忙しそうにバーチャルディスプレイを何枚も呼び出して、情報を分析している。

 まぁ、今いる中ではハンスさんとソフィアさん以外はある程度見慣れているので、わざわざ驚く必要も無い。


「なんだこれは……?」

「分からないが凄い……」


 まぁ、驚いている人は置いといて。


「単なる動物の可能性もあるだろ?」

「さすがに私もこちらの生物の生態には詳しくありませんが、移動速度や外観などに差異がありすぎます。色んな条件を加味したところで、一緒に走ってくるほど生息域が重なるような組み合わせではありません。」

「ん? 待てよ、そういうことは……」


 あたしにはよく分からんが、ガイザックさんの目に理解の色が広がる。


「そうですね、」


 ジェルが確信を持った目でゆっくりと口を開く。


「どうやらこの『襲来』ですが、人為的な物を感じます。」

「ならいいじゃねぇか。」


 説明を黙って聞いていたカイルが、バシンと手のひらに拳を打ち付ける。


「何か仕掛けがあるってことは、時間さえあればジェラードが解決してくれるんだろ? なら俺たちの仕事はそいつらを町に近づけないことだ。」


 楽勝だよな? と後ろを振り返ると、力強い返事が返ってくる。


「とりあえず時間が無いので、私ジェラードが仕切らせていただきます。

 まず『お嬢』『姐さん』小隊で先行して第一陣と接敵。できるだけ数を減らして、合流を待ってくれ。」

「気を付けて!」

「……うん、頑張れ。」

「「「サー、イエッサー!」」」


 リリーとミスキスの応援の声を受けて、半数近くが姿を消したかのようにその場からいなくなる。


「後は随時町の南側に移動して、防衛戦闘です。無論、主力小隊は門の前で最後の防壁となってもらいます。」

「よし、行くぞ!」

「「「サー、イエッサー!」」」

「あ、カイルは待った。」

「なにぃ! ……あ~ お前たちは先に行っててくれ。」

「「「サー、イエッサー!」」」


 急に力の抜けた声のカイルを尻目に、テオ達の残りの小隊も駆けだしていく。


「ではハンスさんは指揮を。ソフィアさんは遊撃をお願いします。」

「ベテランの采配さいはい、見せてやるさ。」

「よし、参る!」

「ガイザックさんは領主様と連携を。キューブを一体置いていきますので、連絡用に使ってください。」

「おう、任せておけ。」


 次々と人がいなくなり、あたし達の周りには「雄牛の角亭」の面々だけとなっていた。


「さて、夕飯を美味しく食べるためにも、我々も小細工に勤しみましょうか。」


 言葉だけ見たら相変わらず気の抜けるような物言いだが、口調と目が珍しく真面目モードなので、神妙な顔をして皆が頷き合った。

お読みいただきありがとうございます。

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